見出し画像

三鷹歌農書 2301-2320

もがくがに生り始むれどヘビウリはヘビウリの名を受け入れて伸ぶ
三鷹歌農書(二三○一)
グリーンの美味さベージュの美味しさもトロンボンチーノ頼もしきかな
三鷹歌農書(二三○二)
ネズミ捕りに囮のスズメバチは如何に見ん次々に仲間来て捉はるを
三鷹歌農書(二三○三)
ミツバチを攫ひに来やがつたスズメバチを讃へて作るスズメバチ酒
三鷹歌農書(二三○四)
藍の引越しと言へば一瞬手の止まる愛の引越しだなんてねえ
三鷹歌農書(二三○五)
北風に抗ふなやや傾けてキャベツの苗を定植すなり
三鷹歌農書(二三○六)
直ぐなるも背を丸めるも立ち寝せるもトロンボンチーノ気持ち良ささう
三鷹歌農書(二三○七)
白秋と味短歌とを取り囲む赤や緑のダイコンの種
三鷹歌農書(二三○八)
ヘビウリを髪にナスビを目ん玉に畑の今日のアルチンボルド
三鷹歌農書(二三○九)
山々の間(あひ)の流れがゆつたりとトロンボンチーノ河となるまで
三鷹歌農書(二三一○)
首を曲げ伸ばして歩くシラサギにトロンボンチーノを見てしまふなり
三鷹歌農書(二三一一)
シソの穂のオクラの花の包(くる)み揚げ  出逢ふべくしてあなたと出逢ふ
三鷹歌農書(二三一二)
白サンゴ溶かして蝋にミツバチの巣屑を割りて蒸し器に収む
三鷹歌農書(二三一三)
デミグラス煮込みハンバーグのすがた蜜蝋落とし終へし巣の屑
三鷹歌農書(二三一四)
山塊の霧のなかにて溶けゆくを蒸し器の蜂の巣屑に見をり
三鷹歌農書(二三一五)
蜜蝋のボウルに凝固しはじめて金環蝕をたまゆらに見す
三鷹歌農書(二三一六)
夕食に黒カレーも良きかと思ひゐしに蝋採り終へし巣屑に巣ムシ
三鷹歌農書(二三一七)
満月のひかりをはなつ薄氷はボウルに熱の冷めし蜜蝋
三鷹歌農書(二三一八)
乾かしし藍の葉碧く滄き香を放つを壜に詰める愉しさ
三鷹歌農書(二三一九)
躊躇はず広がるちからキクイモの花と空とが色を引き合ふ
三鷹歌農書(二三二○)


いいなと思ったら応援しよう!