1:「子供らしくある」ということ
マガジン「人の形を手に入れるまで」の1話目です。まだ前書きを読んでいない方は、こちらからご覧ください。
思えばその子供は、人の機微に聡い子供であったと思う。
「よく笑う、優しい良い子ね」
よくそう褒められていた。
優しい子がそうするように、ボランティアにはすすんで参加した。頼まれれば断らずに頼まれたことをした。
美術部では部長もしたし、生徒会の末端役員も引き受けた。誰もやりたがらない仕事を「楽しそうじゃん」と引き受けて回った。
「褒められる子供であろうとした」、それが正しいんだろう。
おもしろくない冗談も腹の底から笑った。皮肉な嫌味も気づかないふりをした。子猫がいれば拾って帰った。ただただ「状況を俯瞰する私」の指示するまま、望まれる「優しい子像」をなぞった。
気づいた時にはそうだったのだ。記憶の始まりは3歳前のテーマパーク。親にすすめられ乗りたくないアトラクションに乗った。子供にとっては親と離れるのは恐怖だった。3人のお出かけが嬉しかったのに、子供用という理由で1人アトラクションに行くのが嫌だった。
ただそうしなければ、この日のお出かけを最後にもう2度こんな時間がないのではないか。漠然とあった不安を今言葉にするなら、そんな感情だったと思う。
1人アトラクションに乗った。アトラクションの上から、こちらを笑顔で眺める父と母が見えた気がした。
「わらってる」
それが嬉しかったことを覚えている。これが私の最初の記憶。それからの有り様に繋がる、私の原体験だ。
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駆け出しライター「りくとん」です。諸事情で居住エリアでのPSW活動ができなくなってしまいましたが、オンラインPSWとして頑張りたいと思います。皆様のサポート、どうぞよろしくお願いします!