![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160038540/rectangle_large_type_2_a297e1448133e0a4847aef6f869db96b.png?width=1200)
学習理論備忘録(56) うつ病の認知行動療法用の配布資料 『行動のススメ』
筋トレも、正しい知識のもとに正しく鍛えると適切に筋肉をつけることができる。治療も同様で、病気・治療の知識を持つということが治る道筋を見通すことになりモチベーションを上げ適切に療養することに繋がる。
認知行動療法では正しい知識を教える「心理教育」を重視する。
ただその意義を考えればなにも認知行動療法に限らず、治療で心理教育はできるだけするにこしたことはない。そこでぜひうつ病の心理教育用のハンドアウトを作ろうと思い、ならばそれをここに載せてみようと思った次第である。
(でも、それなら配布せずにnoteを読んでもらえば済む話か? とも思えてきた)
うつ病の人に知っておいてもらうと良いことは数あるが、今回はその中から「行動」の話にしぼってみる。
* * *
自習用資料:行動のススメ
今回の配布物について
目的「活動量を増やすことで、日常の楽しみや達成感を少しずつ感じられるようにする」
「うつ病」とは行動を「避ける」病気
うつ病は物悲しくなって気力が低下する気分の病です。ですが症状は他のことにも及び、気分が下がるというだけの病とは言えません。たとえばうつ病のかたのほとんどが、ものの見かた・とらえかたが狭く、悪い方向に傾きます。もののとらえかたを「認知」と言いますが、うつ病は「認知機能の病」であるとも言えます。
また「行動」と呼ばれているる脳の働きは、やはりうつ病ではうまく機能しなくなるものです。それにもかかわらずうつ病がよく「こころの病」などという言いかたをされるせいか、うつ病治療の「行動を治す」という観点がつい見過ごされがちになっているようにも思われます。
ですがこの「行動」は治療の上で大きな役割を果たします。この資料ではその点を述べていきましょう。
うつ病では元気がなくなります。すると「今は無理」「元気がないから休もう」「休まないと疲れてしまう」と考え、つい横になりがちです。
これをあたりまえだと思われますか? うーん、主観的に正しそうなのはわかります。患者さんじゃなくてもみんなついごろごろしてしまいますからね。それどころかかつて(今も?)この国では、「うつ病の激励禁忌神話」なんて言われているものがあって、お医者さんまでが「うつ病の人をはげましてはいけない。とにかく休ませること」なんて言ったくらいですから。
でも本当のところはどうでしょう?「休息」と「元気回復」は、どのような関係にあるでしょうか?
なるほど運動や仕事など、なんらかの活動を続けて疲れたあと、いっとき休むことで元気になることができます。重い病気にかかり、よほど気力がなくなったときも心身を休め気力が戻ってくるのを待つしかないというときもあるでしょう。
でも「なんとなく元気がないな」というときに長く休むとどうなるでしょう?
行動実験
「百聞は一見に如かず」とは言いますが、ここは「百ぺんの思い込みよりひとつの実験」です。今回は「思い込み」については深入りしません。そんなことよりとにかく実際になにか「やって」みて、それで「どう感じるか」を試してみましょう。
その手順を示します。
取り組むことを決める 実験することをざっくりと決めます。簡単なことで良いでしょう。
例:「夕方に10分散歩してみる。気分や体調に変化があるか観察する」やってみて記録をつける それを実際に行い、その前後の気分やや体の感覚、気づいたことを記録します。1日ごとに「寝転んで過ごす」「10分歩いてみる」をくり返すと、比較することができます。寝転んだ日は「かったるい」と感じていたが、歩いた日は「達成感がある」というように。この気分の違いを味わいましょう。
振り返りと学び この実験の結果について、気づいた点や意外だったことをまとめ、どう生活していくかの参考にします 。
おそらく、寝ていたほうがかえって元気がないことに気づいたのではないでしょうか?
このことから「活動が減る」「活動性が下がるのを加速する」「活動が減った状態を維持してしまう」原因のひとつが浮かびあがります。
それは「活動を避けること」です。
「元気がないから動けない」という考えかたをついしてしまいますが、実はその逆の「動くのを避けるから元気にならない」であったのです。この必要なことを避けるのを「回避」と言います。
うつ病の治療で目指すことは、生活の中での活動量を増やし、無理のない範囲で喜びや達成感を感じられるようになることです。そのために、とにかく「試しに活動する」ことでその道が開かれるのです。少しずつ、できることからやっていき、「活動に慣れる」「活動を増やす」とすすめていきましょう。
以下にそのステップを示します。
行動を通していきいきとした自分を取り戻すためのステップ
活動を選ぶ 毎日または毎週行いたいことを考えます。まず、気軽に実行できるものから始めるとうまくいきやすいでしょう。
活動と気分の記録 活動を行ったあとの気分を記録します(*1)。「喜び」と「達成感」あたりに絞ってみてはどうでしょうか? できれば喜びと達成感といった気分は、何% というように数字で表すと、自分がどれくらい元気になったかを振り返ることができるのでよいでしょう。
振り返りと次の小さなステップを設定 活動は、たくさんできることよりも無理なく続くことのほうが大事です。たとえば、「毎日5分の散歩」を習慣づけることから始め、一度できたらすぐ次のステップに行かなくてもいいので、慣れて板についてきたぐらいで10分に増やすなど、確実に前に進むことを重視します。
*1 『行動活性化療法』で検索すると『活動記録表』などの名前のついた便利な表が手に入ります。
まとめ
うつ病は「行動回避」による病である。
「私は元気」だから「歩こう」となるんじゃなくて、「歩こう、歩こう」と歩いていると「私は元気」になる!(版権スレスレー)
試した活動(散歩)と気分を記録 無理なく続けられる形で少しずつ活動を増やし、記録を通して気づきを得る → 慣れたらレベルアップ! このサイクルの繰り返し
次回までの家での治療
簡単な運動や散歩を試し、続ける。
活動とその際の気分を記録する。
いかがでしたでしょうか? 薄々気づいていませんでしたか?
動き出さないと、調子の悪いのっていつまでも治らないなあって…
* * *
こちらも参考にどうぞ。