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三鷹歌農書 561-580


あさなさな醪(もろみ)の泡のあいさつを耳に確かめ混ぜ返しやる
三鷹歌農書(五六一)
八つ頭の皮を魚を捌くごと摘んで剝いでゆく心地良さ
三鷹歌農書(五六ニ)
花も終へながら脇芽をことごとく雲南百薬(アカザカズラ)は零余子に変へつ
三鷹歌農書 (五六三)
これ以上人を乗せ得ぬ小舟の図ふゆのスミレに見せてもらひぬ
三鷹歌農書 (五六四)
水色(すいしよく)と香りと味のモザイク画さくらもみぢの茶を評しつつ
三鷹歌農書 (五六五)
菊芋と京人参が並べらる珈琲になる宿命(さだめ)知らずに
三鷹歌農書 (五六六)
カラメルに酸味ほのかに匂はせて人参珈琲(キャフェ・ド・キャロット)喉(のみど)にあそぶ
三鷹歌農書 (五六七)
チョコレートと牛蒡の味の境界を菊芋珈琲たのしげに問ふ
三鷹歌農書 (五六八)
干涸びしブドウ一房空ゆ落ちホップの蔓に掛かりてゐたり
三鷹歌農書 (五六九)
翼なす葡萄紅葉に牽かれつつ空へ旅立つナーベラー号
三鷹歌農書 (五七○)
ヘビウリに心そこ惚れてゐしわれか芋茎あふぎかの夏を恋ふ
三鷹歌農書(五七一)
くれなゐのブルーベリーの新梢が銀杏(いてふ)の腹をつつくも恋か
三鷹歌農書(五七ニ)
海原と荒磯の香の差をみたりコンブ利尻と羅臼を比ぶ
三鷹歌農書 (五七三)
鰤カマと煮るダイコンの少女から少の取れたるやうなつやめき
三鷹駅歌農書 (五七四)
グラナダとクローネンブルクの日本の子芳純ずつと三鷹(ここ)を旅せよ
三鷹歌農書 (五七五)
前奏のまま終はるかとおもひゐしにチャールズ・ダーウィンゆるり咲き初む
三鷹歌農書(五七六)
冬空の深みに打てる刻印の臙脂いろなる薔薇の大輪
三鷹歌農書 (五七七)
ニンジンとブロッコリーもて迎へたる今年最後のシカクマメを蒸す #三鷹歌農書 (五七八)
杵と臼どちらが臼か知らぬ方も初めて触るる人もをるなり
三鷹歌農書 (五七九)
臼底に豆反り鉋すべらせて餅の丸まりやすさを琢く
三鷹歌農書 (五八○)

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