青森県でホームレスになった話 8
どうも、ひかりちゃんです
始発の時間を迎え、徐々に
空も明るくなり八戸駅を離れることに。
その日も当然ながら、やる事がない。
無理矢理にでも何かやる事を
見つけようにも、何かやる気力もない。
今の私にできることは
ただ、過ぎる時間を待つだけしかない。
少しの仮眠を取れたとはいえ
快適でもないし、ぐっすりと寝たわけでもなく
頭は常にぼーっとしており
歩いていても一歩、足を前に踏み出す
動作さえも重く、辛いものだった。
ただ、この生活に慣れ始めたのか
昨日、一昨日よりかは
時間の経過を気にしなくなったと思う。
八戸駅を去った後は、ひたすら歩いた。
途中、真っ直ぐに続く
大きめの道路の歩道を歩いてる時
前方から来る、そこそこスピードの
ある自転車と衝突した。
自転車のどこかの部分が
私の右側の骨盤あたりにぶつかり
自転車に乗っていた運転手は
派手なくらいに転倒した。
私も、ぶつかって暫くの間
前のめりでうずくまるほどには痛く
キレ散らかしてやろうと思ったが
運転手は外国の男性で
自身も派手に転び、至る箇所を
擦り剥き、負傷しているだろうに
私の元へすぐ駆け寄り
コメンナサイ、ゴメンナサイと
片言の日本語で誠心誠意の
謝罪をしてくれて
怒る気にはなれなかった。
私は、ろくに英語も話せないので
ダイジョーブ、キヲツケテネ。と
英語風の日本語で話し
どこも別状はない。ということを
身体で表現して、再び歩き始めた。
痛いっちゃ痛いけど
大袈裟なほどでもなく、恐らく
軽い打撲程度だったと思う。
多少の痛みで、逆に頭が冴えてきたのか
歩きながら、こんな観光名所でもない
田舎町にも外国人が来るのか。
と妙に気になったり、それまで
停止していた考えることを再開して
くだらないことを考えながら歩いた。
あてもなく歩いていたが、
着実に本八戸駅方面に近付いており
昨日、見た記憶のある景色が視界に広がる。
相変わらず、本八戸駅周辺には
めぼしい場所も見当たらず
ここまで来たのなら。と言うことで
スマホの充電を行うべく
目的地をパチンコ屋へ定め、向かうことに。
辿り着いたパチンコ屋では
先日、長時間休憩スペースを占領したこと
もあり店員に顔を覚えられていないかという
不安もあったが、背に腹は変えられない。
誠心誠意、利用客を装い
熟練のプロの如く、パチンコ台の釘を見定め
スロット台のデータカウンターを眺め
首を傾げたり、頷いたり
一通りのパフォーマンスを行い
店員に、私が利用客であることを印象付けた
相変わらず、休憩スペースは楽園だった。
補充されており山盛りになった飴玉と
飲み放題のコーヒー
もちろんシュガースティックも使い放題だ。
充電している間、漫画を読み
コーヒーを飲んで過ごしていた。
おまけにタバコも吸えたので
拾いタバコに火をつけてくつろげる。
極楽浄土があるならば、このことだろう。
そこで私は閃いた。
閃いたというより気付いた。
もしかしたら。という可能性が生まれた。
手元に一銭もない状況下で
どえらいほど革命的なことが頭に過ぎった。
当時、PayPay等のキャッシュレス決済は
そこまで普及していなかったが、存在していた
おサイフケータイ、ID後払いというやつだ。
現金主義だったので、それまで
スマホ決済のようなものは使ったことがなく
まさかこんな手が残っていたとは迂闊だった。
ほんの些細な閃きに期待が膨らんだ。
充電途中のスマホを取り出して
自分のスマホが対応しているか調べてみると
対応していた。
5千円だけだったが、後払いで
買い物が出来るID後払いというツールがあった
歓喜どころの騒ぎではない。
それまで苦しいと感じていた心は
何もなかったかのように晴れ渡った。
即座にコンビニへ行き
ジャムマーガリンコッペとミルクティー
レジ横のホットスナックコーナーで
チキンとフランクフルト
そして、長らく愛煙していた
JPSという銘柄のタバコを選んで
スマホ決済と店員に告げて
機械にスマホをかざした。
買えた。
かつてないほど嬉しくてたまらなかった。
この時ばかりは人目すら気にせず
コンビニの駐車場へ座り込み
一目散に、買ったものを食べた。
数日ぶりに胃に入れた食べ物は
死ぬほど美味しく、そして幸せだった
ミルクティーを口、含んだ時に
昇天してしまうほど衝撃を受けた
それまで何も感じず飲んでいた
ミルクティーは、信じられないほど甘く
味覚を感じる神経の一つ一つを喜ばせ
五臓六腑に染み渡るほど美味しく感じた。
この先、どんなに高級な料理を
食べることがあっても
母の手料理を食べることがあっても
この日、口に入れたチキンやパン
そしてミルクティーを越えることは
ないだろうと思う。
数日ぶりの食はそれほど美味かった。
それではまた次回