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#033『作家であるためには黒人でなければならないという言葉は、いつも浴びせられていました』|ベッシー・ヘッドの言葉|Letter
They insist that she (Dikeledi) is mis-cast. She is not African. I wonder if they know what African is, if limitations can be placed on the African personality. But this insistence on a nationalistic attitude, that one had to be black and African to be a writer was flung at me all the time. Me, I did not care. I am supreme and I know it. I was asked by a Nigerian politician to liberate the people of South Africa and I replied that South Africa had had Steve Biko and they did not need me. There'd be another Steve Biko soon. (中略)
I was a story teller before I was an African with a special writing technique, that of the broad horizon view of the born story teller. I know myself quite well. I can never live down in an environment and even if I had been born midnight black, green or blue I'd still dominate and be above an environment.
彼らは、彼女(ディケレディ*)はミスキャストだと主張しています。彼女はアフリカ人ではないのだとか。では、アフリカ人とは何なのか、アフリカ人としての人格にどんな条件があるのか、彼らは知っているのでしょうか。
でも、作家であるためには黒人でなければならない、アフリカ人でなければならないという民族主義的な態度の主張は、いつも私に浴びせかけられました。私は、気にしませんでした。自分は至高の存在であり、それを知っているのですから。ナイジェリアの政治家から南アフリカの人々を解放してほしいと頼まれたとき、南アフリカにはスティーブ・ビコがいるから、私は必要ないと答えました。やがて南アフリカには新たなスティーブ・ビコが現れるでしょう。(中略)
私はアフリカ人である前にストーリーテラーであり、生まれつきのストーリーテラーの広い視野と特殊な文章術を持っています。私は自分のことをよく分かっている。私はある環境の中で決して卑屈になることはできず、たとえ私が真夜中の闇のような黒や緑や青に生まれたとしても、その環境を支配しその上に立つのです。
*小説”MARU”の登場人物
アメリカの研究者Jane Grantに宛てて書かれた手紙の一節である。ベッシーの大量の書簡はカーマ・メモリアルミュージアムに保管されているが、そのほとんどが未公開の貴重な資料だ。
ここで述べられている短いフレーズが、黒人と白人の子どもとしてピーターマリッツブルグの精神病院で生まれ、養子に出された白人夫婦には「肌が黒い」と突き返され、カラードの負債に引き取られたあと「孤児院」(的な全寮制スクール)で育ったベッシーの出生を強く思い起こさせる。その後も、半アパルトヘイト闘争の中で黒人にも、カラードにもなりきれない中で出国許可証のみで1964年ボツワナに亡命、作家として成功しても黒人でも白人でもないことを周囲からとやかく言われ続けるという人生でもあった。
このような文章は、公開されたものよりも未公開でプライベートな所感の中でこそ率直で強烈に登場するので、書簡を読むのは面白い。(いずれ広く読まれることを想定している部分もあったかもしれない)
ベッシー・ヘッド研究のみならず、アイデンティティや人種主義に対する課題を教えてくれるベッシーの書簡は、現在の社会においても非常に貴重で示唆に富むものである。
これらの書簡をいずれ、日本で編集して出版したい。その話をボツワナの研究者たちと進めたいと思う。
作家ベッシー・ヘッドについてはこちらのマガジンをご参照
https://note.com/africanwhale/m/m72ab2203b0c3
メインブログ『あふりかくじらの自由時間』
https://africanwhale.blog.jp
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