【私のピアノ練習スタイル】時間差スタートのマラソン的多数曲並行練習
「譜読みが遅かったりなかなか弾けない自分」にくじけないために私がやってる練習法
私は子供の頃には習っておらず大好きなクラシックの楽曲を弾きたい一心で40代からピアノを習い始めました。2022年10月現在、習い始めて丸6年とちょっと。
2022年は、ピアノを始める前から大好きだったラヴェルのソナチネなど、かつては夢・憧れと思っていた楽曲を仕上げレベルまで弾けるようになってきました。初心者からピアノを始めた割には、上達のスピードとしたらごく普通よりは結構速いと思います。
今回は、私なりの「譜読みのツラさや弾けない自分にくじけないで充実楽しくピアノに向き合える」いっぺんに何曲も同時並行で練習を進める練習スタイルについて書きたいと思います。
人それぞれ向き不向き・合う合わない・練習環境の違いがありますので、もちろん私の練習スタイルも万人向けではないとは思います。ましてや当の本人である私自身が現在進行形で新しい情報をインプットしつつ、自分を実験材料にして練習の仕方を日々常に改良しており、現在の練習スタイルでさえも確立固定された方法ではありません。
とはいえ、いろいろな試行錯誤の結果として、私自身 日々続けている独自の練習方法から上達の手応えを感じています。
「大人からピアノを始めるのでは上手になれないのではないか」と思っている方も多いかもしれません。しかし、40代中盤から先生について習い始めた私でも、始めたころよりは確実に上手になれていると思います。何歳になっても学びは実になって返ってくるものなんですね。
もしかするとこれからピアノを始めたいと思って踏み出せずにいる大人の方や、ピアノを始めてみたもののなんだか行き詰まりを感じている方に、私の練習スタイルやピアノとの付き合い方から、なにか勇気や新しい考え方を提供できるかもしれないと思い、私なりのピアノ練習についての情報を発信しています。
なにかしらの刺激や参考になれば幸いです😊
過去記事で、大人からのピアノは残された時間が少ないので、コツコツと基礎から積み上げるのではなく、難易度的に背伸びであってもダイレクトに自分の好きな曲・弾きたい曲にチャレンジする私の選曲法について書きました。こちらの記事もぜひご参照ください。
↑記事で紹介した「憧れの曲にダイレクトに挑む」選曲だと、現在の自身の実力よりも格上の難しい曲も手がける場面も多くなります。そういった格上曲は譜読みもタイヘンだったりしますし、難しい箇所の習得にも時間がかかりますよね。
でも、タイヘンではあるのですが好きな曲・憧れの曲であればこそ、あまり面白くない練習曲集よりも確実に頑張ることができます。
とはいってもピアノの楽譜に用いられる大譜表(2段、時には3〜4段の楽譜)の譜読みは、私のような中年ピアノ初心者など、子供の頃から楽譜を読むことに慣れ親しんでこなかった者にとってはかなりの難関です。
ピアノ練習のツラさの大きなものに「なかなか思うように進まない譜読みの苦痛」「なかなか弾けるようにならない自分へのもどかしさ」が挙げられると思います。
私も経験上、一向に弾けるようにならない曲だけにずっと向き合っていると、だんだん「自分にはこんなに難しい曲弾けるハズがない」とか「一生弾けそうもない曲に向き合うなんで不毛な時間の浪費だ」とかネガティブな思考のループに陥りやすかったです。過去そんな思いをイヤというほど体験してきました。
いったんネガティブ思考のループに陥り始めると、モチベーションが低下したり、自分の能力を卑下したり、この際ピアノ自体やめてしまおうと考え始めたりして、練習のブレーキになってしまいます。全くいいことありませんね。
そこでモチベーションの上がる憧れの曲(たいてい大曲や難曲😅)にチャレンジしつつ、弾けない自分にヘコまないために、私は「現状弾けるようになりつつある曲と、まだ弾けるようにならない曲や譜読み中の曲を織り交ぜ、進度バラバラで、できるかぎりたくさんの曲を同時並行で練習を進める」練習方法を取っています。
