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三鷹歌農書 2041-2060

どこまでも伸びる腸(はらわた)かと思ふ土を身体にヤブガラシの根
三鷹歌農書(二○四一)
桑でさへヤブガラシにはのまれゆき夏の緑に窒息しさう
三鷹歌農書(二○四二)
しなやかさこそ逞しさ不死身なるヤブガラシ常にべすとえふおーと
三鷹歌農書(二○四三)
ブドウ棚に散らばる蕾寄り集ひアヅチグモひとつ生まれてゐたり
三鷹歌農書(二○四四)
一人前にならずとも良し実のならぬコーンのヒゲとうす皮を茶に
三鷹歌農書(二○四五)
絹雲を集めてすこし焦がすのが秘訣コーンの若ヒゲを焼く
三鷹歌農書(二○四六)
チャンス数多ありしに気付かざりしこと옥수수수염차(トウモロコシのヒゲ茶)を淹れつ
三鷹歌農書(二○四七)
茫茫と生ふるわか葉に隠れゆく幹を嵐に折られし桜
三鷹歌農書(二○四八)
花オクラのはなびら夏の陽に透けてふとたましひの吸はるるごとし
三鷹歌農書(二○四九)
西洋菩提樹(ティユール)のリーフしづかにかさなりて森の眸のやうなるカップ
三鷹歌農書(二○五○)
夏の陽ににこ毛耀ふ背(せな)の肉ダビデの星を煮浸しにせり
三鷹歌農書(二○五一)
少年と少女の剣士むかひあひトロンボンチーノを構ふるところ
三鷹歌農書(二○五二)
土寄せをお節介にもしてくれし台風ネギの溝なかば埋め
三鷹歌農書(二○五三)
台風に苗を苗床ごと消されまつさらさらの再スタートさ
三鷹歌農書(二○五四)
流されてしまひたればまた播きなほす種を早生(わせ)から中生(なかて)に変へて
三鷹歌農書(二○五五)
सितार(シタール)とđàn đáy(ダンダイ)の二重奏(デュオ)夕顔とトロンボンチーノを並べて想ふ
三鷹歌農書(二○五六)
星団の星減りながら星座へと形変へつつ巨峰座消えつ #三
鷹歌農書(二○五七)
ニンジンの畝に生ふればニンジンのつもりスベリヒユ這はずに立てり
三鷹歌農書(二○五八)
貴き菜と称ふる国もあるらしにスベリヒユせめてオムレツにせり
三鷹歌農書(二○五九)
ちよん髷にもトロンボンチーノはなるのぢやとモデルになつてゐる閉会後
三鷹歌農書(二○六○)


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