【読書録②(不安への対処)】最高の体調 著:鈴木祐
いつもの腹痛が少しでも和らぐかも。
という淡い期待があり、手に取ってみた本。ためになる内容でした。
現代人の不調(炎症や精神的な不調)の原因を狩猟採集民との対比によって、わかりやすく明らかにしてくれます。
私自身も、将来に対して「ぼんやりと不安」になることがあるけれど、何もできないときがあり、さらにモヤモヤしてしまうことがあります。
この本を読んで、自分自身の経験と照らし合わせると、「そうだよな~」と妙に納得してしまいました。
前回は「腸の炎症」部分をnoteさせてもらいました。
今回は不安についてnoteします。
■現代の精神的な不調の原因とは
狩猟採集を続けている部族(古代のライフスタイル)と先進国において、精神的な不調による病の発症率を比較した研究があるらしく、これは圧倒的に先進国で発症する率が高いそうです(失礼かもしれませんが、まあ、なんとなく、そりゃそっかという感じです)。
とりあえず、身体の炎症と同じく精神病も文明病の一種といえそうです。
本書では、精神的な不調の原因を「ぼんやりとした不安」を切り口に紹介されており、この現代の「不安」の正体を、古代と現代の時間軸の違いから説明されています。
時間が「不安」とどのような関連があるのか。
【古代の不安】
獲物が捕れない。猛獣に襲われるなどの、命や身体に対する危機。明確で、かつ、時間としては比較的近い未来または今に対するアラームです。
【現代の不安】
ぼんやりとした不安。実現するかしないかもわからない未来に対する悩み。
古代の不安は、明確にいま対処すべき事象から発生しているものであり、対処方法が明確で、対処することが効果的なアラームです。一方、現代の不安は、そもそも何が不安なのか、対処すべきなのか、対処すべきでないのかもよくわからない不安です。
ただし、いずれの不安もアドレナリンを放出し、「ストレス」とともに、瞬発的な力と負荷を身体・精神にもたらします。現代人は、「ぼんやりとした不安」によって、不要な負荷を身体・精神にかけていることになります。
慢性的でぼんやりしたアラームが、身体にストレスをもたらし、絶えず疲れがとれなくなっているという理屈は私自身には非常にしっくりきました。
■ストレスへの対処
不安を完全に無くすのは、現代を普通に生きる私たちには難しいと思います。ただし、その不安をコントロールし、少しでも快適に暮らせるようにするメソッドが紹介されていました。
対処方法① リアプレイザル
「リアプレイザル」はご存知でしょうか。私は知りませんでしたが、これは怒りやネガティブな驚きなど「ストレス」を感じる場面において、それをポジティブにとらえる手法のことのようです。
あくまでも、一時しのぎの対策として紹介されています。
例えば、スピーチが嫌いな方はスピーチが近づいてきたら通常ストレスを感じるものですが、これをあえて「楽しくなってきたぞ!」とか「興奮してきたぞ!」ととらえる方法です。要するに自分で自分を騙すということだと思います。
ハーバード大学の実験において、「数学のテスト」や「スピーチ」の前にリアプレイザルを実施したグループと、実施していないグループにわけて結果を測定したところ、ポジティブに解釈したグループでは結果が17%から22%も成績が向上したそうです。
自分の感情をコントロールし、意図的に良い影響を与えることができる。
他人から嫌なことをされたときにおいても、一歩ふみとどまって「この人には何かあったのかもしれないな」っと一時おいて、客観視してみるのもリアプレイザルの一種だそうです。
なかなか難しいときもあると思いますが、私もイラっときたり、ストレスを感じる場面において、自分の感情を一時おいて、自分自身の感情を感じつつ、状況を整理してみたいと思います。
自分の感情を感じる(考える)というステップが重要なのかもしれません。
対処方法② 睡眠不足の解消
睡眠不足、睡眠負債という言葉を、最近よく耳にします。
ところで、良質の睡眠とは以下を満たすこととされているようです。
・眠りに落ちるまでの時間が30分以内
・夜中に起きるのは1回まで
・夜中に目が覚めた場合は20分以内に再び眠ることができる
・総睡眠時間の85パーセント以上を寝床で使っている(昼寝等が15%を超えない)
・睡眠時間は7時間程度
幸いなことに今の私は、良質な睡眠がとれていますが、以前の仕事の時には7時間も眠ることはできていませんでした。
現代の我々は、仕事や生活の状況によって、すべての時間を自分自身だけでコントロールすることは難しいと思います。
少ない時間に、少しでも良質な睡眠をとるためには、「日中太陽の光を浴びる時間をできるだけ増やし、夜には室内の照明を限界まで落とす」というのがポイントのようです。
また、2日間太陽の光に浴びることで、狂った体内時計も69%ほど元に戻すことができるという結果もあるそうです。
こういった意味では、キャンプは最適ですね。
対処方法③ 運動(ウォーキングだけでも)
どんな運動でもある程度の負荷があれば、脳にはよい影響があり、ストレス低減につながるようです。
<運動の目安>
・1回のセッションで45分から60分くらい
・週に2回の運動と週に4回の運動は両者に大きな違いはない
・運動のレベルは「軽く息が上がるぐらい」から「へとへと」までの範囲で実施する
少しだけ息が上がる好きな運動を週2回45分間実施するのがポイントです。
対処方法④ 価値観を明確にし、未来を今に近づける
ぼんやりとした不安は「時間軸の違い」であるため、恒久的な対応方法は「未来を今に近づける」になります。
未来への心理的な距離を縮める。あくまでも心理的な距離であるため、人それぞれになると思いますが、自分が思い描く未来に対して現実感がないのが「不安」につながるということだと思います。
