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フレームとその内部 -セルバン・イオネスク[Lisi]@NANZUKA 2G

 某日、渋谷。

 セルバン・イオネスク「Lisi」(– 7/7)@NANZUKA 2G



ポップなフレームに目を奪われて

セルバン・イオネスクは、1984年、ルーマニア生まれのアーティストです。プラット・インスティテュートで建築学の学士号を取得し、2010年から2016年までレンセラー工科大学の建築学部の非常勤教授も務めました。それらの経験と実績から現在も彫刻、絵画、デザイン、建築など、多岐にわたる幅広い作品を手掛けています。これまで、ニューヨークのR & CompanyやLarrie Gallery、ベルギーのアントワープにあるEveryday Galleryで個展を開催してきました。

野外彫刻作品でも有名なセルバンが生み出すその独特のラインは、集中的なドローイングの実践から生まれ、鮮やかな色使いとカートゥーン風のジェスチャーを特徴としています。シリーズ「Chapel For An Apple」、「Tower For An Hour」、「Smokey」といった大規模なスチールとアルミニウムの構造は、彼にとってのポストアーキテクチャへの回帰です。最近では、ベルギーのゾンホーヴェンで高さ33フィートの最初の公共構造「Room For A Shroom」を完成させ、話題になりました。

同上

 今回の展示は6作品。

 作品は原色の赤、青、黄のフレームに入っており、否応にも目を引く。フレームは帽子のようにも山のようにも、建物のようにも見える。


家と、その内部

 ところで、描かれている人物?というか存在なのだけど、

 目を奪われがちなフレームから視線を外して描かれているそのものを見るならば、そこにはまた別の印象がある。

本展のタイトルでもある「Lisi」は、セルバンが幼い娘と一緒に描いたドローイングから生まれた新しいキャラクターシリーズです。環境や日常の変化、夢想と無限の行為の抽象世界の中に突如「Lisi」が現れました。そして、セルバンの作品の特徴でもある大胆でカラフルなフレームは、絵画を壁の彫刻へと変えるオリジナルの手法であり、ここでは「Lisi」を守る「家」として機能しています。これらのフレーム(家)は、Lisiの控えめで自発的な出現を巧みに構造化し、対比させる役割を果たしています。このようにセルバンは、即興的な絵画と、精密に構築された彫刻=「夢と現実」の交差に着目し、焦点を当てています。

同上

 描かれている彼(彼女?あるいはどちらでもない?)は「Lisi」。その姿は子供のお絵描きが持つパワーを持続しているかのように、力強く描かれている。「家」に見立てたフレームとLisiから受けるふしぎな印象の明かしは、上記の展覧会概要の中にあった。

 だからフレームはここまで堅牢で、絵画から彫刻への橋渡しもしている。

 遠目に眺めれば、おしゃれで一風変わったポップアートとして見過ごしてしまいそうだ。しかし近寄れば、いかつい「家」と、それに守られたLisiの秘められたエネルギーが気になって、目が離せなくなってくる。



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