ルージュの伝言
普段は燃えるごみ以外のごみを放置している彼が、珍しくペットボトルをペットボトル用のごみ袋に捨てていた。珍しいなと思いながら、やっとちゃんと捨ててくれるようになったのかと感心した。
蓋は外してあったけれどパッケージがついたまま。まだまだ詰めが甘いなと思った。仕方なく拾い上げると、中に亜麻色の液体がほんの数ml残っていた。ミルクティーかな?普段飲まないのに珍しいなと思った。
ペットボトルを捨てるときは、キャップとパッケージを剥がして中をすすいで捨てるんだよって教えてあげないと。すすいであげなきゃと水を入れようとして、飲み口についたオレンジ色の口紅に気づいた。
本当に綺麗なオレンジ色だった。ブルベ夏の私には絶対に似合わない、ザ・オレンジ色だった。春の人かな?と呑気にそう思った。きっと、髪の毛までミルクティーみたいな亜麻色なんだろうな。亜麻色の髪のイエベ春の女。
「ミルクティー?珍しいね」って言うと「ああ、なんか飲みたくなって」って。「そうなんだ、1人で飲んだの?」って聞いたら「うん、運転中に。でも甘すぎてもう飲まないかな」って。
ふーーーーーーーん。詰めが甘いね。
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ルージュの伝言。
ユーミンの曲に『ルージュの伝言』ってあったよね。みんなあの曲の「バスルームにルージュの伝言」って歌詞、どういう意味だと思ってた?
私はずっと、バスルームに口紅が置いてあって「え、これ、私のじゃないし、バスルームに置いてあるってことはそういうこと?」って浮気に気づいたって意味だと思ってたの。
初めて聴いたとき、浮気相手が奥さんか彼女が気づくようにわざと置いていったって意味だと捉えて、「大人の女の人って怖いな」って思ってたの。
大人になってから歌詞の意味を調べたら、「バスルームの鏡か何かに口紅でメッセージが書かれていて、それを見て彼が私を探している」って書いてあって、え、そういう意味だったんだってなったんだよね。
うーん?そうかな?ってもやもやもしたけれど、「意味」って調べてもそういうのばかりで。それを見て彼が慌てて探しにくるってことは、まあ確かに彼女が鏡か何かにルージュで伝言を書いたんだろうなと納得したんだよね。
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好きな人の自宅とか車でペットボトルの飲み口確認するのはもうやめたい。
私ならちゃんと飲み口拭くのにな。
ルージュの伝言ってやっぱりこういうことか。怖いのは大人の女の人じゃなくて、私の発想か。
「甘すぎてもう飲まないかな」って信じてもいいかな?