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ε-δ論法を翻訳してもらった

 大学数学で最初につまずくポイントである ε-δ 論法。極限値とはなにか、ということを厳密に定義するためには避けては通れない。それは以下のような簡潔な文章で示される。

任意の正の数 ε に対し、ある適当な正の数 δ が存在して、0 < |x − a| < δ を満たす全ての実数 x に対し、|f(x) − b| < ε が成り立つ。

 これがどうして難しいかというと、大学以後の数学の文のほとんどがそうなのだが、完璧すぎるのだ。無駄が一切削ぎ落とされており、別の解釈も存在しないようにできている。それは、慣れるとある種わかりやすいのだが、常識的にはわかりにくい。あと、不親切な印象もある。まあ、数学者にとってはこういう表現でないと困るのだけれど。

 これを理解してもらおうと思ったら、もっと親切な書き方をしたほうがよいだろう。そこでAIアシストにこれをわかりやすくしてもらった。すると

任意の小さい数 ε に対して、適当な小さい数 δ が存在して、x が a に近くなるような場合に限り、関数 f(x) の値が b に近づくことを示す。

 となった。おー! さすが。

 あまり数学に関心のない人にはこれでも珍文漢文微分積分なんだろうが、ε-δ 論法を必死で理解する必要のある学生なら、この文章でぐっとわかりやすくなるのではないか。

 この違いは、上の文では

「任意の正の数 ε 」
「ある適当な正の数 δ 」

 とあるのに大して、下の文では

「任意の小さい数 ε 」
「適当な小さい数 δ 」

 と「小さい」という言葉が補われているのが親切であり、一般人の感覚では付け加えるほうが自然なのである。そうでないと、大きい数字や小さい数字など、いろいろと考えてしまうのである。
 だが数学では、

「任意の数って言ってんだから、当然そん中には小さい数だって含むに決まっているもーん」

 と不自然なことをなんら気にかけないのである。


 これらを踏まえて、もう少しわかりやすく、でももう少し厳密に(「近づく」をもう少しどうにかしたい)、自分で書き換えてみる。

どんなに ε が小さくなっても(あ、マイナスっていう意味じゃないよ? 0に近いって意味の小さいね)、a との差が δ より小さくなるような x ならどんな値を代入しても f(x) と bとの差が ε より小さくなるってことを保証する、そんな δが存在しますよ。・・・ってことが言える。

 これは元の文よりはかなり理解しやすいだろう。


 AI が、数学などの勉強の理解をもアシストしてくれるいい家庭教師になればな、と思う。ただ、まだ信用しきれてはいないけれど。

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