幸せなアナログレコードとの再会(聴きました編2) 『モーツァルトピアノ協奏曲第20番、第24番』
一度は売却して「ゼロ枚」になったアナログレコード。でも、また欲しくなって取り急ぎ30枚ほど中古で購入。聴くと楽しかったりほろ苦かったり。レコードの一枚一枚は、青春の一コマ一コマだったんですね。新しい発見もあるでしょうか。そんな再会のお話、よかったらどうぞ。
アーティスト
クララ・ハスキル(ピアノ)
イーゴリ・マルケヴィッチ指揮 コンセールラムルー管弦楽団
演奏と録音のリアル
参りました。みずみずしい、情熱がほとばしるような素晴らしい演奏と録音のリアル。以前のシステムで聴いていた時はこれほどには感じていませんでした。
盤の違い?オーディオシステムの違い?従来の聴き方が悪かった?理由が分からないのですが……いや、聴き始めたころの感動を、忘れていただけかもしれません。
静寂から浮かび上がるピアノソロの繊細なタッチ。輪郭のはっきりした斬り込むようなパッセージ。
トゥッティでは、オーケストラの弦・管・打それぞれのパートの音色も鮮やかにピアノと見事に響き合う。
音源と画像はCDのものと思われます。レコードのジャケットはこの写真と似たものが使用されていて同じ雰囲気です。ここでは第20番のみとなります。
第2楽章は 13’29”、第3楽章は 23'03"からです。
突然の事故
このレコード、実はハスキルが亡くなるほんの少し前の録音です。ブリュッセル駅で転落した際の怪我がもとで急死しました。
怪我さえしなければ、もっと長く生きて演奏や録音を我々は楽しめたはずで惜しいです。
友人のチャップリンは彼女を悼んでこう述べたそうです。
クララ・ハスキル
幼いころから虚弱体質で病気がち。社交が得意でなく上がり症、よく克服したものです。
イーゴリ・マルケヴィッチ
短調の二つのピアノ協奏曲
第20番がニ短調、第24番がハ短調。モーツァルトのピアノ協奏曲27曲中この2曲だけが短調です。一般に20番の方が有名で人気曲です。
私の場合も、FM放送などでエアチェックしながら聴いていくうちに、モーツァルトのピアノ協奏曲に魅了された経験が第20番から始まります。この後27番→21番→23番→22番と幸せな出会いが続いていきます。もちろん、24番、25番、26番も好きです。
短調の曲が特別好きというわけでもありません。転調の名手モーツァルト。長調の曲に短調の旋律が顔を覗かせる、その逆も。陽と陰が綾を成して私たちの心を絡め取るモーツァルトの美しい音楽がここにもあります。
第20番ニ短調K.466
1785年2月10日29歳の作曲。当時の常識にはない暗く劇的な曲調です。それゆえかベートーベンはこの曲を愛奏して、カデンツァも作曲しています。
短調の曲とはいえ、第2楽章の変ロ長調ロマンツェは美しい曲で大好きです。妻のコンスタンツェとモーツアルトがむつまじく語り合うかのようだと表現した人がいて、納得した記憶があります。
第24番ハ短調K.491
1786年3月24日30歳の作曲。20番や次に買った27番のレコードにずっと引き寄せられていたので当初あまり好んでは聴いていませんでした。
しかし、この曲についてピアニストの内田光子さんが「ピアノとオーケストラが室内楽的に語り合う親密さが素敵な曲だ」という意味の表現をされたことを聞いて、改めてこの曲を聴き直して以来私の印象が変わりました。
特に第2楽章ラルゲット変ホ長調は、とても美しい曲でこれも大好きです。
第2楽章は 13’14”、第3楽章は 20'32"からです。
このレコードを最初に買ったのは?
FM放送でエアチェックをした中から選んで、最初に買ったピアノ協奏曲のレコードがこれでした。50年ほど前に多分京都は四条烏丸の「十字屋」(現JEUGIYA)で買いました。このレコードを始まりとして次々にピアノ協奏曲の豊穣な世界へいざなわれて幸せな出会いが続いていきます。
買った後、鴨川の河川敷をルンルン・スキップで帰りました、とはならかったと思います。レコードを家に持ち帰ってすぐに聴きたかったと思いますので(笑)。
データ
レコード番号
PHILIPS X-5556
フィリップス・ベスト40選
発売元:日本フォノグラム株式会社
録音年月/場所
1960年11月/パリ
演奏時間
第1面 第20番 13’22” 9’27” 7’00”
第2面 第24番 13’03” 7’08” 8’50”
※青柳唯(あおやなぎゆい) さんの画像をお借りしました。