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ACT#1:日本人に合ったABAアプローチ: アクセプト&コミットメント・セラピー(ACT)

こんにちは。
今日は、私が新しく取り入れているセラピーのアプローチについて、皆さんにご紹介したいと思います。

私が専門としている「応用行動分析(ABA)」は、科学的な方法で人の行動を改善するセラピーです。最近では、日本の文化や価値観に合った形で、このABAに「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」という新しいアプローチを加える試みを行っています。

ABAは人のせいにしない!環境を変えて行動を改善する科学的アプローチ

ABA(応用行動分析)は、問題行動の原因をクライアントの性格や能力のせいにしません。「環境が原因」と捉えて、その環境を変えることで行動を改善していきます。私はこの考え方が大好きです。
自分や他人を責めることなく、環境を変えることで具体的な問題解決ができるので、イライラすることがぐっと減ります。常に解決策が見えることで、確かな成果も得られるんです。

ただABAは、アメリカ発祥の行動科学ですので、合理的で問題解決思考のアプローチである一方、日本のような情緒的なアプローチではないのです。

そのため一部の方にとっては、このようなアプローチが少し「冷たい」と感じられることもあるかもしれません。特に「人の感情を関与させない」という部分が馴染みにくいかも、と考えるようになりました。

アメリカとの比較:行動と感情が深く結びついている日本

現在アメリカに住んでおり、こちらの文化と比較すると、日本の文化では「行動と心」が深く結びついているな、と強く感じます。

日本人はみんな一生懸命

たとえば、日本では「一生懸命やれ!」という精神を大切にしますよね。学校教育でもスポーツでも職場でも「一生懸命努力する」ことが強く奨励されています。

私が中学校の教員の時を思い出しても、子供達は学校行事に本当に一生懸命取り組んでいました。ですから、体育祭や合唱コンクール、試合で負ければ泣きますし、卒業式でもみんな泣きました。
しかし私の子供達が通っていたアメリカの小中学校では、そのようなシーンは見たことがありませんでした。

日本では小さい頃からこの精神が至る所に行き渡っているので、例えばファーストフード店のアルバイトの方であっても、お店への忠誠心を持ち、お客さんへ丁寧に対応します。このようなことはアメリカでは期待できません。

このように、日本では行動が単に結果を示すだけでなく、感情や心の在り方を反映し、行動と心が密接に結びついていることが多いと感じています。

そして、行き着いたのが、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)というアプローチをABAに取り入れるという新しい試みです。

ACTとは?~感情を受け入れて行動する~

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、感情や思考に焦点を当てながら、心理的な柔軟性を高めることを目指す療法です。行動分析の理論をベースにしつつ、ACTでは感情や思考を無理に変えようとせず、それらを「受け入れる」ことからスタートします。そして「その感情とどう向き合い、どのように行動するか」に重点を置いています。

またACTは、アジアの思想と深く関わっている部分があり、その一環としてマインドフルネスが重要な要素となっています。葛藤や苦しみを避けるのではなく、それを受け入れることで柔軟な行動を促進するという発想が、東洋哲学や仏教、禅の思想に近い部分です。

ACTの科学的根拠と信頼性

ここで少しACTについて正式に紹介しておきます。ACTは、アメリカで正式に認められた心理療法であり、その効果は科学的に裏付けられています。精神科医や心理士によって医療保険適用の治療として提供されています。

例えばネットでよく見かける「引き寄せの法則」やアドラー心理学の一部を抜き出して「他人の期待に応えなくていい」「承認欲求を捨てよう」といった自己啓発的な「ポップ心理学」とは異なります。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、アメリカ心理学会(APA)の臨床心理学部門(Div 12)によって、うつ病、不安障害、慢性的な痛み、強迫性障害、精神病などの症状に対して中程度から強い有効性があると評価されています。ACTは、行動分析やリレーショナル・フレーム理論(RFT)といった科学的根拠に基づいて開発され、数百のランダム化比較試験(RCT)によってその効果が証明されています。

新しいシリーズの開始〜ACTとABAの融合を紹介していきます〜

今後、このブログでは、ACTについてシリーズで紹介していきます。ACTがどのように行動変容に役立つのか、また、実際にクライアントにどのように適用できるのかを、具体例を交えながらお伝えしていきたいと思います。

ACTを取り入れることで、クライアントが抱える感情や思考の負担を軽くしながら、価値ある行動を促進できるようになります。日本文化における「心」と「行動」のバランスを意識した、この新しいアプローチが、クライアントにとってより効果的な支援となることを期待しています。

このシリーズを通じて、私自身もACTの可能性を皆さんと共有しながら、日本人クライアントにより合ったABAの実践を探求していきたいと思っています。ぜひ、これからのシリーズを楽しみにしていてください!

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