三鷹歌農書　２５０１－２５２０（四季の香ローズガーデン）

天辺に赤き一輪ギー・サヴォア空を釣らんとせるシュートあり
三鷹歌農書（二五○一）

秋の素のボレロを愛でむはつなつの肥料に化けし大輪よりも
三鷹歌農書（二五○二）

ロサ・ムルティフローラの実と野茨のローズヒップは同じ赤星
三鷹歌農書（二五○三）

屋根をなすバラ見上げぐれば畝の間の区切りのやうに枝伸びてをり
三鷹歌農書（二五○四）

コリウスにアルテルナンテラ地より湧く色にぎやかに秋の薔薇園
三鷹歌農書（二五○五）

唇型のうすあをき花塔なして極楽鳥のごときコリウス
三鷹歌農書（二五○六）

紅葉（こうえふ）の欅のやうなコリウスにコリウスに似る欅いちまい
三鷹歌農書（二五○七）

コリウスの色の不可思議なにゆゑに　シソ科の四角なる茎を撫づ
三鷹歌農書（二五○八）

花散れば人去りされど苔バラのトリギンティペタラ赤き棍棒
三鷹歌農書（二五○九）

萎れゆくパウル・クレーの株元にコリウス三つ広がる構図
三鷹歌農書（二五一○）

大きさの秋も変はらぬ頼もしさマイスタージンガー春また会はむ
三鷹歌農書（二五一一）

アンブリッジ・ローズしづかに散るばかり秋明菊に見送られつつ
三鷹歌農書（二五一二）

薔薇園にあそぶ家族の母さけぶ「カメラお化けからは逃げないよーにー」
三鷹歌農書（二五一三）

ダージリン飲みたくなりて嗅ぎにゆくレディー・ヒリンドンこの秋もまた
三鷹歌農書（二五一四）

時により花よりも葉の良きこともピエール・ドゥ・ロンサールその紅き葉よ
三鷹歌農書（二五一五）

ガートルード・ジェキルが空へ落とす滝シュート放ちて新葉の飛沫（しぶき）
三鷹歌農書（二五一六）

樹の皮ふを削り乾かし花びらに松ぼつくりを蕊とし薔薇を
三鷹歌農書（二五一七）

あかあかと秋の血のいろ肉の色ローズヒップのリースはわれを
三鷹歌農書（二五一八）

チョコレートコスモスとふに顔を寄せ香と色おなじなるを確かむ
三鷹歌農書（二五一九）

暮れのこるノヴァーリスわが足を止め思ひ残しはないかと問へり
三鷹歌農書（二五二○）