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我ら昭和戦士チームにTeamsを導入する場合

オーバー50歳以上の人が当たり前。みんなパソコンを使うのも四苦八苦。

現実にはそういう組織だってあるのです。

そして、こんな時代であるが故、トップダウンである日突然Teamsのようなチャットツールやビデオ会議ツールが導入されたりするのです。

ひとつ補足しておきますと、僕はだいぶ以前からTeamsを導入するよう要請してきましたので導入自体は大変にありがたいことです。しかし、浸透の部分もしっかり考える必要があるなと思ってきました。

コミュニケーションツールなのですから、全ての人に関わるツールです。できる限り多くの人、というか全員が使いこなせないとツールの効果が最大化されません。しかし、誰でもビジネスチャットツールが簡単に使いこなせるとは思うなよ、ということです。

明日から全社員が「ありがたや、ありがたや」と拝み倒して、バリバリとビジネスチャットツールを使いこなすだろう、めでたし、めでたし・・・。

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そんなのは経営者や働き方なんちゃら部門の妄想であり絵空事です。

とはいえ、これくらいドラスティックに変わるのも嫌でも覚えるかもしれないので悪い面ばかりではないかもしれませんが、いろいろとサポートが必要なはず。

そこで、我々のチームだけでも浸透計画をしっかりと練っていこうと提案を行いプロジェクトとして進めました。今回のお話はそのプロジェクトのエッセンスを少しご紹介する形になっています。

できない人ファースト

大変失礼ながら、最も仕事できないだろうな・・・という人の目星って大体ついてませんか?なので、私はその人がついていけるような仕組みにしたいと思いました。否、もっと言えば一番できない人が相当利益を享受できる仕組みを考えようと思ったのです。

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チャットツール導入前から仕事ができる人は、正直言ってチャットツールがなくてもかなり生産性が高いと思っています。チャットツールが導入されれば残りの幾ばくかの数値が伸びることは間違い無いでしょう。同様にできる人や普通の人もそれなりに伸びると思います。

例えば、チャットが使いこなせる場合には最大で生産性が30伸びるとします。このときに成長率が一番高いのは、当然ながら「すごくできない人」です。

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なので、組織全体の生産性向上という観点では、すごくできない人をそれなりのところに引っ張り上げるだけで相当なボトムアップになるはずなのです。

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一方で、ツールを使いこなせるようになるために必要なリソース(教育に必要なコストや時間)も当然ながら「すごくできない人」が一番かかります。限られた資源です、ここに重点投下します。

現状分析:仕事ができない人の観察

いきなり仕事ができない人にTeamsのやり方を懇切丁寧に教え始めるという、愚かなことはしません。最初の手順は、なぜその人は仕事ができないのか?の観察と分析から始めます。

その観察と分析の結果に対して、チャットツールが改善策として機能する余地があるのかどうかを考えていくのです。

できる人はいいのです。

ツールを与えられたときに勝手にその良さに気づき、使いこなし成果をあげることができるのですから。

一方で、できない人への導入というものは、大変失礼ながら猿にパソコンの良さを教える、それくらいのサポートだと考えるべきなのです。

心理的安全性も大きい

それでは仕事ができない人はいったい「何ができてない」のでしょうか?

いろいろあります、いろいろ・・・たくさん。

しかし、結論から言えば不安や焦りという精神面のケアが非常に大事であることを、観察を続ける上で気づけるかは大きな分岐点です。

例えば、何か疑問があるときに気兼ねなくそれを誰かに聞ける環境にあるか?ということです。できない人の一つのパターンとして、この「誰に聞いたらいいんだ問題」は非常に難関です。

不安やコンプレックスがあると、こんなことをあの人に聞いて大丈夫だろうか?となります。なので、この不安を取り除くことが先決です。このため、最初のうちはチャットツールは丸投げの部屋として存在してあげたほうがいいのです。

お客様から●●と質問が来たけど、どうしたらいいのだろう?

これに対して、本来指導する側は、「自分なりに調べて、考えてから相談に来て欲しい」と思うでしょう。その気持ちも勿論よくわかります。

しかし、生産性向上を見直すいい機会なのですから、自分のチームのチャットルームに「どうしたらいいのだろう?」とそのまま質問を投下できる雰囲気作りが大切です。

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というより、チャットルームだからこそ気兼ねなく聞ける可能性を有しています。普段ビクビクしながら聞いている上司以外のたくさんの人達の目に触れますから、手を差し伸べてくれるお節介さんがたくさんいるはずです。

というより、そういうお節介文化を作る必要があるのでは無いか?と思います。そうした活性化によってチャットシステムが血の通ったものになるのです。

はじめのうちはルールブックが必要でしょう。そしてルールブックを徹底することで文化のレベルに浸透されることが必要になると思います。

できない人ファーストの不合理性

このお節介文化について考えるとき、個々人の生産性から一層チームの生産性へと問題がシフトしていきます。単純に言えば、「仕事のできる人が教えるコスト」と「仕事のできない人が得られるベネフィット」のバランスです。

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このグラフは、先ほど出てきたすごくできない人にかかるリソース70を右に記載しています。左側はその70の内訳です。この70という教えるリソースを誰が負担するか?ということです。当然ながら仕事ができる人が知識も豊富だという前提にたてば、すごくできる人のリソースが多く割かれることで(つまりすごくできない人に対して、すごくできる人が教える時間が多い)、成立することになります。

