[恋愛小説]1981年の甘い生活...3 /青梅での生活
美愛から友人の佐久間慶子への手紙:
佐久間 慶子 様
ご無沙汰しています。お元気ですか。
私たちも元気です。
4月末の祝日に、ゆーちゃんの転勤で東京・青梅に引っ越しをしました。
4月からハウスメーカーに転職したと思っていたら、2週後には、青梅の営業所付きの現場監督として転勤する辞令が出て、驚きました。
青梅と聞いて、思わず 何処?って訊きました。東京の西の外れ、でも東京都下です。隣は山梨県ですが。区民だったのは2年間だけになり、少し残念だけど、ゆーちゃんに付いていきます。
2年間住んだ石神井公園は、毎週土日に1時間くらいゆーちゃんと一緒に歩きました。池の周りを歩くと、平日のストレスも和らぎ、その日一日リラックスして過ごせました。残念なのは、ゆーちゃんの事務所がある豊島園には、夏の夜の花火大会に1度行ったきりでした。もう少し行きたかった。でも、浦安に東京ディズニーランドが4月にオープンしたので、そのうち連れて行ってもらいます。
昨日スーパーの魚売り場を見ていたら、なんと一番安い魚は、ヤマメでした。ヤマメですよ。サンマでも鯖でもなくて、驚きました。早速その晩はヤマメの塩焼きにしました。
住めば都というけれど、こんな山の中に作家や芸術家の美術館があるんです。これも先週、ゆーちゃん、と行ってきました。吉川英治記念館と玉堂美術館です。こう言うのゆーちゃん、好きでしょ。お付き合いして、ついでに渓谷沿いの道も歩いてきました。腕組んでね。未だに熱々でしょ。てへっ。
それと、ホンダのアコードを買いました。中古車だけど、色はブルー。やはり青梅では、車は必需品です。そっちと同じですね、ゆーちゃんは会社のカローラワゴンを運転して、現場通いをしてます。
学生時代の事故以来だったので、最初新宿支店から青梅に来るときは、中央道は使わないで、甲州街道から、青梅街道を帰ってきました。大変だったみたい。
マニュアルギアなので、4速に入れ様として2速に入れちゃったとか、言ってました。
現場監督の仕事は、楽しいみたいなので、良かったです。最近、顔や二の腕も日焼けしてるし、土方焼けって言うんでしょうか?体が筋肉質になってきました。毎週土日に念入りに隅々までチェックしてます…あはは。
お盆休みには、そちらに帰省するので、La Luceでお茶しましょ。それでは。
1983年5月20日
福野 美愛
美愛は、慶子への手紙を書き終えて、窓の外を見た。南側には、若栗運動公園があり、野球場は平日なので、誰も居ない。土日は、草野球で賑やかだが。
青梅に来て、驚いたことがある。西には奥多摩の山々が聳えていた。郷里の筑波山は、単峰だが、山塊としてあると存在感がある。
先週優樹が運転するアコードで奥多摩湖までドライブしてきた。湖畔の駐車場で、車を停めて、山の中の静かな湖面を見ると、何処か遠くの国に来たみたいだった。
鍾乳洞もあり、二人で入った。美愛は優樹の腕に抱きつき離れなかったらしい。結婚して、2年になるが、いまだにDolce Vita 甘い生活 は続いている。
それが、1983年5月の出来事だった。
[恋愛小説]1981年の甘い生活 各話のタイトル一覧
1.Dolce Vita 甘い生活
2.根津神社で
3.青梅での生活
4.スカーレットのフィアレディ
5.小淵沢にて...
6.ハネムーンはNZ その1 秘められた目的
7.ハネムーンはNZ その2 美愛の憂鬱
8.ハネムーンはNZ その3 美人のツアコン
9.シェルティとボルボ
10.嬉しい知らせ
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