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ミステリー小説大賞2位作品 〜トマトジュースを飲んだら女体化して、メカケとその姉にイジ…
色彩が乗った指でグラスをテーブルに置く、看板はそのままにしよう。私になった僕を彼女はど…
←前話 レッド・アイ 翌日の通夜の後、虚ろに繁華街を歩いていた。原因不明の窒息、それが…
←前話 ナッツ 週明けの水曜日。その夜は例の店 “篝 ” でナッツさんとグラスを交わす約…
←前話 言霊 亜樹さんの事。ナッツさんの話、やはり理解しきれない。ずっと夢の中……夢遊…
←前話 変異 ――ひと夏の恋―― とでも謳えばそうなのだろう、なにせ若い男性を連れ込ん…
←前話 ウロコ 薄暗い部屋。ブラインド越しに夏の陽射しが射し込む中、落ちたばかりのドリップの香りを、ソファーで微睡むナッツさんに運ぶ。 五日前、朝帰りの後からナッツさんの口数は至極少なかった。置いたコーヒーカップにも気が付いていないようだ。きっとナッツさんも理解が出来ないまま思考が止まっているのだろう。 「痛ってっ、まったく、何て所に傘立て置いてるんだぁ……おぉーいっ」 傘立てが倒れた音にそれまでの静黙が消える。慌てて来客者を出迎えようと向かった先、その女性の姿
←前話 鏡子 雑居ビルの六階、一番奥の黒地の看板。会員制と書かれている黒い扉。その装飾…
←前話 パラドックス 真夏の陽射しの中、アパートの部屋にあった荷物を夏稀さんの事務所に…
←前話 鈴音の首飾り 陽射しがやけに目に辛い。そのはずだ、微睡みから覚めたのは篝のカウ…
←前話 ウンディーネ カフェテリアを出た後、夏の優しくない陽射しに昨夜の宴を後悔しなが…
←前話 奴代 ――平成十五年九月―― 皇居御所の一室。紫の禁裏。ここに明治以前の形を残…
←前話 ラプラスの麗人 運び終えた荷物は今だほとんど手がついていない。本当にここでいい…
←前話 卒業論文 ――平成四年六月―― ボスニアに滞在していた夏稀は、独立によるセルビアとの紛争の寸前で余儀なく帰国し、一人、岩手県の雫石町に居た。 “ 全日空機雫石衝突事故 ” この事故の惨状をファインダーに収める為だ。昭和四十六年に起きた旅客機と自衛隊機の空中衝突事故。ここ雫石はその墜落現場だった。 「ハァハァ……ふぅ、慰霊の森……ここか」 登山口から整備された階段を登り、二十分もした頃。夏稀の視界に三つの石を横に並べた碑が見えた。石の前には黒い化粧石