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自己理解を高める「3つの自分」:感情のバランスを整えるステップ

自分を知る新しい方法

「あなたはどんな人ですか?」

この質問に対して、「私は優柔不断です」とか「私は内向的な性格です」と、すぐに答えられる人も多いでしょう。私たちは過去の経験や他人からの評価をもとに、自分にラベルを貼ってしまうことがあります。これらのラベルは、行動を選ぶ際に迷いを減らす助けになる一方で、自分の可能性を狭めてしまうこともあります。

固定されたイメージの問題点

自分を特定のイメージに縛ってしまうと、新しい挑戦を避けたり、「自分には無理だ」と思い込んでしまうことがあります。

たとえば、「私は人前で話すのが苦手だ」と決めつけてしまうと、発表の機会を避けてしまい、成長のチャンスを逃してしまうかもしれません。

ACTの自己に対する考え方

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、自己を以下の3つの視点で捉えます。

  1. 概念化された自己:固定された自己イメージのこと。たとえば、「私は不安症だ」「私は運動が苦手だ」など、自分を一言で表すものです。

  2. 継続的な自己認識のプロセスとしての自己:今この瞬間に自分が何を感じ、何を考えているかを常に意識すること。

  3. 観察者としての自己:自分の思考や感情を一歩引いて、客観的に観察する存在としての自分。

1 「概念化された自己」とその影響

「概念化された自己」は、自分自身についての物語のようなものです。この物語に縛られると、新しい可能性や選択肢を見逃してしまうことがあります。たとえば、「私はいつも失敗する」と思い込んでいると、新しいことに挑戦する前から諦めてしまうかもしれません。

自分の物語を変える

しかし、私たちは自分の物語を変えることができます。事実そのものは変えられなくても、その解釈を変えることで、新しい道が開けます。

たとえば、「失敗ばかりだ」と感じていたとしても、「失敗から学んで成長している」と考えることで、前向きな行動が取れるようになります。

新しい自分を見つける勇気

固定されたイメージを手放すのは勇気がいりますが、それが自分を自由にする第一歩です。未知の自分を発見することで、人生はより豊かで充実したものになるでしょう。

2. 継続的な自己認識の大切さ

日常の中で「今、自分が何を感じ、何を考えているのか」を意識することは、とても大切です。自己認識が不足していると、自分の本当の気持ちや欲求が見えにくくなり、意図しない行動や無理な振る舞いにつながることがあります。

たとえば、「自分は常に前向きで感謝を忘れない人間だ」と思い込んでいる人が、実際に悲しみや怒り、嫉妬を感じた際に、それらを無視したり、抑え込もうとすることがあります。その結果、感情と裏腹に親切や明るさを装ってしまい、心の中で無理をしている状態が生まれ、ストレスや疲労が積み重なる原因となるのです。

感情を意識することで得られるもの

継続的な自己認識を通じて、自分のあらゆる感情をそのまま感じ取り、受け入れることができるようになります。自己認識が高まると、感情に柔軟に対応できるため、たとえネガティブな感情であっても「自分の一部」として扱いやすくなります。このように自分の感情を素直に受け入れることで、無理に感情を抑えたり、特定のイメージに囚われることなく、自分らしい行動を選択できるようになるのです。

自己認識を育む意義

自分の感情や欲求を正しく認識する力を育むことで、日々の行動や選択が本心に沿ったものになります。これにより、自分の行動が自然体で一貫性のあるものになり、心の安定や対人関係の質の向上にもつながります。継続的な自己認識を通じて、心の健康と調和のとれた自己理解を目指しましょう。

3. 観察者としての自己とは

「観察者としての自己」は、自分の中のもう一人の自分のような存在で、思考や感情を冷静に見つめます。たとえば、「今、私は怒っているな」と気づくことで、その感情に振り回されずに対処することができます。

心の中のチェス盤と駒

心の中の思考や感情をチェスの駒に例えると、私たちはしばしばその駒になってしまいます。しかし、ACTでは「自分はチェス盤だ」と考えます。駒(思考や感情)がどのように動いても、盤(自分)はそれを受け入れ、支えています。

チェス盤と観察者としての自己

チェスでプレイヤーは駒を動かしながら、相手を出し抜こうと戦略を立て、相手に勝とうとする姿勢が求められます。対戦中には、悔しさや焦り、勝ちたいという気持ちが生まれることも多いでしょう。このとき、「観察者としての自己」を意識するとは、自分の中で湧き起こる「競争心」や「悔しさ」「怒り」といった感情を、盤としての自分が静かに受け止め、ただ「今、自分はこう感じている」と眺めることです。

「駒」としての自分 vs. 「盤」としての自分

駒としての自分にとらわれると、感情に巻き込まれて勝敗に過剰に固執してしまいがちです。たとえば「勝たなければ自分は価値がない」「負けたら恥だ」と思い込んでしまうと、戦い自体に必要以上の重みを感じ、ストレスや失望感が募ります。

一方、チェス盤である自分を意識すると、勝負中に湧き上がる感情や悔しさも「今、こう感じている」という現象として俯瞰できます。たとえ負けたとしても、「今、悔しさを感じているな」と冷静に認識できるため、その場で湧いた感情に振り回されず、心の安定を保ちやすくなります。チェス盤としての自己は、感情の動きに動じず、ただ戦いの中で何が起きているかを「見守る存在」として機能するのです。

このように、「観察者としての自己」は、勝負や対戦における感情の動きにも冷静さをもたらし、感情に囚われずに行動できるようサポートしてくれます。

チェス盤の自分になるために

チェス盤としての自分を意識するために、以下の方法を試してみてください。

  • 瞑想やマインドフルネスの実践:静かな場所で目を閉じ、呼吸に集中します。浮かんでくる思考や感情をただ観察し、評価せずに受け入れます。

  • ACTのエクササイズ:思考や感情と自分を切り離す練習をします。ネガティブな考えが浮かんだとき、「これはただの考えだ」と認識します。

  • 日記を書く:一日の終わりに感じたことや考えたことを書き出し、自分の心の動きを客観的に見つめます。

おわりに

自分をチェス盤として捉えることで、心の中の駒(思考や感情)に振り回されず、より自由で充実した人生を送ることができます。ぜひ、今日からこの新しい視点を取り入れてみてください。


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