アニメ映画『インサイド・ヘッド2』 懐かしい記憶と共に彩る、未来への希望
万人に受けるのも納得の質の高さ。アニメ映画『インサイド・ヘッド2』感想です。
2016年に公開され、アカデミー長編アニメーション賞を受賞したディズニー&ピクサー製作『インサイド・ヘッド』の続編。既に興行収入はこれまでのアニメ作品の記録を塗り替えるほどの大ヒットをして話題となっている作品です。
大ヒットした前作は、当時観ておらず、正直ディズニー&ピクサーのアニメ作品は、面白いと思うものの、ちょっとどこか難癖付けたくなる部分があるので、TV放送された時にたまに観てみるくらいのものでした。第1作目もその流れで、「2」の宣伝を兼ねたTV放送の際に観てみたところ、震えるほど感動してしまい、これまでの斜に構えた自身の態度を、土下座して赦しを乞うくらいに反省したんですよね。ホントに「1」は大傑作だと思います。
そんなニワカファンとして、今作は劇場で鑑賞したのですが、こちらも素晴らしい出来と褒め称えて良いと思います。しみじみと素晴らしい作品でした。
この「感情のキャラクター化」という素晴らしい発明によって、ライリーという少女の平凡な物語が(平凡だからこそ)、とても輝いて面白いものに魅せてくれています。前作では、子どもの気持ちを分析することで、同世代への共感を誘うのはもちろん、それ以上の世代には保護者のような気持ちと同時に、自分自身の幼少期の気持ちを言語化、映像化してみせていました。
今作ではそこからさらに複雑な「思春期」を描いたものになっています。前作でも「記憶あるある」の細かい解像度が素晴らしかったんですけど、今作の「思春期あるある」の解像度も素晴らしいですよね。ちょっと共感羞恥を抱いてしまう程でした。
思春期特有の、理由もわからずに感情がコントロール出来なくなるライリーの姿が、脳内の感情キャラたちの意見衝突によって右往左往することに因るものというのが、非常に納得するものになっていて、それと同時にアニメキャラの活劇としても、とても可愛らしく面白いものになっているんですよね。
前作がヨロコビとカナシミの関係性がメインだったのが、今作ではヨロコビたち旧感情とシンパイたち新感情の関係性になっていて、より多くのキャラで賑やかになっているのが、ライリーの心情がより複雑なものになっているのと矛盾なくリンクしていると思います。
各感情キャラの間にも微妙に似ているものが通じ合うのも良いんですよね。カナシミとハズカシが通じ合うのもそうだし、ビビリがシンパイの考えに共感めいたことを言うのも、キャラ造形が巧く出来ていると思います。
シンプルに感情キャラの活劇としては、ライリーの脳内アドベンチャーということで、やっていることは前作とほとんど変化はありませんが、シンプルで充分に楽しめるものだと思います。ライリーのお気に入りのゲームキャラ・ランスの活躍も笑えますね。出口に引っかかって動きがカクカクするところとか、細かく笑いを入れているのもセンスがあります。
全ての感情が人を形作る必須の要素というメッセージ性も、前作で描いていたものとそれほど変化はありません。これでライリーや感情たちが前作から成長していないと思われる人もいるようですが、人間は同じ過ちを繰り返し、同じ気付きを繰り返すものなので、そういう意味での成長過程と捉えれば、実は物凄くリアリティある描き方をしているんじゃないかと、自分としてはとても納得出来るものだったんですよね。
また、昨今の作品にしては、ポリコレ要素が少なく、ライリーという白人少女をメインに仕立てて、他の人種が脇役扱いという批判も見かけましたが、個人的にはそれは当てはまらないと思います。ポリコレ的な要素が少ないのはそうなんですけど、この物語はあくまでライリーの脳内及び、その周囲の出来事なので、ライリーの主観がメインになるのは当然だと思います。そして、この年頃の子にとってはまだ社会に目が向かないのも当然だと思います。
これにて完結、というはずもなく、やはりライリーが自立した大人になるまでは物語が続くんじゃないかと予想と期待を持ってしまいますね。その年頃になったときに、ライリーが社会に目を向け、感情たちが社会に蔓延する格差や差別というものに、どう葛藤してどう立ち向かうかが描かれるのではないかと思います。そして、それも決して堅苦しい形ではなく、ユーモアと感動で正しい方向に導いてくれる描き方をしてくれることを望みます。
多くの人がライリーを自分と重ね、ライリーを家族のように想い、自分の中の感情を大事にする、厭味ではなく好い道徳作品だと思います。確かに子どもに観て欲しい作品だし、年齢を経てからも観ることで実りが生まれる傑作だと思います。
https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2
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