なかなか弾けるようにならない曲があっても、ほぼほぼ弾けてる曲も同時に練習しているので「弾けない自分」をそんなに感じなくて済むため、モチベーションが下がりません。
また各曲の仕上がり時がズレるので、何曲も手掛けつつ1曲仕上がったたら新曲譜読みを1つ追加という風にしていくと、時差スタート式のマラソンのように、進度の異なる選手が間を開けて次々にゴールしていく(各曲が仕上がっていく)感じで常に譜読みも仕上げもしている状態になり、いっぺんに多様な練習ができます。
「何曲も練習したらさらに集中度を欠いてどれも仕上がらないんじゃないの?」と思う方も多いかもしれませんね。ですが意外とそんなことはなく、私の場合はこの練習スタイルに慣れることで、次々に曲が仕上がるようになり、気分良くモチベーションがどんどん上がる好循環回路に入ることができました。
以下、私の「多数曲並行式練習法」についてもう少し詳しく書いていきますね。
多数曲並行練習のメリット① 譜読みの苦痛だけでなく弾ける・仕上がる楽しさも同時に味わえる
私が思うに、大人のピアノで多くの方が苦通に感じるのは「譜読みが進まない」「なかなか曲が仕上がらない」「技術的に弾けない」自分に向き合うことではないでしょうか。
たぶん、「譜読みが進んでいる」「どんどん弾けるようになっている」と思えれば、練習量が多くなることはさほど苦痛ではないんですよね。苦痛の正体は「○○できない自分」を知ってしまうことなのだと思います。
なので、ピアノの練習でも「譜読みが進んでいて」「曲が仕上がって」「自分比で以前より弾けるようになってきている」と思えれば、孤独なピアノ練習の苦行感も相当軽減されるんですよね。
現在の私は1日の練習時間が平均して2〜3時間程度ですが、同時に10曲以上の曲を毎日練習しています。これらの曲は「仕上げ段階の曲」「絶賛弾き込み練習中の曲」「譜読み・導入練習中の曲」がバランスよく配分されるようにしています。
しかも、全部の曲を毎日ガッツリ練習するというのではなく、譜読み中の曲であれば1日1区切りとか、弾き込み中の曲であれば1日1回は通すとか苦手箇所の部分練習を集中的に10分くらいやるとか、仕上げ曲ならば暗譜と表現確認の超ゆっくり通しを1日1回以上はするとか、それぞれの曲の進度や苦手具合によってさまざまなアプローチで練習します。
なので、1曲あたりにかける1日あたりの時間は10分以下とか短い場合も多いにありえますが、毎日少しでも全ての曲に触れるようにしています。
10曲以上同時並行という私の例は極端かもしれませんが、譜読み・弾き込み・仕上げの各段階ごとに2曲くらいずつ手がけるのは、毎日1時間くらいは練習できる人であれば、意外とすんなりできちゃったりします。しかも筋トレと同じような感じでだんだんメニューを増やしていっても負荷に耐えられるようになりますよ😅
↑のインスタ投稿のように、2022年10月中旬は、まだヨタヨタのラフマニノフやドビュッシーを弾き込み練習しつつ、バッハのトッカータやスクリャービンのエチュードの譜読みを少しずつ進めています。そのようにしていくとラフマニノフとドビュッシーが仕上げに入ったときにはバッハとスクリャービンがスムーズに弾き込み段階に入れます。
このように曲を仕上げる前に次の曲に着手することによって、新曲譜読みがちょっとキツくなってきたら譜読みが終わっている曲を弾いて気晴らししたり、仕上げ中の曲を弾いて「こんな難曲も弾けるようになったんだから次の曲もできるハズ」と自信を深めたりと、飽きずにポジティブな気分で練習を続けることができます。
あと譜読みは思考的側面、弾き込み練習は運動的側面、仕上げ段階では表現力とか精神力・正確性など総合パフォーマンス的側面が強いというように、進度フェイズごとに脳・身体の使い方にも違いがありますよね。
