【若手研究者のキャリアパス】研究者3名によるリアルトーク~今の仕事についた経緯や研究生活の様子、これからのキャリアプランについて~
科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにて、若手研究者が今の仕事についたきっかけ、研究生活の様子、これからのキャリアプランについて話す、リアルトークを11月18日(土)に開催しました。
今回のnoteでは、登壇いただいた3名のトーク内容をご紹介します!
登壇者
今回はA-Co-Laboパートナー研究者の高須賀聖五さん、菅沼名津季さん、岩切秀一さんに登壇いただきました!
高須賀聖五さん
所属:奈良先端科学技術大学院大学
経歴:企業研究員から社会人ドクターとして大学院へ
専門分野:マテリアルズ・インフォマティクス
❍今の仕事についた経緯やきっかけ
学生時代はなりゆきでなんとなく理系の道に進みました。就職して実際に働いたことで考えが変わり、なんために研究しているのか、技術をどのように継承していくかといったことを考えるようになりました。
自分が取り組んでいることを沢山の人に引き継いでもらいながら、自分も成長したいと考えるようになったのでアカデミアの世界に戻りました。
❍現在の分野を選んだ理由
もともと材料科学者だった私が、機械学習を用いたマテリアルズ・インフォマティクスの研究に転身した理由は、企業で働いた経験が関係しています。
データは沢山あるにそれらを上手く活用するのが難しく、また紙ベースで溜まっていくことに対しても、数十年後見返す時に大変だろうなと感じるようになりました。
せっかくあるものを上手く活用出来ないのはもったいないと思い、機械学習を取り入れたら先人の知見から新しいものが生み出されやすくなるのではないかと考え、マテリアルズ・インフォマティクスに関心を持ちました。
❍大学と企業での研究の違い
企業と大学では特に予算の規模が違うなと感じています。
また、企業では利益を生み出すものを作ることをメインに研究していますが、大学ではとある現象がなぜ起きているのかということをメインに研究しています。大学の研究でも自分達で利益を生み出せるように動く必要性を感じながら今は働いています。
忙しさについては、企業の場合は勤務時間が厳しく決められているのに対し、大学では特に決まりがなかった部分で違いを感じています。
❍これからのキャリアプラン
落合陽一さんの様に、自分で言ったことを全て体現されている生き方に憧れます。落合さんは、アーティストや研究者でもあり、起業もされていて色々なことを複合してやられている点でとても尊敬しています。
現在私も研究をしたり趣味で絵を描いたりしていて、今後は起業に向けて動こうとしているところです。
❍最後に一言
もし転職を迷われている方がいたら、自分の人生なのでやりたいことをやった方が良いです!人生のゴールに向かって目標を立てることで、自ずと自分のやりたいことが明確になると思います。
・・・
菅沼名津季さん
所属:株式会社bacterico 代表取締役
経歴:大手食品メーカーにて研究開発に携わった後、ベンチャーを立ち上げ
専門分野:腸内細菌
❍今の仕事についた経緯やきっかけ
予防に関する研究をしたい!と考え、研究者を目指すようになりました。
私の最終学歴は創薬なので薬を作る所にいたのですが、次第に予防薬を作りたいと思うようになりました。その予防薬に一番近かったのが食品です。日々私達が口にする食べ物が予防に繋がると考え、食品メーカーに入りました。そこでは腸内細菌に関わる飲料作りに携わっていたのですが、人によって効果がある方とそうでない方がいることを不思議に思うようになりました。その原因は、人によって腸内細菌が異なることでした。Aさんにとっては効果があっても、Bさんにとってはイマイチという結果が起こります。
そこで、それぞれの人に合わせてきちんと効果のあるものを作りたい!と考えましたが、大手食品メーカーでは一人ひとりにあった商品を個別に作ることは難しかったので「じゃあ自分でやろう!」と思い、株式会社bactericoを立ち上げました。
❍現在の分野を選んだ理由
最初は、人が病気になるのは遺伝子のせいだと思っていたので、病気になる遺伝子を組み換えた、「遺伝子組換え人間」を作ろと思っていました笑
そのため大学では遺伝学を学んでいました。ですが、学ぶ中で疑問が湧いてきました。例えば双子の場合、遺伝子が同じにも関わらず姉が病気になっても妹は病気にならないことがあります。その理由に、日々の食生活や生活習慣が関係していることを知りました。そのため、遺伝子組換え人間を作るより、日々の生活を整えたほうが良いんじゃないか、努力でどうにか出来るんじゃないかと考えるようになりました。そこで日々の食事の何が原因なのかを突き詰めていった結果、腸内細菌に出会いました。
