夏目漱石「幻影の盾」
「幻影」の読みは「げんえい」ではなく「まぼろし」。
読んだと言っていいのか。途中途中飛ばしながら読んだ。
馬琴の「南総里見八犬伝」が苦手だとどっかの学者さんが言っていたが、「幻影の盾」も同じ傾向がある。すなわち、文章がくどい。形容詞が多すぎて、かえってイメージが伝わらない。
「幻影の盾」というのは、持ち主の望みを映す。ウィリアムという騎士はその盾に自分の望んだ―クララという娘とイタリアで暮らすという―幻想を見る。
それが幸福なのか、不幸なのかについて漱石は書いていない。彼は現実にはクララを失った―彼女は敵の城で死んでしまった(だよね?)のだから。とかく両義的な作品である。