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三島由紀夫初期作品感想

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三島由紀夫の主に初期作品の感想です。 ここで扱えていない「酸模」「苧莵と瑪耶」「軽皇子と衣通姫」「岬にての物語」なども優れた短編です。 すべて新潮文庫で読めます、よければぜひ読ん…
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記事一覧

三島由紀夫「黒島の王の物語の一場面」

なんとも奇妙なタイトルである。 元は千夜一夜物語の一幕。 「年若きタルムウド王」は「従妹…

三島由紀夫「花ざかりの森」

三島由紀夫「花ざかりの森」についての情報。刊行は昭和19(1944)年。10月だから、意外と秋に…

三島由紀夫「殉教」

美しい短編だ、どうしようもなく。 発表年は1948年。三島23歳の作品。寄宿舎の少年たちの物語…

三島由紀夫著「頭文字」

※性的な話を多く含みます。 変態小説だった……、谷崎潤一郎をしのぐ勢いの。 三島がこんな…

三島由紀夫『微妙な』短編感想

「みのもの月」三島由紀夫19歳の作品。男と女の別れ話だが、とても成功した作品とは呼べない。…

三島由紀夫「世々に残さん」

三島由紀夫「世々に残さん」。昭和十八年―一九四三年、三島由紀夫十八歳の作品。 三島本人の…

三島由紀夫「朝倉」ほか

昭和十九年―一九四四年、三島由紀夫十九歳の作品。 解説から引くと「平安後期の散佚物語「朝倉」を藍本(注:原典)としたもの。」 さて、散佚物語と聞くとついついロマンを感じてしまう。ロマン結構結構。 だが実際は物語に目新しさや個性が少なく単に自然淘汰された作が少なくないとか。  この「朝倉」も同様。朝倉君と中将の悲恋物語だが、この物語特有の個性は感じられず、三島の作品としても強い魅力は見当たらない。 ではなぜ紹介したか。最後に入水した朝倉君の描写を引用したかったのだ。 三島

三島由紀夫「曼陀羅物語」他一篇

曼陀羅物語 主に真言宗で用いられる、様々な仏たちの図であり、ユングに集合的無意識を気づ…

三島由紀夫「檜扇」

雑談 突然他作家への他作家の話から始めて申し訳ないが、中上健次という作家が谷崎潤一郎を評…

三島由紀夫「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」ほか一篇

前書き 戦前の三島の作品は読むのが難しい。結局は筆者の読みたい方向に寄せているだけに思…

三島由紀夫「婦徳」

婦徳あらすじ。 ①佐伯と顕子は今夜、不義の恋を果たそうとしている。だが顕子は「私に操を破…

三島由紀夫「接吻」「伝説」

当記事で扱う作品は「接吻」「伝説」の二篇。三島の柔らかな部分が特によく出た作品群である。…

三島由紀夫「白鳥」

本作に本物のハクチョウは出てこない。これは「N乗馬倶楽部」の「純白の馬」の名前なのだ。 邦…

三島由紀夫「哲学」

前半部 宮川という男はひどい「無感動」、洒落て言えば「ニル・アドミラリ」の体現者であり、哲学だけに打ち込む「勤勉な学生」である。 そんな彼の「心胆をはじめて寒からしめ」たのは、「胸の高さぐらゐある屋上の囲ひの上へ(略)とび上つて、幅一二尺(※30〜60cm)のところを両手を鳶のやうにひろげて平衡をとりながら渡りはじめた」「命しらずな女学生」の姿だった。 後日彼は女学生に直々、「(略)あの危い真似を明日から止めてくれませんか。(略)」と申し出、それは聞き入れられる。 後半部