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商標制度が企業を守る。

アガットイノベーションと関係の深い経営者に、その職業を選んだ経緯や、起業・独立の苦悩などなど…仕事への想いを語っていただく『経営者インタビュー』企画。


第2弾は弁理士中村祥二さんです!

中村祥二 <弁理士>
東海大学 法学部 法律学科 卒業。
2002年 株式会社サトー(現サトーホールディングス)に入社(所属:知的財産部門)
2009年 特許業務法人創成国際特許事務所に入所(所属:意匠・商標部門(部門長))
2018年に独立し、Markstone知的財産事務所を設立。
豊富な経験と幅広い海外ネットワークを駆使してグローバルに企業のロゴマークネーミングを守り、事業の発展をお手伝い。

弁理士事務所の代表弁理士としては勿論、セミナー講師やイベント、勉強会の開催など様々な顔をお持ちの中村さん。弁理士を目指したきっかけから、商標制度に懸ける想いまで沢山の興味深いお話を伺う事ができました!




商標制度が企業を守る。


—弁理士という職業を知ったのはいつ頃でしたか?

大学生の時です。大好きだった音楽に関する法律を学んでみたい!と、著作権に興味を持ったことが始まりです。知的財産法を学べるゼミに入り、知的財産法には著作権以外にも特許権や商標権があること、それらの権利を取り扱う弁理士という職業があることを知りました。


—では在学中から弁理士の勉強を始められたのでしょうか?

いえ、当時の弁理士の合格者の平均年齢が30〜40代だった事もあり、今すぐに弁理士になろうとは考えていませんでした。その後の就職活動でも、ゼミで学んだ知的財産法の知識を活かせる仕事がしたいと思い、主にメーカーやレコード会社などを受けていました。
ただ就活の面接では向上心のある学生を演じて「弁理士を目指しています!」とアピールしていましたね。笑



—その後はメーカーの知的財産部門に入社されています。

入社から3〜4年後に弁理士の資格勉強を始めました。日々仕事をする中で、やはり弁理士の専門的な知識が必要だと感じたからです。仕事をしながら予備校や通信講座で勉強を続け、転勤による中断をはさみながら5年ほどかけて遂に資格を取得しました。


—そして2009年からの9年間、特許事務所に勤められています。同じ知的財産を扱う仕事ですが、企業と特許事務所では違いを感じましたか?

企業にいた時は「どうやって会社が利益を出すか」を中心に据えて仕事をしていました。社内の発明者との調整や、企業全体の方向性に沿って権利化を進めることが求められていました。

対して弁理士事務所は、企業から生まれた発明を保護する側になります。権利化に至るまでの過程をいかに上手く、正しく進められるか。企業側からは見えなかった新たな視点で、知的財産に向き合うことが出来ました。



—スタートアップ経営者の方々も気になっている独立のお話を伺ってもいいでしょうか?

はい、元々は独立する予定はなかったんです。弁理士の主なクライアントは企業なので、小さな事務所よりは所属人数の多い特許事務所の方が、仕事を依頼されやすい傾向にあります。そんな中でも独立しようと考えたのは、特許事務所の料金体系に疑問を持ったからです。

ほとんどの事務所では、“特許庁への申請件数毎に〇〇円”という料金体系をとっています。これは『ブランドが持つ本来の価値を正しく反映』出来ているのでしょうか?
例えばトヨタ自動車株式会社の場合、社名や沢山の商品サービスに使われる「トヨタ」というブランド名と、車種名の「カローラ」では使用範囲や世間に与える影響力に差があるはずなのに、事務所では申請件数2件として同じ金額で取り扱われます。私はこの料金体系では、企業が懸けるブランドへの熱量が正しく反映されていないと感じました。


—企業の知的財産部門の経験を持つ中村さんならではの視点ですね。

企業は1つのブランド、商品を生み出すまでに多くの時間と労力を使っています。弁理士事務所としても、その熱量を正確に受け取りたいと考えたのです。

結局、独立準備には半年ほどかかりました。1人でWebサイトを立ち上げたり、事務所の候補地を探したり。2018年、商標をはじめとするブランドに関する知的財産を専門に取り扱う弁理士事務所「Markstone知的財産事務所」を設立しました。



—中村さんは主体である弁理士業務以外にも、動画やブログ投稿、イベント(知財パエリアの会)や勉強会(特許判例百選の読み合わせ勉強会)の開催・セミナー講師・非常勤講師などなど…様々な分野でも活動されています。

勉強会は、専門家との実務的な情報交換の場として非常に役立っています。少人数で仕事をしていると、どうしても知識や考え方が偏ってしまいますからね。
知財パエリアの会は、新たな繋がりが生まれる交流会として続けていきたいなと考えています。美味しいパエリアを食べると幸せになりますから。


また、今後は「商標制度をより広く知ってもらう活動」にも力を入れていきたいと考えています。
近年、世間でも商標権が注目を集める機会が増えています。例えば、平昌オリンピックで一躍流行語となったカーリング女子日本代表の「そだねー」をお菓子会社が商標登録の出願を行い話題になりました。この出来事に対する企業や世間の反応を見て、商標制度が世間に正しく理解されていない現状を知りました。

適切な権利取得が、企業の利益獲得や消費者の取引の安全にも繋がるということを皆さんに知っていただきたいです。



—私自身、商標権という言葉は聞いたことがありましたが、
商標権が何のためにあるのか?何故取得する必要があるのか?までは深く理解できていませんでした。会社の利益にも直結する大事な制度なんですね。

そうなんです。特にスタートアップ経営者には必ず理解していてほしい制度です。知的財産法と聞くと、どうしても保守的なイメージがありませんか?ただでさえタスクの多いスタートアップ企業にとっては、商標登録しなくても製品をローンチできる からと後回しにしてしまうケースが多く見受けられます。



—なんとなく、経営活動が安定してきた企業がようやく手を付けるものと思っていました。

確かに、ようやく勢い付いた活動にブレーキをかけてしまう面もあるかもしれません。しかし、せっかく定着してきた会社名・ブランド名でも、他社の先行商標が発見された場合には、変更を余儀なくされることもあります。
手遅れになる前に、ブランド名の候補を挙げる段階から我々弁理士に相談してもらえればと考えています。


今は特許庁への出願手続きも専門家を通さずに出来てしまう時代です。だからこそ商標権を上手に取得しなければ、事業活動に役立たないばかりか、場合によっては権利が取り消されてしまうリスクもあります。どのような商品やサービスについて商標権を取得すればよいのか、お客様にヒアリングをした上で権利の取得方法をご提案するのが私たちの仕事です。「商標制度をより広く知ってもらう活動」を通して、スタートアップ経営者にもまずは商標制度を身近に感じてもらいたいです。


弁理士として、彼らが新しいチャレンジを始める前向きな気持ちをお手伝いできれば嬉しいですね。






本日もご覧いただきありがとうございました!

中村さんのnoteでは、今回話題に上がった「知財パエリアの会」「特許判例百選の読み合わせ勉強会」についても詳しく紹介されています。是非是非ご覧ください!



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