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ジョリーフォニックスのおはなし 2 〜文字の形を学ぶ〜
前回の記事はこちら
ジョリーフォニックスでは、文字を書く時、子どもの鉛筆の持ち方にも注意を払います。というのも、ジョリーフォニックスが生まれた英国では、学校現場で文字指導の中で鉛筆の持ち方の指導も行われているためです。これは日本の書写の授業と同じです。
まずは正しい鉛筆の持ち方
正しい文字の形(ここでいう正しいとは「誰が見ても判別できる文字の形」)を書くために、また、たくさん書いても疲れないためには、鉛筆を正しく持つことが大切だとされています。これは日本でも同じですよね。
鉛筆の握り方は、左利きでも右利きでも同じです。鉛筆の正しい持ち方は、トンボ鉛筆、日本筆記具工業会、北星鉛筆など、様々なサイトでも紹介されています。最初に間違った持ち方をしてしまうと、後から修正するのはとても大変です。
長年、字を書いてきた大人でもユニークな持ち方をしている人を多く見かけます。ということは、正しい持ち方は経験では身につかない、つまり、指導しないと正しく持てるようにはならない、ということです。
アルファベット独特の筆運び
鉛筆の持ち方と同じくらい、最初の段階で注意を払うのは、運筆=鉛筆の筆運びです。英語のアルファベットは、本来は書き順はありません。しかし、文字は自分だけではなく、他の人が見てもわかる形で書かなくてはなりません。そのためには、それぞれの文字を正しく形作る必要があります。
動画を見るとわかりますが、文字の形を説明しながら空中で手や指を使ってその文字の形を導入します。筆記具で書く前に体を使ってその文字の形を練習します。
ちなみに、英語のアルファベットの運筆は、日本語のひらがな、カタカナ、漢字にはない筆運びがあります。例えば h や n , m のような文字は、一度下に向かって書いた線上をそのまま戻って次の山へ向かいます。c , e , a , o などは反時計回りにきれいな円を書くように鉛筆を動かします。v , w はジグザグ、といったようなものです。 日本の子どもの場合は、特にそのような運筆を練習できるといいと思います。
また、アルファベットの形はできるだけ一筆書きで指導します。例えば、b を指導する時、縦の棒を書いてそのまま鉛筆を紙から離さずに縦の線を戻って、そのまま右側に円を書くように鉛筆を動かします。一つの連続した動作で文字を書くことが、文字の形を覚えることに役に立つと考えられています。
口で言いながら、耳で聞いて、そして手で書く
私は文字の形を指導する時、音を口で言いながら書く練習をします。これは、フォニックスの指導の中では、文字の音と形を結びつける必要があるからです。アルファベットの文字の形だけを覚えても仕方がありません。
口で言う音は、自分の耳でも聞いています。つまり、音を言いながら書くことは、手+口+耳を使って文字を練習していることになります。手だけで練習するよりも定着を図ることができます。ですから、文字を書いて練習する時、口でその音を言いながら、これがとても大切だと思っています。
脱・連続して何度も書く練習
鉛筆を使って何度も何度も書くだけが練習ではありません。もともと私自身も漢字練習で同じ漢字をノートいっぱいに書く宿題があり、辟易した経験があります。何度書いても覚えられない。練習直後のテストでは書けるけど、テストが終わってしばらくしたら忘れている。
ジョリーフォニックスの教材では、単語を書く時に3回しか練習スペースがないものがあり、驚いた覚えがあります。
その指導は
①まずはお手本を見ながら単語を書く
②お手本と自分が書いたものを隠して思い出しながら書く
③自分が書いたものとお手本を見比べて確認する
④もう一度、お手本と今まで自分が書いたものを隠して、思い出しながら書く
⑤お手本と見比べて確認する
ということで、書く練習はたったの3回!
それ以来、ずっとこの方法で指導してきました。これだと子どもたちの負担は少ないし、ただ書くよりも集中して取り組めています。そんな私にとって、理論的に参考になったのはこちらの本。
この本によると、同じ文字を連続して何度も練習することで、すらすらと書けるようになり文字を習得した気になるかもしれないが、時間が経ってテストしてみるとうまく書けず、長期的な記憶保持には逆効果であると研究でわかっています。
つまり、同じ文字を何度も短期間で書いて練習したとしても、それは「学習した」という気持ちと満足感だけであって、文字の習得には結びつかない。
ではどうしたらいいのかというと、1つの文字を連続で10回練習するのではなく、文字を書くのは集中して1回、これを10日間練習するというように、文字の学習の間隔をあけて練習する分散学習の方が、長期的な定着率を高めることができると、カナダの小学生を対象に行われたペンマンシップの実験で実証されています。
一度学習したからもう終わりではなくて、時間を空けて何度もその文字の形を思い出すこと、これが文字の定着につながるのだと思います。
大切なこと
小さな子どもは、まだ手指の筋肉が発達しきっていないので、最初からきれいな文字を書けるわけではありません。成長に合わせて、手指の筋肉が発達して、鉛筆の正しい持ち方が身に付いて、やっときれいな文字を書けるようになります。
Cambridge University Press のHand Writing 教材コーナーでは無料で小さな子どものための「書く前の」手指の筋肉を鍛える活動アイデアを公開しています。書くときの姿勢(日本も同じですよね)や横書きの際の紙の置き方なども紹介されています。
大切なのは、子ども自身が文字の形と音を結びつけられるように、何度も形を思い出す活動をすること。そして、文字を書く時に相手のことを考えて、誰が見てもわかる形で書こうとする態度を身につけること。これは何も英語のアルファベットだけではなく、日本語も、他の言語も同じではないかと思います。
次は、「3. 文字の音の合成(ブレンディング)」について書こうと思います。