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映画『ニューノーマル』感想 生産性のないスリラー映画

 もう少し下調べして作品を選ぶべきでした。映画『ニューノーマル』感想です。

 女性を狙った連続殺人事件が世間を賑わせているソウル市での出来事。 マンションでひとり暮らしをするヒョンジョン(チェ・ジウ)のもとに、予定のない火災報知器の点検が来る。 進路に悩む中学生のスンジン(チョン・ドンウォン)は、車椅子の老女を手助けしようと声をかける。 大学生のヒョンス(イ・スミ)は試しに使ったマッチングアプリで、初めて待ち合わせをしようとしている。 出会い系アプリを信用出来ないフン(チェ・ミンホ)は、自販機に隠された不思議な手紙を見つける。 隣室に住む美しい女性に恋焦がれるギジン(ピョ・ジフン)は毎日彼女を盗撮しては、想いを募らせる。 コンビニで働くヨンジン(ハ・ダイン)は、迷惑な客への対応に追われる毎日で世界の全てを呪っていた。 それぞれが暮らしていた日々には、死と恐怖がいつも潜んでいる…という物語。

 『コンジアム』で韓国ホラーの名手となったチョン・ボムシク監督によるオムニバス・スリラー映画。韓流ドラマブームの火付け役となった『冬のソナタ』で有名なチェ・ジウが7年振りに映画出演したというのも話題になっています。
 どうも観たい映画が見当たらない、スケジュールが合わないというところに公開されたタイミングだったので、よく調べずに飛び込みで観てみました。韓国映画ならハズレがないだろうと踏んでいたのですが、その考えはちょっと甘かったようです。
 
 オムニバス形式にはなっていますが、それぞれの舞台は近隣で、ほぼ同時期に起こるものとして共通の舞台となっています。あるエピソードで死体が登場すれば、それとは別のエピソードでその顛末が描かれるなど、少しずつリンクさせて長編映画として繋げる意図のようです。
 だけど、これがちっとも効果的ではないんですよね。少しずつリンクはしているけど、別段、全体の大きな物語に繋がる仕掛けがあるわけでもないし、基本的には無関係な人々のホラー話が繰り返されるだけなので、個別に物語を観ているのと変わりがないんですよね。しかも、舞台設定も近隣にしているので、やたら事件が起こる物騒な街という、ホラーとしては都合が良すぎる場所になってしまっている印象を受けます。
 
 それぞれの物語の結末は、結構エグい終わり方というか、映像としては大してショッキングなシーンはないものの、バッドエンドであることを基本軸にしたものとなっています。ただ、それに至るまでの前フリ部分は、非常にポップなコメディ風味になっていて、それによって結末のショッキングさを増幅させる狙いがあるようです。
 ただ、この部分もそれほど効果的とは思えず、結末で急にジャンルが変わったとしか思えないんですよね。作品の全体を観た時には、全く脈絡がなく完成度の低いホラーでしかないと感じてしまいました。
 
 どうも肌に合わないものを感じていたのですが、後から調べたところ、この作品自体は韓国オリジナルではなく、日本でずいぶん前に放送されたホラードラマ『トリハダ』という作品のリメイクに近いもののようです。そこに、韓流ドラマ風味と、韓国ノワール・ホラーを掛け合わせた企画みたいですね。
 ただ、オフィシャルHPにはその辺りの記載がなく、見逃していましたがエンドロールに少し登場するのみになっているようです。それがあったら観る観ないかはともかくとして、ちょっとその姿勢にも疑問がわいてしまいましたね。あんまりちゃんとしていない作品なのかという印象を抱いてしまいました。
 
 一応、貧困や鬱屈とした人々を描くことで、現代韓国の社会問題を反映させようとしている箇所はあるものの、それもあまり物語そのものには影響を与えていないので、何となく付けたものにしかないんですよね。ラストエピソードのハ・ダインさんの演技は印象に残るものでしたが、だからこそ、結末は結局クソみたいなこの世界では何してもムダというメッセージになってしまっています。
 
 全編渡ってバッドエンド自体は問題ないんですけど、そこに至るまでがあまりに必然性が無さすぎるんですよね。まあ、要するに韓流ドラマ的なキャスト目当てで来たお客に、ショッキングな結末でガツンと嫌な気分になってもらうコンセプトなのかもしれませんが、長編映画という体でやるには不向きだった気がします。韓国映画を過信していた身に、冷や水を浴びせられる反省すべき映画体験でした。


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