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ソラマメ育苗、5年目の慢心 それでも足掻き続ける

10年ほど前まで、「タイラバ」と呼ばれる釣りにはまっていた。おもり、ネクタイ、スカート、釣り針の4つのパーツで構成する仕掛け「タイラバ」を使う。ルーツは日本の伝統漁具だそう。近年は、それぞれのパーツの形状や材質が進化し、愛好家が飛躍的に増えている。

奥が深い「タイラバ」

主に船釣り。垂直にタイラバを落とし、着底したら等速で巻き上げる「バーチカル」、仕掛けを遠くに投げ込み、底を取りながら斜めに引いてくる「キャスティング」。それぞれに適したロッドとリールがあり、底までの水深、おもりの重さによって、使うロッドやリールが変わってくる。

おもり、ネクタイ、スカート、釣り針の4つのパーツで構成される「タイラバ」

この「タイラバ」、実に奥が深い。季節、水温、潮の流れ、タイの活性、水深、その時に何を食べているか。さまざまな条件が絡み合う。見えない海の底。タイの動きは想像するほかない。ネクタイやスカートの色・形状・材質、針の大きさ、おもりの色・形状、リールを巻くスピードや巻き上げる高さを変えながら、その時の「正解」を探っていく。

釣れない… 負のスパイラルに

釣り仲間で借り上げたチャーター船。その日、初めて釣った人に、仕掛けや釣り方の情報を聞き、真似をする。それでも、自分一人が「坊主」状態になった時は、精神的に追い込まれる。

釣り仲間で借り上げたチャーター船。終日、真鯛を狙う

「何が原因なんだろう」と、あれこれ考え始める。そして、負のスパイラルに陥ることも。ネクタイを取り替えたり、巻きスピードやロッドを変えてみたり。なんで釣れないのか、原因が分からない。「やっと来たー」と引き上げてみると、外道だった、なんてことも。


この「負のスパイラル」。実は農業にも共通していると、痛感する。

ソラマメ育苗 5年目の慢心

今年もソラマメの育苗をした。最初に植えたのが10月下旬。農業大学校で教わった通り、真砂土にもみ殻燻炭、腐葉土、ピートモス、苦土石灰を混ぜ合わせ、ポットに入れて、種を挿しこむ。もう5年目。手際もよくなった。

それが、慢心だった。

1週間たって発芽したものの、芽の先端が黒く変色したり、徒長したり。発芽率が50%と極端に悪い。鳥対策で、育苗ハウスに入れていたのがいけなかったか。10月なのに暑かった。この時、高温のせいだと思い込んでしまった。

11月。もう一度植え直そう。種苗店に行くと、なんと欲しい品種が「売り切れ」。店主が言う。「育苗に失敗した人が何回も買いに来た」。仕方がないので、家に残っていた100粒余りで再チャレンジ。今度は、ハウスに入れず、軒下で網をかけて育苗した。

ところが、1週間たっても10日たっても芽が出ない。「なんで?」

原因は「育苗土」か!

と、そこへ母親。「それ、土がいかんのじゃないか。種が腐りよる」。種を引き抜いてみる。土に埋まっていた部分が腐っている。土の表面が乾いたら水をやっていた。ポットを持ち上げてみると、表面は乾いているのに、中が湿っている。

5年目の慢心。育苗土を作る時、適当にもみ殻燻炭やピートモスを投入したのがいけなかったのではないか。保水性が高まりすぎた可能性が高い。

あがいてやろうと決心

もう、11月も下旬。諦めようかとも思った。しかし、来春が悲しすぎる。真砂土を追加で購入。育苗土の作り直し。種はネットで注文した。問題は気温だ。来週から、急激に冬型になる。発芽適温は15~25℃。どうするか。

発芽率の高い三連をネットで購入。3度目の正直でありますように。

来年は、トウモロコシの育苗を1か月早めて2月からスタートさせようと計画していた。そのために、購入予定だったハウス用ヒーター「暖太郎」を、一足早くスマホでポチっと。今度こそは!


「坊主」のプレッシャーを受けながら、納竿間際に70センチオーバーの真鯛を釣り上げた記憶。あきらめなかった先にある成功体験を思い起こす。見えない海の中のタイより、観察できる植物の方が与しやすいはず、と思うことにした。

異動で環境が変わり、タイラバから遠ざかってしまったが、釣行の夜に仲間と呑んだ酒は格別だった。

(あぐりげんき)


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あぐりげんき | 農業& writer
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