こうなると、もともと95あったすごくできる人の生産性のうち、仮に35を教える時間に割くことになると、すごくできる人は60まで生産性が落ちます。

上記の記事は当然の結末です。何も考えずに在宅勤務制度やツールの導入だけを進めれば生産性は落ちるに決まっています。

キーボードを使いこなせない人間に手書きから電子メールに変更せよと指示を出したら生産性が落ちるに決まっています。それと同じことが今、起きています。

しかし、その程度のことでしかない、ということです。改善可能なことです。

導入当初は一時的にできる人側の生産性が落ちますし、できない人たちが成長途上で生産性がまだ上がらない時期が発生しますので、チーム全体の生産性も落ちるということになります。

あたりまえですが、個人主義的な合理性に基づくと、できる人たちにとって、できない人を助けることにメリットが見出せません。ですので、僕たちは運営側として「できない人ファースト」」とルールにした時点で、2つの質問に答える必要が出てきます。

一つ:できる人を犠牲にするのか?
一つ:生産性が改善される時期はいつからなのか?

このうち後者の質問は、以下のようなグラフを作り、必要な教育期間を割り出せれば、ある程度の理解を得られるかもしれません。

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このグラフは、すごくできる人がすごくできない人に教えないといけない量(つまり教育リソースの量)を示しています。

縦軸がすごくできない人にかかる教育リソースの量、横軸が時間の流れです。黄色の棒グラフがTeamsを導入しない場合に必要な教育リソースです。常に15程度かかり続けるイメージです。これは刹那的に指導をしているため、ずっと教わる側のレベルが変わらず、且つ教える側の指導量も自分の仕事が邪魔されない範囲に収めようとするため、この辺りに落ち着きます。

緑線はTeams導入した場合の教育リソースです。先ほどの通り最初のうちは教育リソースは非常に高いです。しかし、教育が体系化されていき、教わる側が能力も自信もついていきますので、少しずつ必要な教育リソースは減っていき、やがて赤色の部分よりも逆転し、教わる側も楽になって行くということです。

ということなので、最初の質問である「できる人を犠牲にするのか?」ということへの納得感や公平感を、次章から考えて行きたいと思います。

お節介指数と表彰制度

この公平感を制御するために導入すべきがお節介指数です。このお節介指数は、お節介度合いを数値化するものです。そしてこの数値が高い人はきちんと評価される仕組みとなるようにするのです。具体的には数値の高い人を表彰しモチベーションの向上に活用します。

このお節介指数は、困っている人を直接助けた、ということにとどまりません。もっと細かく貢献度合いを見て行くことにしています。例えば、勇気を出して質問をした人に、いいね!して励ますことも指数アップの要素にします。例えば、直接の質問への回答は知らないけど○○さんなら知ってるのでは?というアドバイスをしたり、質問の仕方が悪い場合に切り口を変えるようにフォローしてくれたり、要するにファシリテート的な伴走の要素も加味しています。

こういった仕組みがあれば、多少できない人でもお節介指数を高められます。また仕事がよくできる人も他人に教えることが評価軸になるので、リソースをできない人にかけることのモチベーション維持にもつながります。

お節介指数の計測と合理的な質問箱

とは言っても、お節介指数をどのように計測するか?という問題はあります。たくさんのチーム(スレッド)が乱立している場合、誰が一番いいね!したかを数えるのは中々に困難です。

そこで、あらゆる質問を回答する箱としてのチーム(スレッド)を作成することにしました。僕たちのグループでは、すべての人がすべての質問をそのチーム(スレッド)に放り込む仕組みにしました。こうすれば、回答も全員が等しくできますし、その質問箱の中で押下されたいいね!数だけを数えることになるのでそこまで難しくはありません(と言っても、それでもグループの中の人数や問い合わせ数が多い組織だと大変だとは思います)。

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こんな感じで全てを集約したわけです。

なお、もちろん質問と回答は一対にして、ナレッジとして保管は別のところにはします。こう言った情報保管は同じ質問に再度答えなくていいという効果をもたらします。ある程度しっかりした会社や組織ならその程度の保管は当然にしている場合もあると思います。が、少なくとも僕たちのグループは個々人で情報を持つという非常に効率の悪い仕組みとなっていました。

この質問箱の共有で、ナレッジを構築する慣習が生まれ、刹那的に質問を投げる→回答を得る、の繰り返しではなく、徐々に技能のレベルアップ、ノウハウの蓄積が行われていく仕組みとなります。

結果的に、仕事ができる人(=教える側)にもメリットが出てきます。同じような質問に何度も答えなくてもいい、というメリットです。このメリットをお節介指数の導入時にしっかりと仕事ができる人側にも伝えることが肝要です。

つまり、一時的には負担が増えても、最終的には自分を助けることになるツールであり、そのためのカルチャー作りなのである、ということをより深く理解頂くということになるのです。

これは理想論でもなんでもなく、ツールを入れたあらゆる人にメリットがもたらされる可能性が十分にあるということです。この点は皆で認識したい部分です。

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こんな感じでしょうか。兎にも角にも技術論だけではツールというのもは浸透しません。文化、カルチャー、風土、風通し、やる気、思いやり、そんな領域も仕組み化する、誰かが率先垂範で盛り上げて行く、そんなことが不可欠なのだと思います。

そして、皆でゴールを認識する、そもそもなんでツールを導入したのかをことあるごとに振り返る、そうやって一体感を保ち続けることもまた、成功への大事な要素のように思います。

ということで、また。

※ちょうど書き途中だった記事が、今回の日経COMEMOテーマ企画のお題と重なりましたので、先に書き上げました。一旦連載企画(SDGs)は止めて、この記事を挟せて頂きました。ご理解頂けると幸いです。

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