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スクランブル
玄関先で
靴紐を結び終わり
腰を上げた瞬間の私に
彼女は話し始めた、
「走るっていいわね。春だし。気持ちがいいものね。何故か、今ね、思い出したの
私は走ってたわけではないんだけど
でも会津から郡山の開成山公園まで
友達と二人で
自転車で行ったのよ。もう50年前だから、
17才?
そんな時もあったのよ。
なんで自転車で
郡山まで行こうとしたのか
覚えてないけれど、朝早く出かけて
お昼前には公園に着いて、
大学生に声をかけられて、
友達はませてたからすぐ仲良くなって、
その後文通なんてしてたのよ。
懐かしい。もう50年前、なんで今
急に思い出したんだろう?あの人。そうあの人も確かはしるひとなのよね、見かけによらず」
一足先に玄関を後にした木山さんの後ろ姿を目で追う彼女に
「そうですね。人は見かけによらず。
走らなそうな人も走るんです。
見た目に惑わされてはいけません。」
と私は相槌を打つ
お世辞にも痩せているとも
アスリート体型とも言い難い木山さんは
先日約30キロ走ってきたのだ。
福島市内から山を超え、農村の地に。
ではまた。
私は
走り出す
記憶のトリガーは
不意に弾かれる
誰もが
誰しもが
バックパッカーのような大きな背中の荷物
を見て彼女は旅を連想し、
17才の自分に思いを馳せたのだろう
可能生しか感じないティーンのあの頃
可能性を消費し続けて走り続ける
今の私には眩しすぎる3月の陽射し
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