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不眠症に対する鍼治療

原発性不眠症(PI)に対する鍼治療の有効性と安全性を評価するために行われたランダム化比較試験(RCT)についてのご紹介です。

参考:Efficacy and safety of acupuncture treatment on primary insomnia: a randomized controlled trial


1. はじめに

原発性不眠症は、日中の機能に悪影響を与える睡眠障害で、精神障害や他の疾患によるものではなく、世界中で増加しています。不眠症は集中力や免疫機能にも影響を与え、高血圧や脳卒中のリスクを高めます。薬物療法や心理療法が一般的ですが、これらには副作用や効果の限界があります。

鍼治療は、中国で古代から使用されており、副作用が少ないことが知られています。鍼治療がセロトニンやアミノ酪酸の分泌を促し、睡眠を改善するメカニズムが提案されていますが、過去の研究ではデザインや評価方法に限界があり、結論に至っていません。本研究では、適切な偽鍼治療を用いた質の高いRCTを実施し、鍼治療の有効性を確認することが目的です。

2. 方法

この試験は、18~65歳の原発性不眠症患者72名を対象に行われました。参加者は鍼治療群と偽鍼治療群にランダムに分けられ、治療は4週間にわたり行われました。評価には、不眠症重症度指数(ISI)やアクチグラフィーによる客観的な睡眠データが用いられました。睡眠効率(SE)、総睡眠時間(TST)、睡眠中の覚醒回数(SA)などの指標が追跡調査されました。

3. 結果

治療後、鍼治療群では以下の改善が見られました:

  • ISIスコア:不眠症の重症度が大幅に改善。

  • SE(睡眠効率):治療後および追跡調査中に改善。

  • TST(総睡眠時間):総睡眠時間が増加。

  • SA(睡眠中の覚醒回数):覚醒回数が減少。

一方で、偽鍼治療群ではこれらの改善は少なく、鍼治療が偽鍼治療よりも有効であることが確認されました。鍼治療は、不眠症だけでなく、うつ病や不安などの精神的健康も改善しました。

4. 考察

本研究では、鍼治療が原発性不眠症の患者に対して効果的であり、睡眠の質や精神的健康を改善することが確認されました。特に、睡眠効率や総睡眠時間が改善された点が注目されます。また、鍼治療のプラセボ効果を排除するために偽鍼治療を使用した結果、鍼治療の実際の効果が示されました。

鍼治療は、睡眠障害だけでなく、精神的健康にもポジティブな影響を与えるため、幅広い治療に応用できる可能性があります。

5. 結論

鍼治療は、原発性不眠症の患者に対して安全かつ効果的な治療法であり、睡眠の質と精神的健康を改善することができます。さらに大規模な研究でその長期的な効果を確認する必要がありますが、今回の結果は鍼治療が有効であることを示す強力な証拠です。

この記事では、鍼治療が不眠症治療における重要な選択肢であることが示唆されています。

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Yazawa@鍼灸師/よもぎ栽培
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