各フェイズの曲を同時に手がけることで、常にさまざまな脳や身体の使い方の鍛錬ができるので、練習の効率が上がります。
また、大曲・難曲を1曲集中で手がけている場合、それが仕上がった後、新曲をまた譜読みから始めるのは、またゼロからタイヘンな作業のスタートという感じがして、私的には進度落差が大きくてキツく感じます。
何曲も同時に練習していると、一曲仕上がった頃には、他のどれかしらの曲が仕上げに近い段階まで進んでいるので、間髪入れずに次の曲の仕上げに入れます。「マラソン選手が時間差で次々にゴールしてくるように」次々に曲が仕上がっていくイメージですね。
多数曲並行練習のメリット② 大曲・難曲を長期間かけてじっくり取り組んでても苦痛にならない
1つの曲を1年以上レッスンに乗せていたりすると、「いつになったら弾けるようになるんだろ?」的な自分への疑念が結構湧いたりするものですが、たくさんの曲を同時に手がけていると、長期戦で取り組んでいる曲があっても他の曲は仕上がっていくので、あまり停滞感を感じずに前向きに日々の練習に取り組めます。
現在、仕上げ段階に入っているラヴェルのソナチネ全3楽章は、トータルで見ると練習開始から1年半くらい経っていて、結構長い期間取り組んでいますが、上の投稿にあるように、2021年はラヴェルと並行して、プロコフィエフ「サルカズム」、ドビュッシー「グラナダの夕べ」、スクリャービン「エチュード op.2-1」、ショパン「エチュード op.10-12 革命」などを仕上げてきたので、ラヴェルのソナチネ長期戦で気分的に疲弊するということは全くありませんでした。むしろ難しい曲をたくさん手がけていくつかを仕上げた充実感があるというか。
難しい曲や規模が大きい曲は時間がかかるのも当然なので、そういった曲は気長に取り組みつつ、かといってそれだけに向き合うのではなく、より早く仕上がりそうな曲も組み合わせて練習すると「1年で1曲も仕上がらなかった」という、ちょっと悲しい思いをしなくて済みますね😊
多数曲並行練習のメリット③ いろんな技術を同時多発的に学べる
楽曲によって「重音のレガートを多用する曲」「早いパッセージが続く曲」「多声部を歌い分ける曲」など、主要に使う技術が異なりますし、バロックや近現代など作曲時代や作曲が異なれば楽曲の演奏の仕方も異なってきますよね。
↑のラフマニノフ 楽興の時 第3番などは、ラヴェルのソナチネ1&3楽章とは対照的に、ゆっくりだけど重厚な和音を鳴らして歌い上げるような曲ですよね。
いろんな時代、いろんな技術を使う多様な曲を同時に手がけることで、多様な演奏技術や表現法を同時に習得することができます。
以前習っていた英才教育のピアノ教室でも、小学生の生徒に時代や難易度の異なる曲を同時10 曲以上を常に手掛けさせていました。
その先生は「言語習得といっしょで、とにかくいろんな作曲家やいろんな時代の語法にたくさん触れるのが大事」とおっしゃっていました。ややエキセントリックな発言も見られる先生だったので、私も最初は10曲以上も同時に手がけるのはいくらなんでも無理でしょうと思ったのですが、やってみたら意外とすんなりできました。なんでも試してみるもんですね😅
多数曲並行練習のメリット④ 譜読みが激オソでもとりあえずは練習・レッスン楽曲に事欠かない
実は私は譜読みが超絶激オソなのですが😅、たくさんの楽曲を手がけていると、導入曲の譜読みが少ししか進まなくても、弾き込み中の曲がいっぱいあるので、来週レッスンに持っていく曲がないとか、突然 弾き合い会のお誘いをいただいても弾ける曲がないとかいう問題が発生しにくいです。
今週譜読みを開始したばかりの↑スクリャービン エチュードop.11-11は、両手が重なるポジションで和音の中に多声的なメロディを浮かび上がらせていく曲です。
私にとってこのテの曲は、大好きだけど弾くのはとても苦手と感じるタイプの楽曲です。3ページの短い曲ですが、これはなにげに長期戦を予想しています。
