#036『その恋は夏に始まった』|ベッシー・ヘッドの言葉 | Short Story
ベッシーの描いた短編「The Lovers(恋人たち)」は、ボツワナに古くから伝わる恋人たちの伝説を彼女なりに解釈してうつくしく描き出したものである。
ハボロネからほどちかいオツェにある小高い丘「Otse Hill」は通称「Lentswe la Baratani」(Lovers' Hill=恋人たちの丘)と呼ばれる。その昔、若者は親の決めた相手と結婚せねばならず、自由恋愛などご法度中のご法度だった時代、偶然に出会って恋に落ちた二人が、村での家族や立場を捨てて駆け落ちし、丘が二人を飲み込んだという伝説がある。
ベッシーのバージョンでは、最後ふたりが不思議と消えてしまい、丘に飲み込まれたというところまでは描いていないところに特徴がある。伝説は伝説なのだ。
とはいえ、現在でもこの丘は神聖な場所とされているそうだ。そして恋人たちの物語は、アートや演劇などのモチーフにもなっている。
2023年にボツワナのセロウェにあるカーマ3世メモリアルミュージアムでのアーカイブ調査中に、タイプライターで書かれたこの短編集の原稿を読みふけってしまい、このLoversもすべて読んでしまった。引き込まれる物語である。
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