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ニュージーランドで裸足になって【ようこそ、ヒュナム洞書店へ】

わたしはなぜだか映画を見ることが苦手なのだが、昨日は最後まで見ることができた。映画のタイトルは『Hunt for the Wilderpeople』。

選んだきっかけは「ニュージーランド映画って珍しいな」と思ったことから。

最後まで見ることが出来たのは、ニュージーランド(以下、NZ)の壮大な自然を舞台にした映像の美しさ、言葉数の少なさ、主人公・リッキーのチャーミングさのおかげだと思う。

冒頭から意外な展開が待ち受けていて、「どうなっちゃうの?」と、気付いたら世界観に没頭していた。

わたしとニュージーランド


そもそもどうしてNZの映画に興味をもったのか。
それはNZが私にとってのお気に入りの国だから。

NZには、中学生のとき、修学旅行で1週間ほど滞在した。
こうしてふり返ると、なんて贅沢な経験をさせてもらったのだろう、と思う。

NZのバス。
下の柄は、国鳥である「キウイ」のモチーフ

滞在した1週間のあいだに、主要な観光地をめぐった。さらには、現地の高校生たちとも交流し、農場でファームステイをさせてもらった。

英語が話せない私にとって、異国の地で生活をすることは半ば恐怖であった。それが広大な自然の中となれば、そこはもうほとんど異世界と言ってよかった。

それでもどこか日本に似た部分も多いNZ。
車は右ハンドルの左側通行で、街はとても清潔だった。同じ島国で、大きな地震を経験し、そのたびに日本とNZは支え合ってきたのだ。

今でも時々思い出す。ファームステイをした家のこと。
国旗のモチーフでもある南十字星を取り囲んだ、まぶしいほどの星空。
リビングには暖炉があって、ダイニングにはインコがいた。
朝にはキャロットケーキを持たせてくれたお母さん。
ヤギのミルクを生産する工場で働くお父さん。
シャイなお兄ちゃんたちは、なかなか姿を見せてくれなかったけれど、最終日には無言でマジックを見せてくれた。嬉しかった。

ファームステイ先のわんこ
お父さんの工場のヤギたち

NZと日本の学校


訪問した高校

現地の高校を訪問した時、日本との違いにとにかく驚いた。

【数学の授業】

生徒たちは授業中だというのに、携帯で自撮りをし、後ろの席の子のノートに落書きをした
それでも先生は気にもとめず、時にはその生徒と笑顔で会話しながら授業を進めるのだった。

一方で私の学校では携帯の持ち込み自体、禁止だった
着信音などが鳴った日には、生徒指導室というせまく暗い部屋で、何時間拘束されるか分からなかったし、1人の過ちがクラス全員の連帯責任として、長すぎるお説教と話し合いの時間を過ごすことになっただろう。

【体育の授業】

体育では高校生たちと、ドッジボールをした。
驚くべきは生徒たちの足元。そう、裸足だ。

生徒たちはドッジボールを終えると、裸足のまま体育館を飛び出し、校庭の芝生へ走り出した。

なんということだろう。

日本での体育で私たちは、体育専用の靴を持参し、忘れた日には先生にバレないように隣のクラスの子から借りたというのに。(靴下までもが指定されていた!)

靴を忘れた日の体育は、靴に書かれた名前が違うことがばれないように、先生が近づいてくるたびにヒヤヒヤしたものだ。
そんなことがばれた日には、こっぴどく叱られてしまう。体育に参加させてもらえないかもしれない。
体育の先生はいつも剣道の竹刀をもって立っていた。(そんな漫画のような世界は本当にあるのだ!)

裸足でするドッジボールは背徳感があってたのしかったし、校庭の芝生は気持ちよかった。
冷たくて、かゆくて、足の裏は汚れてしまうけれど、一度土を踏んでしまえば、あとは気にならなかった。
NZでは、白い靴が汚れることは、もう気にしなくてよかった。

だから、わたしは幸福ではなく幸福感を求めて生きようって、考えを変えたんです。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム著

現地で出会った日本人


その高校には、日本人の男の子と女の子がいた。
彼らはグループの中心にいて、英語が話せない私たちを連れて、校舎の案内をしてくれた。

「どうしてNZに来たんですか?」
と聞くと、女の子は、
「日本が嫌になっちゃって。何も持たずに来ちゃったんですよね」と笑顔で言った。

その勇気が途方もないものに見えて、ただただ眩しく見えた。
それと同時に、なんだか安心している自分がいた。

当時の私は、家に帰ると両親がいつもケンカをしていて、彼らの機嫌を伺っていなくてはいけなかったし、学校では女子グループからハブられないように常に必死だった。

居場所なんてあるようで無くて、それでもなんとかその場所で、居場所を作らなくてはいけない、と思っていた。

そんな私にとって、彼らは希望だった。
日本でうまくやれなくても、NZではグループの中心になっていて、裸足のまま校庭を駆けまわっている。そんな姿が、ほんとうにほんとうに、まぶしかった。

いつかまたNZに来るかもしれない。
世界の別の場所に、ひとつだけ、居場所を見つけたような気がした。

誰があの子を鳥かごに押し込めたのだろう。あの子は知っているだろうか。鳥かごの扉は中からでも開けられることを。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム著

広大な自然


いつかまたNZに、あの自然を、羊たちを、夜空を、見に行きたいと思う。

映画『Hunt for the Wilderpeople』を観て感じたことは、圧倒的な自然を前にすると、人間の常識なんて役に立たないということ。

誰か一人のものさしなんて、通用しないのだ。
それは、人間よりも羊が多いというNZでは、当たり前の価値観なのかもしれない。

何を信じるか、信じたいかは自分で決めていきたい。
そのためには世界を知ること、現状を疑うこと、自分を見つめることが大切なのかもしれない。

久々の映画鑑賞を通して、再び考えるきっかけを得られた気がする。

彼女はもう、意思や情熱といった言葉に意味を求めないことにした。自分が頼るべきは、みずからを駆り立てるために繰り返し唱えてきたそういう言葉ではなく、身体の感覚だということを知ったからだ。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム著
黒く見えるのは牛たち
キュートな子ヤギ
またいつか行きたい、ニュージーランド

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深瀬みなみ
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