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大食漢の隣のポニー 発酵馬糞で土壌改良を!

ミカン畑の隣に、ポニーやヤギ、ウサギ、大きなリクガメなどがいる。動物園を退職した獣医さんが約20年前に始めた移動動物園。長女と長男が小学生のころ、遊びに来ては、ポニーの背中に乗せてもらっていた。22歳になったという老馬は今も、毎日、草を食んでいる。


ポニーは大食漢

獣医さんとは、畑仕事の合間に、よく立ち話をする。

1ha近くある園内の雑草は、ポニーやヤギの貴重な餌。冬場は草の成長が遅いため、毎日、河川敷で草を刈ってくるという。軟らかく、おいしい草を選ぶ。軽く干してから餌や、寝床の敷草として使うのだ。

「軽トラに満載しても、1日分ですよ」と獣医さん。馬は特に、よく食べる。

牛と馬 全く異なる消化方法

牛の場合、胃が4つある。ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ。焼肉でお馴染み。食べた草を複数の胃で行ったり来たりさせる反すう動物。その間に発酵させ、吸収しやすくする。「牛は食べた草の繊維を消化・吸収できる能力が高く、6割くらいを吸収できる」

一方、馬の胃はひとつだけ。腸で発酵させて吸収する。同じように見えて、消化の方法が全く異なる。「馬は、食べた量の3割くらいしか吸収できない。7割は糞と一緒に排出されてしまう。だから、大量の草が必要」。乾草の山を指さしながら、獣医さんが解説してくれた。

臭いもない、発酵馬糞

発酵させる前の牛糞は臭く、水分も多く、べちょっとしている。馬糞はというと、水分量も少なく、臭いもさほどではない。そのあたりにコロコロと転がっていた馬糞は、草が大量に混ざった団子のよう。

「もう発酵してるよ」

獣医さんが、コンテナに集めた馬糞を大量に譲ってくれた。乾燥しているから、意外に軽い。これが土壌改良に最適なのだ。

野菜栽培に適した土とは…

「水持ちが良く、水はけが良い、有機物を多く含んだ土」

何だか、矛盾しているようにも思えるが、これが野菜栽培に適した土。

水田から、野菜畑に転換した農地。最初は、土に粘りがあり、水はけが良くない。田んぼだったのだから、仕方ない。雨上がりに、トラクターを入れようものなら、土を練ってしまい、空気が抜け、乾燥するとカチカチに。苗を植えることもままならず、根も張りにくくなる。

三相のバランスが良い「壌土」

空気を含む「気相」、水を含む「液相」、土の本体部分「固相」。3つ併せて「土の三相」と呼ばれる。三相のバランスが良い「壌土」の状態を保つのが、土作りの基本。いわゆる「ふかふかの土」。このような状態を維持するために重要なのが、堆肥などの有機物を継続的に投入することだ。


鶏糞、豚糞、バーク堆肥、そして馬糞。

堆肥にはいろいろな種類があり、それぞれに特徴がある。鶏糞、豚糞は窒素、リン酸、カリといった肥料成分が多い。逆に牛糞、バーク堆肥、馬糞は、肥料成分が少なく、有機物が多い。つまり、土壌改良に適している。

1作で、10a当たり2トンの堆肥。農業の教科書などにはそう書いてある。この経費はかなりのもの。販売元との直接交渉などで、発酵鶏糞、発酵豚糞、バーク堆肥については、安く購入できるめどが立っていた。そこに加わった「馬糞堆肥」。「ふかふかの土」に向け、大きな一歩だ。


馬糞から紙を作る?

先日、会社OBの先輩たちと一年以上ぶりにお会いした。皆さん70オーバーだが、弁舌、知識、ものの捉え方・考え方、すべてが、現役時代のまま。いや、それ以上に研ぎ澄まされているかも。酒宴も盛り上がり、私の農業の話に。畑の土壌改良のため、馬糞を使い始めたと、現状報告すると、

「そういえば、馬糞紙(ばふんし)って呼んでたなあ」

まさか、馬糞を紙に? 確かに乾燥させると臭いはない。紙の繊維のように草が大量に混じっている。ほろ酔いで帰宅して、早速、ググってみた。

日本には古くから馬糞紙という紙がありました。馬糞が原料ではありません。洋紙の製造技術が日本に入ってきた明治時代に、パルプ材の無かった日本では代用品として稲藁や麦藁を使って紙を製造しました。これを藁半紙(わらばんし)と呼びました。当時、その黄土色に加えて表面に藁の繊維がはみ出している感じが馬糞のようだったため、別名として馬糞紙とも呼ばれていたそうです。

馬の温泉だより

そりゃそうだよな(笑)

紙の名前に例えられるくらい、かつて、馬は身近な存在だったのだろう。耕運機やトラクターのなかった時代には、貴重な「労働力」だった。そういえば、トラクターも「20馬力」って言うくらいだから。

(あぐりげんき)


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あぐりげんき | 農業& writer
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