見出し画像

感想【センス・オブ・ワンダー】:レイチェル・カーソン 森田 真生 訳

生物系の学生なら一度は耳にしたことがある名著『沈黙の春』。その著者が晩年に書き残した未完の作品が『センス・オブ・ワンダー』である。数年前に旧訳版で読んだことがあったが、新たに森田真生氏の訳で再度読むと、これまでとは違う新鮮な感覚を味わうことができた。自分自身の立場や環境の変化により、改めてこの本の価値を感じた。

一つ一つのフレーズが鮮やかで、心に深く刻まれる体験は久しぶりであり、人生の節目に何度でも読み返したいと思わせる。
レイチェル・カーソンの大甥であるロジャーの目を通じて描かれる世界、または訳者である森田氏の子どもたちの目を通じて見る風景は、まるで別世界を見るかのように鮮やかに描かれている。それこそがまさに『センス・オブ・ワンダー』であり、大人になった我々が、いつのまにか忘れてしまった世界がそこにある。

特に森田氏による後半部分は、レイチェルが描かなかった、その後の『センス・オブ・ワンダー』を示しており、読者の想像を大いに助ける内容である。木々の移ろいや風の音、虫の音や自然の変化を感じる心。そして、いまこの瞬間を生きる子どもたちの感性に触れることで、年齢を重ねるにつれて忘れかけた大切な感覚を思い起こさせる。また、わが子の姿を思い浮かべ、学ぶとはどういうことなのかを考えさせる一冊である。

この本は、子育て世代で子どもの教育に悩む親御さんや、現代を忙しく生きる大人にこそ読んでほしい一冊である。

いいなと思ったら応援しよう!