秋の日に頂いたおくりもの

すこし冷える日だ。
時期的には春だが、この肌寒さで思い出した。

昨年の秋にいただいた手紙の話。

私は、一年ほど文通村という媒体を通して
文通をしている。
自分よりも人生の先輩方が多く、
知らない世界を教えてもらえる上、
自分の書きたいことだけが書けるので
ちょうどいい距離が保つことができ、
意外にも続いている趣味の一つだ。

その中に、
元国語の教師、いまは定年退職された
ゆうじさんという方がいる。
ゆうじさんは、趣味で短歌を詠んでいて
私にも四季折々のことばをお裾分けしてくれる。



そのゆうじさんに恋愛相談をした。

『今の彼は、いい人だ。
だけど、女性の扱いができなくて
イライラしてしまうときがあって
自分が嫌になる』



忘れた頃にお返事が来た。

自分も女性の扱いが長年わからない。
だから、女性の扱いなんて、
僕には耳が痛い話だ。
女性と男性は、脳が違うというし、
ある程度はご愛嬌かもしれないね。

ただね、
ひとは六角柱だと思う時があるんだ。
ある一面を知れたと思っても
知らない一面もある。
彼にも、あなたが好きな一面もあれば
嫌いな一面もあるんじゃないかな。

全ての面を好きになれるんだろうか。

そうだ。
胸にすとんと落ちた。

彼の全部を好きになるなんて。
そんなのはなから無理だ。

それが言葉にされた途端、

ふしぎと、
すっと軽くなった
気がした。

わたしも完璧じゃないんだし。
そりゃ彼にも完璧を求めたらダメだよね。



ゆうじさんはさらに続けて
自分の経験した恋の話を少し書いてくれていた。

大学時代、自分にもお付き合いした女性がいた。
就職を機に
遠距離恋愛になってしまったんだけど。
そのとき、
彼女は自分と結婚したいといっていたが、
自分は身を固める覚悟ができず、
結局お別れしてしまった。
まさに当時流行った
「木綿のハンカチーフ」のようだった。

定年した今も、思い出して苦い想いになる。
あのとき、結婚していれば。
還らぬ昔はやり直せない。
あなたも後悔しない決断をしてほしい。

よみ終わってすぐに
「木綿のハンカチーフ」を聴いた。

時間をかけて、ゆうじさんの言葉を
自分の心に溶かしていった。
自分の物にできるように。



外でコオロギが鳴いていた夜だった。

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