
名物営農指導員さんから、突然のオファー 春植え大根に初挑戦
朝、スマホに着信があった。JAの営農指導員さんから。出勤途中だったため、かけ直すことに。何だろう。割と気になる。野菜のこととは思うが…。出荷した野菜に問題があった? 例年2月に開催される春植え野菜の講習会のことかな? かけ直すまで、短い時間なのに、さまざまなことがよぎる。
超ベテラン 熱心な栽培指導
75歳くらいだろうか。JAを定年退職後、再雇用で産直市専属の営農指導を担当。栽培方法、売れ筋の野菜、有望な新品種などを教えてくれる。87歳になる母も栽培指導を受けたというから、かなりのベテランだ。
3年前、農業大学校担い手コースの野菜実習担当だった先生から、名前を聞いたのを覚えている。JAと取引がある農業資材会社の役員も「あの人がいるから、あの産直市は持っている。あれほど熱心な営農指導員はいない」と太鼓判を押す。そういえば、雑誌「現代農業」にも執筆していた。名物指導員だ。
新品種、売れ筋品目を提案
「5月に収穫する春植えの大根を植えてくれんかなー」
いつも直球。大きな声がスマホから響く。
2月に開く予定だった「春植え野菜栽培講習会」が、JA本所の都合で不開催となったため、呼びかける機会を失ってしまったのだという。ちょうど、田植えの時期と重なるため、稲作農家には頼めない。なので、「一本釣り」しているのだと。
これまで、サラダカブ「もものすけ」、カボチャの一種「バターナッツ」「ズッキーニ」も勧められ、植えてみた。「定番野菜」でないため、最初は売れ行きが芳しくなかったが、途中から、コンスタントに売れるようになった。指導員自ら店頭に立ち、買い物客にPRしてくれたのだ。
JAファクトブックにこう書かれてある。
生産者の相談相手として、営農を支える
JAの営農指導員は、単に技術指導を行うだけではなく、営農関係の情報提供や安全な農畜産物の生産指導、農作業安全確保のための取り組み、また、地域農業戦略の策定など、地域全体の産地づくりを生産者とともに行っています。さらに、近年では、環境保全型農業の推進、スマート農業の導入による省力化支援等の役割も重要になっています。
農業も新たな情報・知識・技術が重要
新品種の発売や売れ筋商品の変化、新たな栽培技術、激変する気候への対応。毎年、同じことを繰り返しているように見える「農業」だが、実は常に新たな「情報」「知識」「技術」を取り入れる必要がある。インターネットでさまざまな情報を入手できる時代になったとはいえ、現場(農家、消費者)を知る営農指導員の存在は、農業者にとって強い味方なのだ。
減少するJA営農指導員
しかし、JAの営農指導員が減っている。農林水産省の「農業協同組合及び同連合会一斉調査」では、愛媛県内のJA(総合)の営農指導員は、2002年から2022年の20年間で、野菜が128人から85人に、果樹が118人から74人に減少。農家数が減少する現状では仕方ないのかもしれないが…。

かつて、養蚕が盛んだった地域に住んでいたころ、県の農業普及指導員と交流があった。農業普及指導員も行政の立場から、農家に技術指導などをしていた。「事務所に座っていても普及指導員の仕事はできない。現場(養蚕農家)を回って、農家と話をしないと」とよく言っていた。もう20年以上前のこと。
嬉しい声がけ やる気アップ
先の営農指導員。今も、産直市や講習会だけでなく、出荷農家の畑を回って、営農指導をしてくれる。それも、駆け出しの小規模農家まで気にかけて。就農から5年目。名物指導員からの声がけに、「少し認めてくれたのかな」とうれしかった。
春じゃが縮小、春植え大根に
さて、どこに植えるか。ちょうど、春じゃがいもを植え付けるため、30メートルの畝を5列作っていた。3列植えたところで、種芋が足りなくなっていた。買い足そうか、と思っていたところに電話があったのだ。

2列分を春植え大根用に充てることに。急きょ、苦土石灰を蒔いて、畝を平らに作り直した。初挑戦だけに不安もある。(ちなみにじゃがいもは、石灰を入れると、そうか病にかかってしまうので、石灰を入れてなかったのです)
地温を上げるため、120センチの黒マルチを敷いて千鳥で3列
株間は30センチ
品種は「夏の砦」(ナント種苗)
キスジノミハムシ対策で、播種したところに殺虫剤「フォース粒剤」を蒔く
その上にすくもを蒔いて寒さ対策
3月に入ったら播種する。

なんとも早口だが、言っていることが理解できるようになった。少しは農業の知識が定着してきたかな。早速、言われた通り、農薬を買い、種を注文。マルチも敷いた。後は気温が上がるのを待つだけ。初めての春植え大根、うまくできるかな。
(あぐりげんき)
いいなと思ったら応援しよう!
