短歌作品 Y字路の(8首)
Y字路の 生田亜々子
読んでいてつい眠くなり本を置く胸安らかに上下したまえ
物語の森のY字路 消去法であれば安堵するその先の選びかた
そして来る春は 何もかも捨てた部屋に浮かんだほこりが光る
そっちではなくてこっちと選び取るそんな生き方ばかりしてきた
流れとは違うリズムで揺れながらまだ追う取り逃がした思索
これほどの寝癖があればどんな森でも必ず帰ってこられるだろう
疎まれているのもうれし疎むことで私を心に飼う人々よ
どこかにあるはずのなにかよ 足りてない体を下っていくストロングゼロ
初出『かばん』2021年5月号