幸せなアナログレコードとの再会(聴きました編4) 『モーツァルト:「セレナータ・ノットゥルナ」「レ・プティ・リアン」「3つのドイツ舞曲」「5つのコルトラダンス『もう飛ぶまいぞ』」』
一度は売却して「ゼロ枚」になったアナログレコード。でも、また欲しくなって取り急ぎ30枚ほど中古で購入。聴くと楽しかったりほろ苦かったり。レコードの一枚一枚は、青春の一コマ一コマだったんですね。新しい発見もあるでしょうか。そんな再会のお話、よかったらどうぞ。
アーティスト
ウィリー・ボスコフスキー指揮
ウィーン・モーツァルト合奏団
「レ・プティ・リアン」=ちっぽけな、とるに足りぬもの?
はい、レ・プティ・リアンとは「ちっぽけな、とるに足りぬもの」という意味。モーツァルトがパリで劇のために作りました。
どうですか!、この可愛らしさ。
いちばんポピュラーな第10曲「パントマイム」をお聴きください。
モーツァルトも当時セーヌの河畔で一息ついたでしょうか。
全曲版はこちら。ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・モーツァルト合奏団の演奏です。動画のジャケットは全集版のボックスのようです。
……作曲は1778年(モーツァルト22歳)、モーツァルトが3度目に訪れたパリにおいて、オペラ座の舞踊家ジャン・ジョルジェ・ノヴェールの依頼で作曲された。……
……初演は同年6月11日に行なわれ、最初の評判はあまり良くなかったらしいが、モーツァルトが父親の宛てた7月9日付の手紙には既にこれが4回上演されて大きな賞賛を受けたことが記されている。――レコード解説より
セレナード、ディヴェルティメント、舞曲、マーチの聴きどころ
これらの音楽は大半、依頼者があってそれぞれの目的のために作曲されました。それは多くは祝祭の場面で演奏されるものとして作られ、構造はシンプルで軽みのある音楽です。
モーツァルトの音楽は聴きやすいものといわれます。でもさすがに晩年の作品の中には聴く時に気合が必要な曲もあります。
その点これらの音楽は、いつでも肩ひじ張らなくて聴ける。繰り返し聴ける。遊び心が満載で軽いが故にモーツァルトの本質と触れ合える。このジャンルを私が好む理由がそこにあります。
セレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」
まるでティンパニー協奏曲、大活躍で祝祭気分満点の楽しさと爽やかさ。寺神戸亮さんの指揮兼コンマスで遊び心満載の楽しい演奏です。
……セレナードは主として野外で行われる夕べの娯楽音楽であったところから、おそらく庭園のスペースを巧みに使った楽器の立体的な配置や、高らかに響くティンパニの音が爽快な気分を作り出したことであろう。モーツァルトの13曲あるセレナードの中では規模こそ小さいが、伸びやかで親しみ易い曲になっている。――レコード解説より
3つのドイツ舞曲~そり遊び
3つのうち第3番「そり遊び」が有名ですね。鈴の音がかわいい、らっぱの音が懐かしい。モーツァルトの最後の年1791年2月12日35歳のときの作品。
モーツァルトの晩年には数多くの舞踏曲を手掛けているが、これらは主にウィーンの宮廷作曲家としてカーニバルの仮装舞踏会のために作曲された。その中でかなりの数を占めるドイツ舞曲はレントラーとともにのちのワルツの前身を成す3拍子の舞曲である。――レコードの解説より
観賞用の音楽ではなく、実際に仮面舞踏会で踊るためのリズムのとりやすい実用音楽ですね。でもモーツァルトは手抜きなどしていません。楽しさ充溢です。
5つのコントルダンス「もう飛ぶまいぞ」
マリンバとアコーデオンの珍しい編曲版が見当たりました。これも1791年、上の作品の少し後の作曲と見られます。
コントルダンスはもともとイギリスに生まれ、それがフランスやドイツに伝わってモーツァルトのころには大いに流行した、速い2拍子の舞曲である。――レコードの解説より
第1曲はオペラ『フィガロの結婚』の「もう飛ぶまいぞこの蝶々」の旋律です。伯爵夫人に横恋慕した小姓のケルビーノの軍隊行きをフィガロが揶揄して歌う有名なアリアですね。
ウィリー・ボスコフスキー
ご存じウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の往年の人気コンサートマスターであり、フィルの精鋭を集めた複数の演奏団体を主催しました。「ニューイヤーコンサート」は今では外部指揮者が棒を振っていますが、当時はボスコフスキーが指揮者を兼ねていました。
セレナード、ディヴェルティメント、ダンスや行進曲の全集録音もあり、分売されたレコードを私も何枚か所有していました。
これぞウィーン。ウィーンの音楽と街の雰囲気をこんなに身近に感じさせてくれる人は他にいません。素敵なレコードを残していただき感謝!しかありません。
かわいいジャケットの写真
おとぎの国のような写真は、ザルツブルク郊外の街「ザンクト・ギルゲン」の市庁舎とその前でヴァイオリンを弾く少年モーツァルト像と噴水です。
モーツァルトの母、マリアの生誕地で姉のナンネルがの嫁ぎ先がザンクト・ギルゲンです。
湖畔の小さな美しい街。この地を訪れ、歩き、泊まり、音楽を聴いたことを今も懐かしく思い出します。何十年も前のことですけれど……。
このレコードの顔としてピッタリふさわしいと思います。
レコード番号
LONDON K15C 7065
発売元 キングレコード
録音年月/場所
不 詳 1960年代後半か
演奏時間
第1面
バレエ音楽「レ・プティ・リアン」K.299b
序曲 3:25
第1曲ラルゴ
第2曲ヴィーヴォ
第3曲アンダンティーノ
第4曲アレグロ
第5曲ラルゲット
第6曲ガヴォット 6:15
第7曲アダージョ
第8曲(ジーグ風)
第9曲ガヴォット
第10曲パントマイム
第11曲パスピエ 6:20
第12曲ガヴォット
第13曲アンダンテ 4:40
第2面
セレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」ニ長調、K.239
マーチ 4:12
メヌエット 3:47
ロンド 4:23
3つのドイツ舞曲、K.605 6:35
5つのコントルダンス「もう飛ぶまいぞ」、K.609 6:15
※サファリサファリ さんの画像をお借りしました。