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韓国ドラマを見るための医学知識(3)~伝統医学で治せる病気、「第3病院」から~

韓国ドラマを見るための医学知識(1)」でも書きましたが、韓国ドラマの中では鍼灸治療で多くの病気や症状を治す場面が出てきます。

「鍼灸治療で何を治せるのか」「いつ鍼灸治療に行ったらよいのか」についてはなかなか理解が難しいと思います。

今回も(あと数日ですが)現在無料で公開されている「第3病院~恋のカルテ~」を題材に、「鍼灸治療はどのような病気や症状に対応できるのか」「またそれはどうしてなのか」について解説したいと思います。

*なおドラマでは、漢方薬についても取り上げられています。薬については医師、薬剤師が専門となりますので、本稿では取り上げません。

「第3病院」で取り上げられている病気や症状

ドラマの中では、脳神経外科、神経科という診療科を絞ったドラマでありながらも、神経系だけに限らない、広範囲にわたる症状や病気が取り上げられています。

下記に記載の症状や病気は「第3病院」のドラマで鍼灸治療が提供されたものです。頭から足、全身の症状まで多岐にわたる症状や病気が取り上げられています。

第3病院対応疾患

*中風=現在の「脳卒中」のこと。後遺症(まひ、運動器障害等)なども含まれます
*口眼か斜=現在の「顔面神経麻痺」のこと
*上記記載の病名は必ずしも正式な病名ではないものも含まれていますが、わかりやすくするためにドラマの中の字幕(翻訳)を採用しています。

伝統医学(鍼灸治療)が対応できる症状、疾患

伝統医学を勉強したり、鍼灸治療にかかったことがある方などは、「鍼灸、漢方が対応する範囲って広いよ」ということが分かるのですが、あまりなじみがない方は、「鍼灸治療の使い方」がよくわからないと思います。

わからない理由の一つは、「対応範囲が広い」からだと思います。

そもそも漢方や鍼灸、あんまマッサージは昔から受け継がれてきた医療で、患者の症状そのものに対応してきた経緯があります。そのため、特に診療科を標榜しなくても、「鍼灸治療にかかることが病院に行く」ことと同じだった時代があります。

ドラマの中で「がん」のことを「積があるから……」という伝統医学的単語を使ったセリフがあります。
現代の病もありますが、昔から現代の病に通じる似たような症状があり、それが古典文書にも記載されています。すべてを鵜呑みにして治療をするわけではありませんが、現代でも参考になるのは、現代でも見られる症状に対応して、治療が奏功していたためです。

なぜ様々な症状や病気に対応できるのか

検査機器やデータなしに様々な症状や病気に対応できることが「不思議」と感じるかたもいらっしゃるかもしれません。

伝統医学が広範囲の症状に対応できるのは、現代医学とは異なる「見方(診方)」をしているためです。

ドラマの中で、スンヒョン(漢方医)が患者の脈を見たり、舌を見たりする場面が多く登場しました。伝統医学では、この「脈」「舌」が重要な診断材料になります。
「脈診」「舌診」といい、脈を打つ状態、舌の状態がそれぞれどういった体の状態を表しているかを示していて、そこから、どのような治療をすればよいのかを導き出す重要な要素としています。

ドラマの中で「弁証してみなさい」というセリフがありましたが、伝統医学では脈だけでなく、患者さんの主訴や状態、症状の経緯、生活環境など様々な要素を勘案して「証」という形で診断をします。この「証」を基に治療を行うことから、様々な症状に対応が可能になります。

伝統医学で診断材料とする「脈」や「舌」は、現代医学のように「数値化」されたものではありません。脈は治療者の手の「感覚」で判断しますし、舌は見た目で判断します。それらが分かるようになるには熟練の技術や経験が必要とされます。

どうして感覚が分かるのか、と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。今でも、機械の動く音、(パン、そば、うどん等の)生地、料理など知識と経験を最大限に生かした仕事があります。伝統医学の診断方法もそれらに通じるところがあるかもしれません。


さて「第3病院」の最終話では、「鍼麻酔」が出てきました。この「鍼麻酔」本当に存在する技術になります。

「鍼麻酔」が非常に有名になったのは、1972年に当時の米国大統領ニクソンが訪中した際がきっかけと言われています。この時、鍼麻酔について米国のメディアが大きく報道したことで広まりました。

ドラマの中で出てきた「火鍼」も現在でもつかわれています。すべての疾患で、またすべての医師や鍼灸師が使う技術ではありませんが、有効な治療法として知られています。


参考:
「第48回  全 日本鍼灸学会学術大会 特別講演 NlHの 鍼灸の合意形成会議 とその後」、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/49/3/49_3_369/_pdf/-char/ja


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