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耕作放棄のビニールハウスを再生する! 来春の植え付けを目指して

やっと、トンネルの出口が見えてきた。幅6m、長さ30mあまりのビニールハウス。4棟のうち2棟で雑草の処理が終わった。屈んでの草引きは、さすがに腰にくる。入口に立ち、最近、紙巻から変えた電子タバコをくわえて一服。水を撒いて土を柔らかくし、耕耘、堆肥投入、畝立て、植え付け…。来春に向けての作業工程が描けるようになってきた。

降ってわいたビニールハウスの耕作

8月のこと。夕方、畑から帰宅すると、近所の専業農家の男性が待っていた。ひとしきり、農作業の話をした後、「4棟あるビニールハウスを耕作してくれないか」と。

まだ、サラリーマンとの兼業。専業になれば、施設栽培をしたいと思っていたが、新たに建設するのは高額なコストを要する。逡巡していた所に降ってわいた、ありがたい話ではある。ただ、「あと4年は会社を辞めるな」と妻にくぎを刺されている。規模拡大して、対応できるだろうか。引き受ける以上、荒らしたくない。そんな思いが、頭の中をぐるぐると回る。

いきさつを聞いてみた。知人を介して「新規就農したい」という若者2人にハウスを貸していたという。1年半ほど前、若者たちは突然、農業をやめてしまった。うまくいかなかったのか、しんどくなったのか。一方、持ち主の男性は、米と露地野菜を手広く栽培している。このハウスはトラクターが入らないため、手が回らないのだという。

放置1年半で雑草のオンパレード

とりあえず、現地を見ることに。1年半のブランクは大きかった。背丈を超えるオオアレチノギクやセイタカアワダチソウがハウスの内外に繁茂し、防風ネットには、つる性のクズやツユクサが巻きつく。雑草をかき分け、ハウスの扉を開けると、中はカヤやオヒシバ、エノコログサなど、雑草のオンパレード。放置されたナスは、台木から芽が伸び、木のように。夜逃げしたのかと思うほど、あちこちに農機具や資材が散乱していた。


まだ手付かずの1棟。最初はすべて、雑草が繁茂していた

気が遠くなった。それでも、屋根ビニールはまだ新しい。骨格も25㎜パイプで、しっかりしている。電気を引き込んでいるので、契約すれば通電する。草に埋もれて、配管がどうなっているかは分からないが、ハウス内に蛇口もある。開閉式の側面や入り口のビニールを張り替えれば、十分、使えそうだ。


破れた入り口のビニールは張り替えれば大丈夫そう

ミッション追加 計画練り直し

いずれは手掛けようとしていた施設栽培。それも、高額な初期投資をかけずに始められる。この好機を活かせば、「認定農家」への道筋も見えてくる。今後の計画に、「来春までにハウスを掃除し、耕作できるように整備する」というミッションを追加して、練り直してみた。現在、耕作している畑を含め、いつ、どこに、何の作物を、どの規模で栽培するかを検討。施設栽培のスタートが想定よりも早まったが、「いけそうだ!」と思い立った。

猛暑日続き、ハウス内から熱風

8月下旬。まだ、猛暑日が続いていた。ハウスの戸を開けると、滞留した空気が熱風となって噴き出してくる。空き家に人が出入りしなくなると、急激に老朽化が進むというが、まさに、そんな感じ。ハウス内の気温は50度を超えていた。手始めに周辺の草刈り。狭い所は手作業。繁茂しているオオアレチノギクは案外、根が浅く、簡単に引き抜くことができた。

「畑」の状態にリセットへ 障壁は放置資材

秋になり、やっと中の掃除に着手した。草を刈り、放置された資材を取り除き、何もない「畑」の状態にリセットするのが目標。厄介だったのが「杭」。水耕栽培をしようとしていたらしい。杭に邪魔されて、草刈り機が使えない。コンクリートのように固くなった土をスコップで掘り、水を注入。杭は40~50㎝埋まっている。一本抜くだけで汗が噴き出してくる。

友人たちの「ヘルプ」に感謝

今年から、農業を始めた友人に「ヘルプ」のLINEメッセージを送ったら、二つ返事で駆けつけてくれた。水を確保するため、中古の1トンタンクを隣県の福山市まで買い付けに行った時も、会社の同僚が同行してくれた。友人たちの協力に感謝! 少しずつ、野菜栽培ができる環境が整いつつある。残りの2棟は無理せず、ボチボチと進めていこうか。


雑草や、支柱、金具などを運び出せば、リセット完了

農業の事業承継は計画的に

放置期間、たかが1年半。それでも、農地は急速に荒れることを思い知った。これが、数年も経過すれば、再生はますます困難になるだろう。なかなか進まない農業の事業承継。バトンタッチは、放置期間をなくし、計画的にすることが重要だと実感する。


「疲れた」「忙しい」と口にすると、「自分で仕事を作って忙しくしている」と妻が言う。自業自得。確かにそうかも。でも「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざもある。50代。農業界ではまだ、若い方かな(笑)と、自分に言い聞かせている。

(あぐりげんき)


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