VPPとは何か(2)「VPPの基本」
前回の記事はこちら。
第一回で、これまでの電力事情を整理しました。今回から具体的にVPPがどのようなものかを見ていきたいと思います。
最初に)読み込む力のある人へ
ここまで説明しておいてなんですが、というか、ここまでの説明が理解できたならば、以下の資源エネルギー庁の説明を読めば、ある程度の基礎は理解できるかもしれませんので、最初に載せておきます。図表も豊富なのでおおよそのことは理解できるかと思います。
その上で、基本的な部分や要点だけをここでまとめていきたいと思います。
ざっくりVPP
まずは従来のフローのおさらいです。
この図を見た上で、最初にもう一度認識をしておいていただきたいのですが、、VPPはバーチャルパワープラント・仮想発電所の略です。VPPは発電所なのです。
もう一つVPPをざっくり理解する上で欠かせないのがアグリゲーターという存在です。これは電気の4要素でやった、4つのプレイヤーを繋いだり調整したりする役割をするプレイヤーです。
さて、これらを頭にいれた上で、VPPを説明すると以下の通りです。
太陽光パネルなどの小規模電源、これらの小規模電源を束ねて大規模電源と同じように大きな発電所として活用するということになります。
ただし、この状態だと小規模電源はただバラバラに存在するだけで、一つに束ねられた状態にはなりません。ざっくり言えばこの束ねる存在がアグリゲーターです。
VPPのメリットとデマンドレスポンス
では、このような小規模分散型電源を一つの発電所とみなすメリットはなんでしょうか?アグリゲーターの存在価値やアグリゲーターが得られる利益とはなんでしょうか?それは前回のDR(デマンドレスポンス)やに関係します。
ポイントは、そうはいっても旧来の電力会社の発電所や一般は送配電事業者(大規模電源・電源I)は大切な電力供給をしてくれるベースであるということです。
そして、前回も例に出しましたが、夏場の暑い時期に冷房をいっぱい使用されてしまい受給のバランスが崩れそうなとき(=インバランスとなりそうなとき、つまりDRの発動が必要なとき)に、VPPが力を発揮します。
まず一般送配電電事業者は需要が逼迫するとアグリゲーターにDRを依頼します。
次にアグリゲーターが電気小売事業者に電力供給量の増加を依頼します。
さらに小売電気事業者は発電事業者にお願いを行います。
こうして逼迫している需要を補強していきます。
このとき一般送配電事業者は報酬をアグリゲーターに支払います。報酬は小売電気事業者や小規模電源事業者にも渡されて利益を得ます。
さて、ここからがVPPの特長でありメリットでもあるのですが、アグリゲーターは需要家に対しても申し出を行うことができます。その申し出とは、必要な需要量を下げてもらうことです。
需要が逼迫しているときにやれることは2つです。一つは需要を増やすこと、つまり電気の供給量を増やすことです。もう一つは、需要そのものを下げてもらうことです。つまり、需要家に省エネしてね、とお願いするということです(これを下げDRと呼びます。下げDRの取引のことをネガワット取引とも呼びます)。
これも成功すれば、一般送配電事業者からアグリゲーターに報酬が支払われ、アグリゲーターと需要家で分け合うことができます。
他のパターンもあります。例えば、青い小売電気事業者のエリアにおける需要家がたくさん電気を使ってしまい、電力需要が逼迫した場合です。この場合も青い小売電気事業者はアグリゲーターにお願いをすることになります。
この場合も供給量の増加を別の小売事業者にお願いすることになります。
当然ながら、需要家への需要低下依頼(下げDR)を行うことになります。
ちなみに、このパターンの時にはインバランスとなります。そのためアグリゲーターは一般送配電事業者にインバランスのペナルティを支払うことになります。
なお、この取引については、市場が2017年からで既に存在しています。名称は、日本卸電力取引所(JEPX)です。
もう一つのパターンがあります。
需要家と小売電気事業者との間でのやりとりです。
これはそんなに難しくありません。小売電気事業者が需要を抑えたい場合にアグリゲーターが需要家に下げDRを依頼する仕組みです。
改めての説明となりますが、下げDRに需要家が応じるとメリットがあるのかと言うと、あります。それは需要を実際に落としたら報酬金がもらえるのです。報償金のでどころは、最初に依頼をかけたところです(一般送配電事業者や小売電気事業者)。ここが下げてくれたことに対して報酬金を出します。ただし、これらのお金の流れや金額設定などの手続きや調整はアグリゲーターがやってくれるわけです。
また、供給量を増やしてくれたところにも報酬が入ります。出所は、同じく最初に依頼をしたところ、調整するのはアグリゲーターです。
さて、3つのパターンを紹介しましたが、ここで言葉の補足です。
1つ目のパターン、言い出しっぺは一般送配電事業者でした。後ろ二つの言い出しっぺは、小売電気事業者です。
この後ろ2つの小売電気事業者のパターンは、インバランスを抑えるために、計画値同時同量という仕組みが取り入れられており、VPPやアグリゲーターが必要な理由はまさにこの計画値同時同量の達成が必要だからです。
計画値同時同量は需給バランスを保つため、小売電気事業者(または発電契約者)が、30分ごとに需要計画(または発電計画)と需要実績(または発電実績)を一致させるよう調整を行う制度です(この一致させるように調整していることをGC:ゲートクロスと呼びます)。要するにインバランスのことです。
従来、インバランスはどちらかというと大規模電源や一般送配電事業者と言った旧来の大手電力会社が担うイメージでした。しかし、電力自由化で小売電気事業者のプレイヤーが増えたことで、小売電気事業者にもしっかりと受給バランスを取らせるための仕組みとなったのです。
それとこれも言葉の補足ですが、発電所から小売電気事業者との間で結ばれる電力料金は特定卸供給と呼ばれます。
それから一番最初のパターンの一般配送電事業者からの調整依頼に対して対応できる力のことを調整力と呼びます(まんまの言い方ですが覚えておいてください)。
今日はここまでです。
ということでまた。
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