見出し画像

三鷹歌農書 2541-2560

ウイーンにアルチンボルド氏今もあらば野菜船みたか号を見せたし
三鷹歌農書(二五四一)
支柱かと摑み慌てて手を放す子らとも別れヘビウリ去れり
三鷹歌農書(二五四二)
葉はサラダ茎はパスタに翠王の芋なきイモの手軽さを食む
三鷹歌農書(二五四三)
柑橘類の品評コーナー去りがたしグラデーションに香もうつろひて
三鷹歌農書(二五四四)
ヘビウリもトロンボンチーノも賞を受け親子農園存続せよと
三鷹歌農書(二五四五)
皺の名に梅干しジワのあることをオフィーリアの実を見ておもひだす
三鷹歌農書(二五四六)
なかなかの旅だつたなあ 幾つかのムカゴ一つにエアーズロック
三鷹歌農書(二五四七)
パマ・ニュンガン語族ピチャンチャチャラ語のウルルのごとき零余子を手にす
三鷹歌農書 (二五四八)
伸びる方にしか伸びぬなり紡錘形(つむがた)のローズヒップのそれぞれの艶
三鷹歌農書(二五四九)
行けざれば呼ぶほかになしフライパンの糖葫芦(タンフールー)に飴を塗りつつ
三鷹歌農書(二五五○)
許したくなきこと許す術(すべ)として山査子などを煮詰めてゐたり
三鷹歌農書(二五五一)
サンザシは花咲くやうに無花果は帆を張るやうに挿し木の芽生え
三鷹歌農書(二五五二)
名前負けせぬよう心して作るバターナッツカボチャのまるごとプリン
三鷹歌農書(二五五三)
カミソリのやうなる莢をクリトリア花を終へたるのち現せり
三鷹歌農書(二五五四)
暖かきままに時過ぎ秋ジャガの畝の真中にまでヤブカラシ
三鷹歌農書(二五五五)
土にだつて訴へたきことあるだらう茗荷の花の揺らめくほむら
三鷹歌農書(二五五六)
ノラボウのラジオ体操のびやかに根を張り畝に定まりたれば
三鷹歌農書(二五五七)
宝貝愛づるこころに来年のヘビウリの種ならべ乾かす
三鷹歌農書(二五五八)
白隠の半身達磨の背を拝み熟れしアケビを木からいただく
三鷹歌農書(二五五九)
キッチンの盥にしばしあそばせる翻車魚ならぬ木通が一つ
三鷹歌農書(二五六○)


いいなと思ったら応援しよう!