育児には「絶対」も「失敗」もない
「いつまで母乳にすがってるんや!!
そんな無駄なこと、今すぐやめなさい!!」
この言葉、実際に私が言われた言葉なんですけど・・・
誰が言ったと思いますか?
夫?
母?父?
義母?義父?
助産師さん?
いいえ。
実はこれ、9ヶ月健診のときに、かかりつけの小児科医のおじいちゃん先生に言われた言葉なんです。
え、なかなかの衝撃発言じゃないですか?
(誰に言われたとしても…)
もちろん、ノンフィクションです(笑)
今回は・・・悔し涙をたくさん流したけれど、夫の一言と薬膳の考え方のおかげで、自分の子育ての軸をそれまでよりも太く強いものにすることができた、というお話です。
育児に「絶対」も「失敗」もない。
子どもは一人ひとり違う。
ママも一人ひとり違う。
涙の数だけ笑えばいい。
それらを実感したときのお話です。
【突然のミルク拒否】
私「ほな行ってくるわなー!娘、お願いします」
夫「はいはい、いってらっしゃい」
その日は、大学時代にお世話になった先輩から連絡をもらって、卒業ぶりに会えることになったので、夫に1日娘をお願いして出かけました。
すごく久しぶりに会えるので、それはそれはもう楽しみで。
合流して、ランチを食べながら、積もる話をたくさんしました。
ひとしきり話したあと、別の店でお茶をしようということで移動して、近くのカフェへ。
「さぁ〜何を注文しよかな♪お腹いっぱいでも、デザートは別腹なんよな〜(^^」なーんて思っていた矢先・・・持っていたスマホが鳴りました。
画面を見ると、夫からのLINE。
「娘、ミルクもお茶も、全然飲まへん。もう限界。」
(えーーーーーー!
まじか…。
前は普通に、ごくごくミルク飲んでたのに…。)
産後しばらくは混合だったのですが、母乳の量が安定してきた頃からはずっと完母でした。私のお出かけのときだけ、夫や母にミルクを飲ませてもらっていたのです。
今回出てきた場所は、家から電車で1時間半かかるところ。
(急いで帰らな…。あーーー。せっかくの機会やったのになぁ…)
すぐ先輩に事情を話して謝ると、快く送り出してくれました。
家に帰ると、娘は・・・
ご機嫌に夫と遊んでいました。
(あれ?お腹空いて泣き叫んでるんやと思ってた…)
私「ただいま。え、大丈夫なん?限界って書いてたから…」
夫「おかえり。うん、今は大丈夫。このまま何も飲まへんかったら脱水になってまうと思って。手遅れになる前に言うとかなって」
私「確かに。泣きわめいてからじゃ、娘が結構しんどくなってしまうもんね…。早めに帰ってこれてよかったわ」
このときは8月。真夏だったので、慣れないワンオペで、もし赤ちゃんが脱水になったら怖いということで、夫は早めにSOSを出したのです。
とりあえず、すぐに授乳しました。
母乳を美味しそうに飲む娘。
(それにしてもどないしよ。このままじゃ、長い時間預けられへん。私どこにも行かれへんかも…。ていうか家族のお出かけも困るやろなぁ)
〈 ミルクを飲む練習 〉
それからというもの、どうにかして娘にミルクを飲ませようと、いろいろ試してみました。
哺乳瓶の乳首を変えてもダメ。
コップであげてもダメ。
スプーンであげてもダメ。
(うーん……
なかなか手ごわいなぁ……
ちょっと気持ち的にしんどくなってきたから、しばらくミルクの練習はお休みしよう。)
ミルク拒否にはなっていたものの、9ヶ月になってすぐの頃から離乳食を始めた娘は、食べることに興味津々で、いろんな食材をもぐもぐ食べ進めていました。特にお米が大好きで、嬉しそうに食べます。
(母乳もよく飲んでるし、ご飯も頑張って食べてるし、よく笑うし。大丈夫やろ)
〈 ベストな選択 〉
真っ白だった母乳の色が、いつの日からか、だんだん水っぽい白に変わっていっていることは、私も気づいていました。
(母乳の量も、ピークより減ってきよる感じがするし…。どうやってもミルクを飲まへんのやったら、せめて…少しずつ減っていく母乳の栄養を、少しでも補いたい!)