この曲は、いまのところ最初の8小節だけに集中して、この曲特有の、いろんな歌が重層的な和音の中から浮かび上がるような表現をできるように練習しています。
この曲だけをレッスン曲にして先生に「来週には持ってきてね」とか言われると焦っちゃいますが、たくさんの曲を手がけていると、苦手な曲は特別枠でじっくり進めて、ある程度進むまでの間は他に進めている曲で十分間を持たせられますよね。
迫り来るレッスンや発表の予定に追われるように譜読みをしていると、社会人の趣味ピアノ的には結構負荷も大きいし精神的にまいってしまうこともあるので、いつでもレッスンや弾き合い会に出せる曲があるようにしておくのは安心材料としてもいいと思います。
多数曲並行式練習法のコツ① いろんなタイプの曲を組み込む
というわけで、私的には多数の曲を同時に練習するスタイルは、早期上達の面で有効性が高いなと思っているのですが、ここでも曲選びにコツがありまして、「ショパンばかり」とか「ソナタ系大曲ばかり」にならないように、いろんな作曲家やいろんな時代、大曲や小品といった風にいろんな曲を同時練習ラインナップに組み込むのがよいです。
たとえばどんなにショパン大好きだったとしても、次から次へとショパンばかりだとやはりちょっと飽きや疲れがくるし同じ作曲家の作品はどうしても似た傾向の曲になりやすいので量をこなしても多様な技術や表現の練習になりにくいのですね。
いろんな曲がある方が飽きるヒマもなくいろんな負荷がかかる練習できて均整がとれると思います。
多数曲並行式練習法のコツ② 難易度や進度フェイズも多様に
曲の難易度も、自分にとって技術的にそれほど難しくない曲、自分の技術レベルにちょうど合ってるくらいの曲、自分のレベルより格上の難曲という風にいろんな難度の曲でメニュー構成すると、負荷が重くなり過ぎず、難しくない曲は深堀りして完成度も上げられるし比較的短期間で仕上がるので、難曲に対峙し続けるだけの練習スタイルより気分よく練習を続けられます。
あと同時並行メニューの中に「譜読み中の曲」「絶賛弾き込み中の曲」「仕上げ段階の曲」もバランスよく入るようにするとよいです。
譜読みばかりでも脳が疲れますし、仕上げ曲がたくさんあるとそれはそれで負荷が重くキツいです。
いろんな進み具合の曲を混在させることで、ベルトコンベア式に順次曲が仕上がっていくようになりますよ。
ちなみにこの記事を書いている2022年10月16日の私の練習楽曲メニューです。
【譜読み中】
J.S. バッハ トッカータ BWV914
リスト パガニーニ大練習曲 第5番「狩り」(以前挫折した曲。イチからやり直し)
スクリャービン エチュード op.11-11
ドビュッシー ピアノのために トッカータ
【弾き込み中】
J.S. バッハ 平均律クラヴィーア曲集1巻6番 BWV951(プレリュード、フーガ)
ドビュッシー ピアノのために プレリュード、サラバンド
ラフマニノフ 楽興の時 op.16-4
【仕上げ段階】
J.S. バッハ 平均律クラヴィーア曲集1巻2番 BWV947(プレリュード、フーガ)
ラヴェル ソナチネ 全3楽章
ラフマニノフ 楽興の時 op.16-3
(全15曲・楽章)
大人になってからピアノを習得するのは難しいと思って始める以前に諦めてしまう方も多いと思います。しかし私自身、苦労も努力も紆余曲折も思考錯誤もしましたが、なんとかここまで弾けるようになりました。
もしかするとこれからピアノを始めたいと思って踏み出せずにいる大人の方や、ピアノを始めてみたもののなんだか行き詰まりを感じている方に、私の練習スタイルやピアノとの付き合い方から、なにか勇気や新しい考え方を提供できるかもしれないので、引き続き私なりのピアノ練習についての情報を発信していきますね😊
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