春の終わり、ワンピースに気づかされたこと
桜はもう散り、春も終わりに差し掛かっている。
もう遅いよね。分かっているけれどまだ春気分を味わいたい!
ということで、この前春服を買いにショッピングモールをぶらぶらしていた。
やっぱり春だからワンピースとか、明るい暖色系の服が欲しいな、なんて思いながらお店に入ったり出たり。
「あ、かわいい」
あまり見かけないお店だったけれど、ショーウィンドウのコーディネートは大人っぽくて、でもユニークなデザインが可愛らしい。
私はそのお店に吸い込まれるように入っていった。
店に入ってすぐ見つけた。
暖かい色、とっても鮮やかで目を引くようなワンピース。
思わず手に取って眺めていたら、明るい声の優しそうな女性の店員さんが話しかけてくれた。
「どうぞ合わせてみてくださいね」
服屋さんで店員さんへの接し方がいまだに分からない。
いつもなら愛想笑いで乗り切るところだけれど、強引な感じがなく落ち着いて話せる雰囲気だったので少し勇気を出して話を続けてみることにした。
「えっと、春のワンピースを探しているんです」
するとお姉さんの顔がパッと明るくなり、手に持っていたワンピース以外にもう一着おすすめを持ってきてくれた。
それは肩から胸元までレースをあしらった白いワンピースだった。
う~ん。春っぽい明るい色のワンピースを探しているのにな。
まあ可愛いし、おすすめしてくれるなら着てみようかな。
その2着を手に試着室に入る。
最初はもちろんお店に入ってすぐ見つけた鮮やかなワンピース。
でも着てみるとなんとなく違う気が・・・。
とりあえず脇に置いておいて。
次は白いワンピースだ。
お、なかなか悪くないぞ。
思っていたよりいいかもしれない。
上半身に広がるレースは繊細なデザインだし、白色一色というのも爽やかな感じがする。でも着たことがないタイプのデザインだから、なんだか恥ずかしい。私には可愛すぎるかな?
「お客様?いかがでしょうか?」
試着室のカーテンの向こうでは店員のお姉さんが私を待っている。
・・・ええい、出てしまえ。
私は恐る恐る白いワンピースを身にまとってカーテンを開けた。
「あら、素敵です。とってもお似合いです」
・・・え?本当?
店員のお姉さんはとってもナチュラルに褒めてくれた。
「白色、お似合いですね。可愛いです!」
えへへ、そうかな?
「レースが春らしいし、今流行りのデザインなんですよ」
へえ~今こういうのが流行ってるんだ!
・・・・・・・・
「お買い上げ、ありがとうございました~」
気づいたら紙袋片手にお店を出ていた。
きっと一人だったら買っていなかっただろうな。
ただ店員のお姉さんにのせられて、いい気分になって買っただけかもしれないけれど、それでもよかった。
マスクの下では口角が上がりっぱなし。
新しい服、新しい色、新しいデザイン。
私の魅力を発見してくれた今日初めて会った人。
春というだけでこんなにいい気分にさせてもらえるのなら、季節が巡る日本に生まれてよかったなと思った、そんな春の終わりの話でした。