ということで、漢方薬局に処方してもらった漢方を飲むことにしました。
それが、「婦宝当帰膠」(ふほうとうきこう)。
血やエネルギーを補う生薬が配合されており、貧血など女性特有の諸症状に用いられる漢方です。
(慢性的に血が足りていない今の状況を改善するための特効薬はない。これが、今の私にとってベストな選択や。毎日飲んで血を増やしていって、母乳の質を上げよう)と判断しました。
【全否定された母乳育児】
そうこうしているうちに、9ヶ月健診の日がやってきました。
※私が住んでいるところの自治体では、1歳までは毎月町内の小児科で無料乳児健診をしてもらえるのです。
診察室に入り、まずは看護師さんに、身長と体重、頭部腹部などの測定をしてもらいます。
それが終わると部屋を移動して、かかりつけのおじいちゃん先生に診てもらいます。
最初は、いつものように和やかに話していました。
先生「で、なんか気になることある?」
私「身長と体重が伸び悩んでるのがちょっと気になります」
そのとき、娘の身長も体重も先月からほぼ横ばいで、特に身長は、成長曲線の平均ラインから、少しばかり下になっていたのです。
先生「んー。離乳食はどんな感じ?ミルクは?」
私「離乳食は、歯が生えるのを待ってこないだ始めたばっかりで、今は1回食です。もぐもぐ食べます。ミルクは、完全拒否になっちゃって…。嫌がって飲んでくれないので、完母です」
先生「あららー。そうかー。もう9ヶ月やったら母乳の栄養どんどん減ってるからなぁー。母乳よりミルクを飲ませなあかんなぁー」
私「栄養のある母乳がしっかり出るように、漢方飲んでます」
そのときでした。
穏やかだったおじいちゃん先生の眉がぐっと吊り上がり、鬼の形相になったのです。明らかに、怒りスイッチが入った瞬間でした。
先生「なんやと?!漢方なんか飲んでるんか!!そんな無駄なものは今すぐ辞めなさい!!いつまで母乳にすがってるんや!!」
私「え?!なんで無駄なんて言うんですか?母乳しか飲まないから、せめてそこからだけでもしっかり栄養取れるように、毎日頑張って飲んでるのに…」
先生「よりによって漢方なんか、マイナスなことしかないわ!!とにかく絶対あかん!!そんなもの飲むなら私に一言断りを入れてからにしなさい!!まったく信じられない!!そんな無駄な努力をするくらいなら、なんとかミルクを飲ませられるようにもっと工夫しなさい!!もうこの時期は母乳なんてほとんど栄養ないんやから!!人工乳に切り替えるべきなんや!!」
突然の怒鳴り声と、言われている内容がショックすぎて、涙をポロポロ流す私。
先生「ほら、スポイトあげるから!持って帰りなさい。これで、頑張ってミルクに慣れさせなさい。とにかく、漢方なんか今すぐ辞めること!!母乳にこだわっていらんことしない!!」
ぶわーーーっと怒涛の勢いで怒鳴られ続けました。
私がどんな思いで漢方を飲む選択をしたのかとか、そうなるまでにどれだけミルクを飲ませようと努力したかなどは、全く聞いてもらえませんでした。
私はもう、なんで先生に一方的に怒られてるのか、全っっっ然納得できなくて、おむつ1枚の娘を抱きしめながら、あふれる悔し涙を抑えきれませんでした。
それと同時に
静かに、でも確実に、先生に対する心のシャッターが降りました。
(意味わからん!意味わからん!!意味わからん!!!)
帰りの車でも、運転しながら声を押し殺して泣きました。
家に帰っても涙が止まらなくて、娘がにこにこ笑えば笑うほど、涙が次々とあふれてこぼれました。
(母乳なんて、って何?どんな思いで毎日授乳してると思ってんの?なんであそこまで言われなあかんの?娘のためにできること一生懸命やってんのに、なんであんな言われ方されなあかんの?私だって、ミルクも飲んでほしいわ!でも無理なんやからしゃあないやん!こっちの気持ちも知らんくせにズケズケ言いたいこと言うてきて!どんだけ漢方嫌いやねん!)
〈 いつもは何も言わない夫からの一言 〉
そのときからずーっと気持ちが収まらなくて、夫に怒りの愚痴LINEを送りました。
すると・・・
いつも既読をつけて終わりの夫から、珍しく返信が。
夫「考え方は、人それぞれでええんちゃう?」
その一言と、『赤ちゃんに母乳はいつまであげればいいの?』というタイトルの記事の、URLリンクが送られてきました。
夫なりに、「ネットにも、こうして数え切れんくらい育児のやり方が載ってて、どれも、いかにもこれが正解ですって感じで書いてあるんやから、自分が思うようにやったらええやん」って伝えたかったんかな?と解釈しました。
あれだけむしゃくしゃして、心がぐちゃぐちゃだったはずなのに、夫のその言葉で、スッと冷静になれました。
(そうや。その先生と私は、母乳育児への考え方と漢方に対する捉え方が違っただけ。それを無理にわかってもらおうとする必要はない。私は娘の母として、自分が娘にとって良いと思ったやり方を取り入れるだけや)
気づいたら、涙も止まっていました。
その日の夜、仕事から帰ってきた夫に、話を聞いてもらいました。
夫「もう病院変えたら」
私「確かにな。町内の小児科はそこしかないわけじゃないし、医者もその人しかおらんわけじゃない。いざというときは、転院したらええか。」
話を聞いてもらったことと、狭くなっていた視野が広がったことで、気持ちが少し楽になりました。
〈 看護師の母からの一言 〉
母にも連絡すると・・・
母「あー。おるおる、そうやって言う医者。うちの先生も、漢方拒否やわ。西洋医学を否定されてる気持ちになるみたい。結構医者あるあるやで、それ。全然気にせんでええよ」
あるあるなんかーい!
