会社が腐っていればDXも臭いよね、そりゃ。
本日はこちら。
DX以外は成功しているのかと言えば・・・
じゃあ、世の中の日本企業が、DX以外のことで何か成功しているのか?
当然ながら、成功していない、というのが現場の体感的な結論なわけです。
日本の企業は、そもそも、経営そのものが上手くいっていません。DXというフィルターはその「上手くいってない具合」を増幅させ、より失敗を分かりやすく、浮き彫りにさせます。
ここでは、なぜDXが経営の良し悪しを判断するフィルターなのかを追いかけながら、翻って、本題である「DXに失敗する理由」を見ていきます。
DXへの投資
DXには金がかかります。例えばSFA、MA、CRM、チャットツール。月額で1ユーザーでいくらいくら、とった具合で金が必要となってきます。大規模なシステムの導入であれば、開発費用やコンサル費用、普及やトレーニングにかかる人手、時間も含めれば、莫大な経営資源をDXに注ぎ込まないといけません。
ということで、基本的に投資対効果の見極めが必要になります。膨大なツールと導入事例、競合情報、を加味して企画を練り上げることになります。そして、最終的に、いったいこの金を誰が出すのか?この投資の回収責任は誰が取るのか?
簡単に言えば、プロジェクトオーナーである経営者の覚悟(器)が問われます。
この経営者による覚悟が揺らぎ、無理やりリスク分散したりすると中途半端なことになります。それは、予算の分散化を招き、経営効率を落とします。全社導入すれば、ノウハウを全社員で共有できるはずなのに、プチプロジェクトで行うせいで個別最適化してしまう可能性があります。
すでに大企業では、事業部長や部長級がプロジェクトオーナーとなった、プチプロジェクトにおけるDXのサイロ化が進んでいるところではないのでしょうか?
例えば、親和性の高いA事業部とB事業部が別々でシステムを構築している。
例えば、同じA事業部内でも、開発と営業で違うシステムを構築している。
それを、ダメな経営者は「現場の意思を尊重する」などと濁して、ただ見守るだけで、自分たちがどうあるべきか経営者自身が意思を持っていなかったり、社員に対して「みんなでこっちに行こう」と号令をかけたりしないわけです。
縦割り組織の弊害について、DXは開発費の未回収でそれを示してくれます。
ファックス vs メール
皆さんはファックスとメール、どちらが便利かという比較表を作るでしょうか?おそらく今時そんな比較表は必要ないはずです。何か特殊な事情でもない限り、どう考えてもメールの方が便利です。
しかし、今回は改めて考えてみましょう、なぜメールの方が便利か?メールの方が便利となる前提は何か?意外と、示唆に飛んだ検討だと思っています。
まず、メールは電子記録として残りますので、保管やエビデンス管理が楽になります。それから、ファックスは機械本体の前にいないと送受信ができませんが、メールはパソコンのような移動可能な端末でも送受信が可能です。あと、ペンと紙が必要ありません。
では、メールがファックスより便利であるにはどんな前提がいるでしょうか?まずはインターネット環境ですね。もしインターネット環境がなく、電話回線しかないのであればファックスに軍配があがります。
それから、パソコンも必要です。パソコンがない環境で遠くの誰かとやりとりするなら、その辺の文房具屋で紙とペンを買ってきてファックス送信するしかありません。
あと、こんな観点もあります。インターネットもパソコンもあるけれど、ブラインドタッチができない。この場合、どうでしょうか?例えば、あなたがキーボードの文字の配置やスマホ文字入力方法を一切知らないとしましょう。
どっちが便利でしょうか?
ペンだけで物事を伝えられるファックスの方が便利なのです。
長い前置きでしたが、つまり現場のITリテラシーがないとDXは失敗します。
エクセルvs SFA、メールvsチャット、対面vsビデオ会議・・・。
現場でDXを入れようと思ったら全て比較表が必要になってきます。
そう、何年かすれば、ファックスvsメールと同じ部類に入る比較表です。そうなるとわかっていても、ボトムアップで構築する場合、比較表を作る必要性に迫られます。この時点で会社の企画部の生産性は落ちまくりですね。
まぁ、いったんここではその闇は置いといて、話を進めます。
全体最適を計算すると、残念がらおそらく旧来の手法(エクセル、メール、対面会議)に軍配があがります。
なぜか?
それは、先程のファックスvsメールの話で言えば、ブラインドタッチができない人がいっぱいいる状態と一緒です。
圧倒的に、社員はエクセルで物件を管理することに慣れています。彼らにしてみればSFAは、「ブラインドタッチを覚えろ」と強制されるのと同じです。どうしようもなく手間であり、時間がかかり、誰もサポートしてくれないと間違えてしまいます。明らかに一時的に生産性を落とすことになります。
DXは、経営者がいかに社員への教育や時代に合わせたアップデート機会をサボってきたかを顕著に示してくれる計測機なのです。
短期の売上と収益にとらわれる無策
これには続きがあります。一時的に生産性を落とすということは、売上と収益が低下するということです。
ただでさえ人手不足なのに、ただでさえコロナで落ち込んだ売上を挽回しないといけないのに・・・そんな現場の悲鳴が聞こえてきそうです。
先ほどとは少し違う観点で見ていきます。
もちろん、短期的にも売上と収益を保っていく努力は必要ですし、会社や事業が潰れてしまっては意味がありません。しかし、あまりにも短期的な売上と収益に固執することは、均衡縮小しか道がなくなります。
赤字になる→リストラする→一時的に収支が良化する→実際には潜在的に競争力が落ちている→また赤字になる・・・(以下繰り返し)。
このような負のスパイラルに陥り出した事業が、起死回生を狙って大型の投資プロジェクトをした場合、現場は疲弊し、延命どころか、死を早めます。
今の売上を保つだけでも精一杯の集団に、新しい何かをさせる、新しい何かを覚えさせることは不可能です。経営者は成果が出るまで時間をかけることを社員に許可しないといけません。
皆さんの会社には経営理念はありますか?皆さんは普段から経営理念の実現に向けて仕事をしていますか?簡単ではないけれど、少なくともそうあろうとしていますか?
優先順位として、こうしたより上位概念の実現を目指し、結果的に売上と収益がついてくる構図が本来望ましいはずです。
ここを忘れた経営に未来はありません。短期的な売上と収益を最上位概念とした場合、それは翻って、死を意味します。
DXは、死に体の事業部にとってはトドメの一発なのです。
まとめ
上記の通り、プロジェクトを成功する土壌にないのが今の日本の経営です。腐った会社にどんなフレッシュな食べ物を入れてみたところで、あっという間に腐ってしまいます。
ということで、また。