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三鷹歌農書 2361-2380

明日土に帰るニンニク送らむと皮むき水に一夜浸しぬ
三鷹歌農書(二三六一)
ニンニクの名ふだ嘉定をカティと書き名前おぼえてゆく子どもたち
三鷹歌農書(二三六二)
ニンニクはお尻を下に幼な子のゆびの長さに押し込みて植う
三鷹歌農書(二三六三)
ふくむらさきテラドー嘉定モラードを埋めつ領地を与ふるごとく
三鷹歌農書(二三六四)
刀生むまへのほむらの明るみてナタマメの花咲き乱るなり
三鷹歌農書(二三六五)
咲き終へし花を噴射の炎としトロンボンチーノが伸びてゆくなり
三鷹歌農書(二三六六)
花がらの煙消ぬがにしぼみつつトロンボンチーノ尻ふくらます
三鷹歌農書(二三六七)
花がらをトロンボンチーノ捨て去りて何もなかつたやうなる臀部
三鷹歌農書(二三六八)
ナタマメの莢に刃紋の生れ始む秋の陽いよよ澄み渡りつつ
三鷹歌農書(二三六九)
ヘビウリの三兄弟の宙返りスピン直立それぞれに立つ
三鷹歌農書(二三七○)
落ち激つヘビウリの身の水飛沫ましろき花の腰にひらきぬ
三鷹歌農書(二三七一)
島カボチャを味噌田楽に 沖縄へは今年も行けずそのあまき風
三鷹歌農書(二三七二)
キクイモの倒れてゐしを立て直し雨後の畑の作業を始む
三鷹歌農書(二三七三)
ヘビウリのま直ぐに太りゆく兄のとなり塒(とぐろ)をほどく弟
三鷹歌農書(二三七四)
秋にまで食ひ込んでやるぞとキュウリひとつ尻尾を振りて実らんとしをり
三鷹歌農書(二三七五)
秋ナスのますます小さくなりゆきてまだ実らせるのかと言ひたげ
三鷹歌農書(二三七六)
ふさふさのキツネの尻尾ばらばらにアマランサスの脱穀をせむ
三鷹歌農書(二三七七)
アマランサスの紫黒の種と淡き殻息を吹きかけつつ脱穀す
三鷹歌農書(二三七八)
星雲に星々あまた生まれゆくアマランサスの手箕に揉まれて
三鷹歌農書(二三七九)
小惑星接近すなり葉叢からわかき木通の実の現れて
三鷹歌農書(二三八○)


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