私「そうなん?!てことは、あの先生が残念なんじゃなくて、私があかんことしてるわけでもなくて、
一般的に、世の中の西洋医学のお医者さんと漢方の相性が良くないってことか!」
納得はできませんでしたが、あのときの怒りの感情は、だいぶ収まりました。
〈 薬膳の先生からの言葉 〉
母乳について相談したときに、漢方を勧めてくれた薬膳の先生にもご連絡すると・・・
「それはそれは…心無い言い方をされて辛かったですね。ミルクを飲ませることで全てが解決する、というのであれば、もちろん、その選択肢を取る時はあっていいと思います。
ただ、娘ちゃんが母乳を飲みたい、と思っているところ。そして、その母乳の質を少しでも良くしようと思っているお母さんは、何も悪いことをしていないと思います。
取り急ぎ、母乳もミルクも飲んだらいい、と私は思います。ミルクを離乳食の一部と考えてしまうといいですね。
ただ、栄養が足りていれば確実に身長が伸びるのか、と言われると、そうとも言い切れない気がするのですけどね。
お医者さん、漢方否定派だったのですね。
いや、もうね、めっちゃわかります。
『これでいい!』と思って進んでいるときに、世の中絶対という確証がない中で、全てを全否定する勢いで自分の意見を強く言ってくる人っていますよね。自分らしく進めている腰を折ってくるというか。
それがお医者さんからの一言なら尚更です。打ちのめされる感じで、めっちゃダメージ受けるの、すごくすごくわかります。
もしかしたら娘ちゃん、ママの『頼むからミルク飲んで!』っていう必死な顔とか圧を感じてるせいかもしれないので、漢方を飲んで、心落ち着けていきましょう(^_^)」
BABY薬膳を教わってからずっとお世話になっている先生。
何か相談や悩みがあるときは連絡させてもらうのですが、いつも丁寧なメッセージを返してくださるのです。本当に本当にありがたい。
(誰がなんと言おうと、私には薬膳で学んだ知識と身につけてきた考え方がある。だから大丈夫!)
先生のおかげで、そのことをはっきりと思い出しました。
あとはもう、前に進むのみです。
〈 飲まぬなら食べさせてみようホトトギス 〉
次の日から、実験スタートです。
(ミルクそのままの味で飲むのがダメなら、食材と混ぜてあげてみるのはどうやろう。)
まずは、ミルク粥に挑戦。
娘にあげてみると・・・
娘「うわぁああ。おぇー」
とは言いませんが、そういう顔をして、二口目以降は何も食べなくなってしまいました。
(なるほど。これは好きな味ちゃうねんな。それなら、コーンやかぼちゃとかと混ぜて、ポタージュスープ的な感じで食べさせてみよう!)
娘にあげてみると・・・
なんと!!!
食べるではありませんかー!!!
一口目、娘が一瞬眉間にシワを寄せたときは、(やっぱりか〜そんなに甘くないですよね〜)と思いましたが、そのあと自分で次々スプーンを口に持っていったのです。
「良かった〜〜!これでしばらく頑張って食べ進めてみよか!」
その後は、コーン、かぼちゃ、きなこなど、ミルクとの相性が良いものを混ぜてスープにしてあげると、違和感なく口に入れてくれるようになりました。
さらに、しばらくしてミルクだけの味にチャレンジしてみると、少しずつ飲んでくれるようになったのです!
今では、母乳ほどではありませんが、深いスプーンやコップで、ごくごくと飲めるようになりました。
身長や体重も、少しずつ、ゆっくりゆっくり成長してきました。
さらに、おしゃべりも増え、表情はどんどん豊かになり、はっきりと意思表示をするように。
なんと、つたい歩きまでし始めて、興味があるものにまっしぐら!
