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相続土地国庫帰属制度の概要1(国庫帰属Vol.2)

 相続土地国庫帰属ニュースVol.2としまして、どのような土地を国に返せるのか、却下事由や不承認事由、承認申請手続の概要を解説します。


1 どんな土地を国に返せるの?

 宅地や田、畑、山林、原野、雑種地など、法律の要件さえクリアすれば国に返すことができます。

 利用価値がない土地は国が引きとらないと思っている方がいますが、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)には、そんなこと一言も書いていません。

 また、弁護士や司法書士などの専門家ですら、国庫帰属のハードルが高いと指摘される方がいますが、元法務局職員であった私としましては、これまでにない画期的な制度であるという印象でしたし、8割~9割は承認できるという感触でした。

 そもそも法律の目的が、所有者不明土地の発生を防止するためというものですし、国庫帰属法で「申請ができない土地」、「帰属の承認ができない土地」と規定された土地に該当しなければ、国庫帰属を承認されることになります。

2 申請できない土地

⑴ 建物が存在する土地
  建物は、管理費用が高額であり、老朽化すると管理費用がさらに増加しますし、最終的には取壊しが必要となりますから、建物がある土地は国庫帰属の申請ができないことになっています。
  民間取引でも、解体費用を求められる場合がありますから、必ずしも高いハードルとは言えないでしょう。

⑵ 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  抵当権などの担保権のほか、地上権、地役権、賃借権などが設定されていると、国の管理等に支障が生じたり、担保権の実行により所有権を失うことがありますから、承認申請ができない土地とされています。

⑶ 通路その他の他人による使用が予定されている土地が含まれる土地
  通路や墓地、境内地、水道用地、用悪水路、ため池など、現に第三者が使用している土地ですから、承認申請ができないのは当然と言わざるを得ません。

⑷ 土壌汚染対策法に規定された特定有害物質により汚染されている土地
  特定有害物質により汚染されている土地は、管理や処分に制限が生じ、汚染物質の除去に多大な費用が必要となりますか、承認申請ができない土地とされています。

⑸ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
  国庫帰属の対象となる土地の位置や境界が分からなかったり、隣地所有者と争いがあるような土地は、国が引きとることはできません。

3 帰属の承認ができない土地

⑴ 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  崖とは、勾配が30度以上あり、高さが5メートル以上のものをいいます。また、過分な費用や労力を要するとは、近隣に土砂が流出して被害を及ぼすなど、擁壁工事等を施工する必要がある場合などが想定されています。

⑵ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木が地上に存する土地
  森林の樹木、宅地の柵など、その土地の形状や性質によっては、有体物が存在したとしても通常の管理又は処分を阻害しないと判断される場合もあります。

⑶ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  有体物とは、屋根瓦などの建築資材(ガラ)、コンクリート基礎、浄化槽、井戸などが該当しますが、除去の必要性は、土地の形状や性質に照らして、通常の管理や処分に支障がないかを判断します。

⑷ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 ・ 民法上の通行権利が妨げられている土地
 ・ 所有権に基づく使用又は収益が妨害されている土地

⑸ 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
 ・ 災害の危険性があり、被害を防止する措置が必要な土地
 ・ 国庫に帰属した後も、国が管理する費用以外の金銭債務を法令に基づき負担する必要がある土地

4 承認申請の手続

 ご自身で申請書類を作成するほか、弁護士、司法書士、行政書士に作成を依頼することができます。

【編集後記】

 次回は、「相続土地国庫帰属制度の概要2」としまして、承認申請おける負担金の算定や費用対効果のシミュレーションをご紹介します。

 ところで、先週は、北海道の土地の承認申請書の作成を完了させ、一昨日は福岡県内の3,000平方メートルの土地の境界確認が終了し、山場を乗り越えた感じです。
 いずれ処理事例やエピソードもご紹介できればと思っています。

 本日もご覧いただき、ありがとうございました。


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