まずは、「未来に目的をもつ」ことから始めます。これにはご自身の価値観を見定める必要があります。
ここでも古代人の話が紹介されていますが、古代人の生きる目的は単純です。「生きる産む育てる」という価値です。
一方、現代の我々は、多様なライフスタイルから生まれる複雑な価値観の中で生きています。一様ではないため、その分、ぼんやりとした不安を抱えることになります。
では、どのように価値観を明らかにしていくのか、本書では「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)」が紹介されています。
この「ACT」はあなたの「本当の価値観」を明らかにする手法です。
「お金が欲しい」「幸福になりたい」「尊敬されたい」といった今の自分との比較から生まれる価値観(目標)ではなく、「すべてが満たされているときに、自分がどのような行動をとるか。自分や他者との関わり方はどのように変化するか」を明らかにすることにあります。
価値観を探り当てるツールとしてミシシッピ大学の「価値評定スケール」が紹介されています。
12種類のある分野について、あなたがどのように行動したいかを1から2行程度の短文で表現し、自分自身の価値観を明らかにするという手法です。
設問を参考に、自分自身の価値観を表現します。
<価値評定スケールの12分野>
1. 家族
どのような父、母、娘、息子、叔母、叔父…でありたいか。
家族に対してどのように接するか。
2. 結婚・恋愛
緊密な相手に対してどのようなパートナーでありたいか。
どのような関係性を築きたいか。
もしも「理想の自分」だとしたら、相手にどのように接するか。
3.子育て
どのような親になりたいか。
子どもとどのような関係を築きたいか。
どんな個性を育てたいか。
4.友人・対人関係
どのような友情を育てたいか。
友人関係のなかに自分のどのような特徴を活かしたいか。
自分が相手にとって最高の友人だとして、どのようにふるまうか。
5.キャリア・仕事
自分は仕事のどういった点に重きを置いているか。
自分のどのような資質を仕事に活かしたいか。
職場や仕事のパートナーとどのような関係性を築きたいか。
6.自己成長
もっと知りたいことは何か。
学習について、どのような点を重視しているか。
習得したい新しいスキルは何か。
7.余暇・レジャー
どんな趣味や遊びをしてみたいか。
自分がリラックスできるのはどのようなことか。
どんな時に一番楽しいか。
新たに参加してみたい活動はなにか。
8.スピリチュアリティ
宗教、大自然、宇宙のような「人智を超えたもの」に対してどのような関係性を築きたいか。
どのような哲学的な疑問に興味があるか。
9.コミュニティ・社会生活
どのようなコミュニティの一員でありたいか。
地域社会にどのように貢献したいか。
自分の居場所をどのように作りたいか。
10.健康
身体の健康について何に重きをおいているか。(疲れない体つくり、規則正しいライフスタイルなど
自分の身体をどのようにケアしたいか。
11.環境
地球の環境について何に重きをおいているか。
環境改善について貢献したいことはあるか。
12.芸術
絵画、音楽、文学、アートとどのような関係を築きたいか。
どのような芸術に触れたいか。
参加してみたい芸術活動はなにか。
自分もやってみたのですが、価値観ではなく最初は「人生の目標」を書いてしまっていました。目標ではなく「価値観」であることが重要なようです。
目標と価値観には明確な違いがあります。
目標は「達成すべきゴール」のことです。価値観はゴールではなくビジョンです。価値観には終わり(ゴール)はありません。
例えば、
「クリエイティブな仕事につく」は×、「クリエイティブな人間でいる」は〇といった要領です。
「結婚する」は×、「好きな人と楽しく暮らす」は〇。
目標は結果が明確です。
達成するか、達成しないか。結果が明確にわかれます。
弁護士を目指している人が「司法試験に受かる」という目標を設定しているとします。試験に落ちることを考えると不安になりますが、その背景として「困っている人を助ける」という価値観が同時に明確になっていれば、司法試験の辛い勉強も「他人を救うための実践方法のひとつ」に変わります。
価値観の明確化は、結果に対する漠然とした不安を和らげ、現在の実施すべき行為に意味を見出すことを可能にします。
これが、「今を未来に近づける」効果を与えるのだと思います。
それぞれの分野について、「重要度」と「一致度」を10点満点で評価します。
重要度・・・自分の人生にどれだけ重要か。
1点:まったく重要でない。
10点:最高に重要。
一致度・・・過去1か月の行動から価値観に基づいた行動がとれたか。
1点:まったく一致していない。
10点:完全に一致している。
価値観がはっきりとすれば、きっと、あなたの行動の指針が明確になり、未来と今がリンクし意味あるものになるものになるはずです。
「どこに行こうとしているのかわからないのに、決して遠くまで行けるものではない。」(ゲーテ)
■まとめ
現代人の「ぼんやりとした不安」は、本当の価値観をはっきりとさせる(ACT)ことによって、和らげる(なくす)ことができる。
ストレスに対しては、ポジティブに受け止める(リアプレイザル)ことで、ストレスを短期的に回避し、よりよい結果を得ることができる。
溜ってしまった「ストレス」と「不安」には、良質な睡眠と少しの運動で対処ができる。
ここまで書いておきながら、なんですが、本当に精神的な不調を発症されている方には時間のかかる対処方法であろうと思います。
あくまでも、予防のひとつとして実践していきたいと思います。
皆さんのご参考になれば幸いです。
ちなみに、前回は以下↓