気づけばもう11ヶ月。今でも母乳メインの娘は、彼女のペースで確実に、日々成長しています。
【すべて、成功するためのデータ集め】
今回の学びは・・・以下の5つです。
①ママがやらせたいことを子どもがやらないのは、ママのせいではないこと。単に、子どもが「それじゃなくてこれをやりたい」と感じて本能のままに素直に生きているだけ。
②ママがいろんなことを調べてじっくりと考えた結果やったことは、たとえ他人がどう言おうと、そのときの親子にとってベストな選択であるということ。
③思いつく限りの方法を試してどれもいまくいかなかったとしても、また別の視点からのアプローチを試したらいいということ。
④世の中には、いろんな「絶対」を信じている人が一定数いて、それを良かれと思って強く押し付けてくる場合があること。
⑤最終的にどうするか決めるのはママ自身だから、ママが納得してやると決めたなら、それはどんな結果になっても「失敗」ではないということ。
ミルクや母乳のことに限らず、育児がうまくいかなくて悩んで、いろいろ調べて見つけた方法や教えてもらったやり方について、「これどうなんやろ?」って思ったとき、やるかやらないか迷いますよね。
私もそうでした。薬膳を学ぶ前は、トライする前から「絶対成功する方法」「失敗しない方法」をいつも探して、なかなか動けないでいました。
でもそんなときは、ママ自身が少しでも「やってみたい」と思ったなら、ぜひトライしてください!そのとき、ハードルは低く、こだわりをなるべく捨てて。そして、うまくいかなくても気にしないことです。
今回の場合のそれは、自分が漢方を飲むことと、娘にミルクを食べさせることでした。私が納得してやってみたいと思ったから、思い切ってトライしたのです。
逆に、どれだけ周りの人が勧めてきても、ママ自身が「やってみたくない」と思ったら、それは無理してやらなくていいです。モヤモヤしながらやっても、しんどいだけです。
今回の場合のそれは、漢方をやめて母乳をとめて、ミルクに完全移行することです。娘の様子を見ていても納得できなかったので、実行しませんでした。
世にいう「うまくいかない=失敗」は、いわば「データ収集」です。それって、成功するためには必ず通る道ですよね。失敗なんてありません。成功するまでやるだけです。
〈 我が子もママも確実に成長している 〉
薬膳を通して、
「一般的じゃない」
「マニュアル通りじゃない」
そんなイレギュラーをポジティブに捉える意識を磨いてきて、本当に良かったと思いました。
「~ない」ことによるプラスの面や学びは、必ずあります。
うまくいか「ない」こと、でき「ない」こと
薬膳のおかげで、その中の落としどころを見つけられるようになりました。
だから今回についても、ただ「医者に怒られて悔しくて泣いた話」では終わらず、
『世間一般ではなく、我が子の育ちを見る』
という私にとっての育児の考え方の軸を、強く太くすることができた、プラスの出来事だと捉えることができました。
かといって・・・
どんなときでも穏やかな気持ちで前向きに、赤ちゃんの成長を見守ったり、応援したりできたらいいですが、そんなに簡単ではないのが育児ですよね。
時には・・・
嫌がる、泣く、できない、足りない
我が子のそんなところばかりに目がいってしまったり、焦ったり、イライラしてしまうこともありますよね。
そんなときこそ、思い出してください。
比較するのは、他人の子ではなく、昨日の我が子です。
生まれたとき、一か月前、一週間前、昨日…と比べたら確実に、子どもは成長しています。
それは、ママも同じです。
今は当たり前にできていることも、できたばかりのときは、その一瞬一瞬を一緒に喜んだり、感動したりしたのではないでしょうか。そんなふうに、できていることに目を向けると、目の前の我が子を愛おしく思えて、前向きな気持ちになれるはずです。
ママの妊娠出産が一人ひとり違うように、子どもが成長するスピードや度合いも、一人ひとりそれぞれ違います。
平均なんて、あくまでも目安。
早ければ良いということではなく、遅ければ悪いということでもありません。
「こうすれば絶対こうなる」「いつもいつでもうまくいく」なんて保証はどこにもないってポケモンマスターのサトシも言ってますよね!(笑)
成長のタイミングを見守って、自分たちのペースで、親子で一緒に、かけがえのない時間を味わいながら(時に噛み締めながら)歩んでいけたら良いのです。
〈 探しているものは、もうすでに「ある」 〉
どうですか?こう考えるだけで、肩の力が抜けたよ、っていうママさんもいらっしゃるのではないでしょうか。
ぜひ、目の前のお子さんの「できる」や「ある」に目を向けて、ママが我が子のために「やってみたい」と思うことがあれば、前向きにトライしてみてください!
たとえどんな結果になっても、それはこれから先、ママ自身とお子さんが笑顔になるための「データ」の一つでしかないのです。
成功に辿りつくまでデータを集め続ける道のりは、決して楽なものではないかもしれません。でも、苦労した分だけ必ず成長しているし、流した涙の数だけ笑える日が必ず来ます。
「もう頑張れない」「笑顔になれない」って時こそ、目の前の「ない」の中にある「ある」を探してみてくださいね。
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