❍ベンチャーでの研究について
企業・大学・ベンチャーでの研究を経験し、ベンチャーで感じることの1番はお金がないということです。お金がない中でどうやって自分のやりたいことを実現させるかを、常に考えています。また、魅力的なメンバーと一緒に、自分が面白いと思う研究テーマを提案したり、提案した実験をすぐに出来るのはベンチャーならではの特徴だと思っています。
私は現在、大学にも所属させていただいているので、企業ではなかなか出来ない基礎的な研究を大学で実施し、研究成果を活用したサービス開発や企業さんとの共同研究は自社で進めています。サービスを作りながら資金を集めて臨床試験が出来るようになったりと、ようやく自分のやりたいことが形になってきました。
忙しさについては、ベンチャーは忙しくも楽しいなと感じています笑
楽しいから無限に働けるという感じです。
❍これからのキャリアプラン
事業を伸ばして幅広く展開していきたいです。
それから私は、他のゲストの皆さんとは違いPh.D.を持っていないので、ゆくゆくは海外の大学で博士課程を修了したいなと思っています。そして最終的にはイグノーベル賞をとれるラボを作りたいと考えています笑
❍最後に一言
起業を迷っている方がいたら、起業しても大丈夫だよ!と背中を押してあげたいです。私自身大企業に勤めていたので、会社を辞めるか辞めないかですごく迷いました。
ですが海外に行った時に、何の仕事をしているのかわからないおじさん達が平日の昼間から道で楽しく話している姿を目にしました。それを見て、起業して、もし失敗してしまっても死なないと考えるようになりました。誰かが助けてくれたり、また就職できると思えたので起業を決意しました。
日本で起業しても悪いことは起こらないので、挑戦したいと思うのなら起業して大丈夫!と伝えたいです。
岩切秀一さん
所属:スイス連邦工科大学(スイス)ワイツマン研究所(イスラエル)
経歴:大阪大学卒業後、スイス連邦工科大学からイスラエルのワイツマン研究所へ
専門分野:グラフェンの物理学
❍今の研究室に入った経緯やきっかけ
今の研究所を選んだのは単純に海外が好きだったからです。また自分がどれくらい海外で通用するのかチャレンジしてみたい!というのを学生の時からずっと思っていました。スイスを選んだのは、自分の分野の最先端の研究が学べる大学があったからです。また、ヨーロッパの文化や歴史が蓄積された場所で生活してみたいと思っていました。
イスラエルに行ったのも同じ理由で、中東で暮らしてみたいという気持ちがありました。現在は海外での暮らしを楽しみながら研究をしています。
❍現在の分野を選んだ理由
もともと飛行機が大好きでパイロットになりたいと思っていました。飛行機のことを沢山勉強する中で、なぜ飛行機が飛ぶのかや、分解できないか、など思うようになりどんどん物理学にも興味が移っていきました。
高校生の時に、すごく簡単に解説されているアインシュタインの相対性理論の本を読んで、物理についてわかったつもりになってしまい「アインシュタインでこれなら自分にでも出来る!」と考え、勘違いをきっかけに物理学者になろうと思うようになりました。
❍国ごとの研究生活の様子
日本とヨーロッパの違いで感じるのは時間の流れがゆっくりで、ゆとりを感じることです。朝は皆、パンをかじりながらゆったりしていることが多いです。
また、私が取り組む研究分野的にはヨーロッパ内でのコミュニティが盛んなので沢山の研究者と繋がれて活発に研究が進められています。
大学ごとに違いはありますが、私のいるスイスの連邦工科大学はポスドクも先生扱いされる点で日本との違いを感じます。授業をしたり、修士論文や博士論文の指導もします。
❍これからのキャリアプラン
イスラエルに行って研究を継続する予定です。その後色々な人を巻き込んで自分の研究室を立ち上げるのが夢です。
私も菅沼さんが言っていたイグノーベル賞は興味があります。いつかノーベル賞も狙いたいです。
❍最後に一言
海外に興味がある方は、ぜひ試しに1ヶ月、2ヶ月行ってみることをオススメします。行ってみたらなんか違ったという理由で帰国する人もいるので、実際に行動に移してみて、現地の様子や環境を肌で感じるのが大切かなと思います。
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以上、パートナー研究者によるリアルトークでした!🗣
もっとA-Co-Laboのパートナー研究者について知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
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