どうして周りに恵まれてると思う?それはね、
これは、
「自分は周りに恵まれてる」と
鼻高々に言っていた彼が
私に1年前にくれた言葉だ。
*
1年前、私は失恋がきっかけで、
死にたがりで自暴自棄になっていた。
どうしてうまくいかないんだろう。
もやもや。どうして私だけ。もやもや。
そういえばいつもそうだったな。もくもく。
今までの人生も何もうまくいってない。ぼーー。
ともやもやとした黒い煙に
もくもく包まれて、希死念慮が爆発していた。
彼の前でも、ことあれば、
マイナスな発言を繰り返していた。
『どうせ私のこと、ばかだって思ってるくせに!』
『私のこと性対象としか見てないくせに!』
今考えれば、自分でもウザすぎる女だ。
他人だったら倍うざいだろう。
だけど、彼は一瞬も、
わたしをぞんざいににする素振りを見せなかった。
私がそんなことを言うのが不思議だと言う顔で
真剣に話を聞いて、一緒に悩んでくれた。
優しい。
眩しい。
この人はきっと、一度も死にたいと思ったことがない幸せな人だ。
自分とは住む世界がちがう。
優しい彼に感謝する一方で、
〈この人は住む世界がちがうんだ〉と線をひいて
接した。私はこんなふうにはなれないんだ。
いいなぁ。心から羨ましく思った。
そんな彼が、ぽつりぽつりと自分の話をしてくれた。
ありきたりな中学時代。
人気者だった高校時代。
ふざけてた大学時代。
どれも沢山の人に囲まれていて羨ましかった。
『いいね。楽しそうで。羨ましい』
口から出ていた。
「自分は周りの人に恵まれているからね」嬉しそうに彼はいった。
『あなたはいい人だから、周りもいい人ばかりだね』私は、嫌味なく言った。
彼は不思議そうな顔をして、私に教えてくれた。
「どうして周りに恵まれていると思う?
それはね、自分が出会えてよかったと思える人に出会ったら、その人を大切にするからだよ。性別は関係ない。絶対に嫌われることしたくないし、すごく大切にするんだ。」
*
心に響く言葉ってあるとしたら
この言葉だった。
この言葉を発した彼に、
完全に私は心を奪われた。
彼の言葉が本当なら
自分も出会えた人を大切にすれば、
周りに恵まれた人になれるかもしれない。
そんな希望が心にぽとっと灯った。
羨ましかった彼は、
別世界の人じゃない。
自分もなれるかもしれない。
そして、1年後の今。
私は別人のように
たのしく生活している。
彼には絶対に見せれないし伝えられないけど。
感謝を込めて。
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