ブナ北限の里〜北の大地・黒松内に広がる鮮やかな森
この冬はいつになく気温差が激しく、まだ二月半ばというのに、東京では春一番が吹いたそうですね。
まだまだフワフワな雪を楽しみたい私ですが、気温が10度近くなる日があると、さすがに春を感じざるを得ません。
そんな訳で春を先取り!
いまかいまかと芽吹きを待っている、大好きな「ブナちゃん」のお話です。
私が無類のブナ好きになったのは、2008年の夏のこと。
東日本大震災の翌年、どうしても「今の東北」をこの目で見ておきたくて、青森、秋田、岩手を巡りました。
その道中、かねてから行ってみたいと思っていた「白神山地」へと足を伸ばし、日本海側から白神岳を登ることにしたのです。
登山口から歩き出すとすぐ、目の前に一本のブナの巨木が現れました。
灰白や灰青の樹皮に身をまとった幹に、苔の深い緑色が合わさり、見事なまでの風味を醸し出したその巨木は、木々の合間を天たかく貫いていました。
凛とした強さと包み込まれるような優しさに触れたこの瞬間は、私にとって生涯の宝ものです。
そんな巨木が点在した森は、太陽の光が動くたびに葉の色が変化し、森全体が変容します。そんな時間が、愛おしくそしてかけがえのない体験になり、私はブナになりました。
あっ、間違い。
私は大のブナ好きになりました(笑)。
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さて本題です。
ブナって本州にしか生息しないイメージですが、実は北海道に最北限があり「歌才ブナ林」として保護されています。
そこは札幌と函館のちょうど間に位置する「黒松内町」という、のどかな町。
大正時代に天然記念物調査委員として、その地を訪れていた林学博士・新島善直氏により、昭和3年「北限のブナ自生地」として国の天然記念物に指定されました。
「歌才ブナ林」には散策路があり、往復で約4km(90分)ほど。
ブナの原生林が広がり、樹高約30m、幹の太さが直径100cmを超える巨木が点在する、自然のままの姿が残された貴重な森を歩けます。
もうひとつお勧めしたいのは、「歌才ブナ林」の隣りにある「歌才森林公園」です。ちょっと分かりずらいのですが、公園内の散策路からそのままブナ林の方へ歩けるようになり繋がっているので、変化に富んだウォーキングコースになっています。
公園の中にブナセンター(地図の右真ん中)があるので、ここに車を停めて歩くのもあり。
情報もいろいろGETできます。
この写真たちは昨年5月初旬。
ちょうどシラネアオイが満開で、あちこちに綺麗なピンク色が広がっていました。
雪解けが始まる春は、カタクリやエゾエンゴサクなどが、あたり一面咲き乱れていることもあります。
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そんなブナちゃんたちですが、地球の気候変化とともに、前線は北へ行ったり南へ下がったりしているとか。
聞くところによると、最後の氷河期に寒さを避けて東北の南まで後退したそうです。それがおよそ6000年前に、津軽海峡を越えて北上し函館にやってきました。黒松内付近に到達したのは、約1000年前と考えられているとのこと。
計算によると、年間約20mの速さで渡島半島を北上してきたんですね。
ちなみに近年の温暖化で、生息域を北へあげているという情報もあります。
今後どうなるのか?が楽しみでもありますが、気候変動に敏感な動植物たちの対応にも敏感に過ごしていかねば、と思うのであります。
さて、もう少し季節が進んだら、今年もまたブナちゃんに会いに行こうと思います!!
ちなみに、黒松内温泉は最高に気持ち良いのでオススメです!