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三鷹歌農書　２３８１－２４００

三鷹歌農書
ニンニクとトウモロコシに迎へらる稲揚げをして納屋に移せり
三鷹歌農書（二三八一）
千歯扱き無ければ板にネジ釘を並べ扱き器を作つてしまふ
三鷹歌農書（二三八二）
ざくつざくつざくつざくつと声だせば束を引く子に稲穂も応ふ
三鷹歌農書（二三八三）
扱き漏れを指に落としてゆく籾の粒粒辛苦わが日々もまた
三鷹歌農書（二三八四）
稲扱きを侮るなかれ落ち籾にカタツムリの子一つぶ紛る
三鷹歌農書（二三八五）
松の葉と水とシュガーと陽のひかり弾くる青を飲まむと壜に
三鷹歌農書（二三八六）
クラムボン壜の口までのぼり消ゆ松の葉の陽に泡立つばかり
三鷹歌農書（二三八七）
松の葉のソーダにわれの味はふは안동（アンドン）河回村（ハフェマウル）の風のうた
三鷹歌農書（二三八八）
花つけぬままじふぐわつのシロゴチョウ　大切なるは答より問ひ
三鷹歌農書（二三八九）
ダアリアの蕊より管の一つ伸び大（おほ）き花弁と化すタテハチョウ
三鷹歌農書（二三九○）
秋空に土のしらべはドビュッシー畝切る鍬とわが手ひとつに
三鷹歌農書（二三九一）
ゲーテローズ、レディーヒリンドン、ブルームーン淹れて身ぬちにわが薔薇園を
三鷹歌農書（二三九二）
黒土に犬歯の芽先のぞかせてサフラン空へ越境したり
三鷹歌農書（二三九三）
定植を待つ苗狙ひゐたれるやヘビウリ遂に地に着かむとす
三鷹歌農書（二三九四）
口ひらき掃除魚呼ぶウツボかとイチジク爆ぜて蟻を集めつ
三鷹歌農書（二三九五）
裏庭のカキドオシ花を秋もまたキンモクセイの散るを葉に受く
三鷹歌農書（二三九六）
朝つゆの湿りに昼も黒きまま畑の土も秋にひたれり
三鷹歌農書（二三九七）
ヘビウリのままでは勿体なく思ひサンザシの眼を与へてやりぬ
三鷹歌農書（二三九八）
縁にアリ真中にハムシ、ハナムグリ爆ぜて無花果気持ち良ささう
三鷹歌農書（二三九九）
じふぐわつの葡萄の粒とホップとが踏ん張り合つてみどりを競ふ
三鷹歌農書（二四○○）


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