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衝撃に身構えていたのにその上を……『セカンド・ラブ』乾くるみさん

 なめらかでテンポの良い文章に、導入部からするりと引き込まれました。
私にしては珍しいことですが、それがこの小説の鍵なのかもしれません。

読みやすい恋愛小説が次第に不穏な気配を帯びてきます。違和感が溜まっていきます。それでも、立ち止まって疑問の答えを探す前に小説のスピードが勝ってラストへ連れて行かれてしまいました。

そしてあることに気がついたのです。思わず読み直す冒頭の結婚式シーン…… いくつもの伏線がこの上なく精密にラストに向かって奉仕している。

『イニシエーション・ラブ』の作者ですから、もちろん予想はして身構えていたのです。それを上回る仕掛けの妙。
驚きと楽しみが両立した読書でした。


文春文庫

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